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『ぱんさ』の世界神話全集

Pantha's Complete Works of World Mythology

日本の神話

日本の神話として組織的にまとめられた書物は、古事記と日本書紀が代表です。 このうち古事記は、元明天皇の命を受けて、太安万侶(おおのやすまろ)が日本各地の神話・伝説を編纂し 和銅5年に献上したものとされています。
ここでは、古事記を取り上げ、天地初めの時よりイザナキノミコトの禊(みそぎ)までを語ります。

天地の初め

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 昔、天と地がまだ分かれず、陰陽も分かれていないとき、混沌として卵の中身のようであった。闇の中にほのかになにかのきざしがあった。 その清く明るいものは、たなびいて天となり、重く濁ったものは固まって地となった。清く細かなものは固まりやすく、重く濁ったものは 固まりにくかった。それゆえに、天が最初にできて、後に地が定まった。(日本書紀より)

 天地が初めて分かれたとき、高天原(たかまのはら *1)に生まれた神の名は、天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)、次にタカムス ヒの神、次にカミムスヒの神である。この三人の神は、みな独神(ひとりかみ *2)となり、身を隠された。
 次に、国土がわかく浮いている脂のようで、くらげが漂っているようなとき、葦の芽のような萌え生える力があって生まれた神の名は、 ウマシアシカビヒコヂの神、次にアメノトコタチの神である。これらの神も独神となり、身を隠された。以上の神は、別天つ神(ことあまつかみ *3)である。

 次に生まれた神は、クニノトコタチの神、トヨクモノの神で、これらの神も独神となり、身を隠された。
 次に生まれた神は、ウヒヂニの神、女神のスヒヂニの神、ツノグヒの神、女神のイクグヒの神、オホトノヂの神、女神のオホトノベの神、 オモダルの神、女神のアヤカシコネの神、そしてイザナキの神、女神のイザナミの神である。

*1 高天原は、天上の神が住む国、これに対して地上は葦原中国(あしはらのなかつくに)である。
*2 日本神話の多くの神は性別があり配偶者の神がいる。独神は、配偶者の神がおらず、天地自然に生まれた親神のいない神。
*3 天つ神は、高天原の神のこと。別天つ神は特別な神というような意味であろう。
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日本国土の誕生

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 天つ神の一同からイザナキの神、イザナミの神に「この漂える国を整え、固めよ」の命があり、天ノ沼矛(あめのぬぼこ)が与えられた。

 二人の神は、天の浮橋(あめのうきはし)に立ち、その沼矛をおろしてかき回すと、塩が「コロコロ」と鳴り、引き上げるとその矛の先から 塩が滴り落ち、重なり積もって島となった。これがオノゴロ島である。
 二人の神は、その島に降りて、天の御柱(*1)を立て、広い御殿を建てて住んだ。

 イザナキの神が、イザナミの神に「あなたの体はどうなっていますか」と問うと、イザナミの神は「私の体は整いつつありますが、一カ所だけ 足りないところがあります。」と答えた。そこでイザナキの神は言われた。「わたしの体は整いつつありますが、一カ所だけ余分なところがあり ます。この余分なところをあなたの足りないところに挿し塞いで、国土を生みましょう。」

 イザナキの神が言われた。「それならば、私とあなたが、この天の御柱を周って会い、夫婦の交わりをしましょう。」「あなたは、右より周りな さい。私は左より周ります。」
 二人が回り、イザナミの神が先に「ああ、なんといい男でしょう。」と言い、その後、イザナキの神が「ああ、なんといい女か。」と言われた。 その後、イザナキの神が、妻に、「女が先に言うのは良くなかった。」と言われた。しかし、二人は夫婦の交わりをして、ヒルコ(*2)を生んだ。 この子は葦船に入れて流し捨てた。次に淡島(*2)を生んだ。

 そこで二人の神が相談して言った。「われわれが生んだ子どもは良くなかった。天つ神のもとに戻って告げよう。」 すぐに天つ神の命をあおがれた。 天つ神の命による占いでは、「女が、先に言ったので良くなかった。また戻って改めて言いなおすがよい」と出た。そうして、二人の神は戻って、 再び天の御柱を周った。ここでは、イザナキの神が先に「ああ、なんとよい女か」と言った。

そうして、生んだ子どもは、国土の島々であって、アワジノホノサワケの島(淡路島)、イヨノフタナの島(四国)、オキノミツゴの島(隠岐島)、 ツクシの島(九州)、イキの島(壱岐島)、津島、佐渡島、オオヤマトトヨアキヅ島(本州)の八島であり、これを大八島国(おおやしまのくに)という。 その他にも、六島を生んだ。
 既に国土を生み終えて、次に神を生んだ。オオコトオシヲの神、イワツチビコの神ら35神であった。最後に生んだヒノカグツチの神という火の神 であり、この神を生んだことによって、イザナミの神は陰部を焼かれて死んでしまった。

 イザナキの神は言われた。「いとしい我が妻を、ひとりの子どもと引き換えにするとは。
そして、妻の枕元で嘆き悲しんだ。その涙はナキサハメの神となった。そして、亡骸を比婆の山に葬った。
 イザナキの神は、持っていたトツカ剣を抜いて、子どものヒノカグツチの神の首を切り落としてしまった。そうすると剣についた血から、 イハサクの神をはじめとして8神が生まれた。また、殺されたヒノカグツチの神の体からは、マサカヤマツミの神をはじめとし8神が誕生 した。

*1 古くから神は、木や柱を依代(よりしろ)として現われるとされ、天の御柱は祭られた神の象徴である。
*2 ヒルコは、ヒルに喩えられた大きくなっても足の立たない不具の子の意。淡島は、島の形状を持たない生み損じの島の意。 二人の神の使命は、国土と万物の神を生み出すことであるが、それをまっとうできない状態にある。ヒルコ、淡島がその後どうなったかは記録にない。
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黄泉の国へ

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 その後、イザナキの神は、妻イザナミの神に無性に会いたくなり、黄泉国(よみのくに *1)に追って行かれた。イザナミのミコトが住む黄泉国の御殿から イザナミの神が出てくると、呼びかけて言われた。「いとしき我が妻よ、あなたと造った国はまだ完成していません。帰ってきてください。」 イザナミの神は、「残念です。私は、黄泉国で煮炊きしたもの(*2)を食べてしまいました。けれど、いとしき我が夫が来ていただけたので、帰って 良いか、黄泉神(よもつかみ)と相談してみます。その間、私の姿を見てはいけません。」
 こう言うと、イザナミの神は御殿の中へ戻った。

 長い間イザナキの神は待ったが、我慢できなくなって、髪にさした櫛の一部を割り取り、火を付け中を眺めると、イザナミの神にはうじがたかり、 頭、胸、腹、陰部、左右の手、左右の足には、恐ろしい8人の雷(いかずち)の神が生まれていた。

 イザナキの神は恐ろしくなって逃げ出すと、イザナミの神は、「私によくも恥をかかせたな」と言い、黄泉醜女(よもつしこめ *3)にその後を追わせた。
 イザナキの神は、髪に付けていたつるを投げると、それは山ぶどうの木となり、たくさんの実を付けた。黄泉醜女がこれを食べている間に逃げ、 まだ黄泉醜女が追いかけてくると、髪にさしていた櫛の歯を折って投げつけた。するとそれはたくさんの竹の子となった。黄泉醜女がこれを食べて いる間にまた逃げた。(*4)

 その後は、雷の神が率いた黄泉国の軍隊が追ってきた。黄泉比良坂(よもつひらさか *5)の坂本というところに帰り着いたとき、そこに なっていた桃の実を3つを取ってこれを投げつけると軍勢は逃げ帰ってしまった(*6)。
 イザナキの神は、その桃に「わたしを助けたように、現世の人が苦しんでいるときは助けてあげてくれ」と言い、その桃にオホカムヅミノミコトの 名を与えた。

 最後に、イザナミの神が自分から追ってきたので、千引の岩(ちびきのいわ *7)を黄泉比良坂に引きふさいで、その岩を間にしてイザナミの神と向かい合った。 イザナミの神は言った。「いとしいあなたが、こんなことをするなら、私はあなたの国の人を日に千人殺すでしょう。」 イザナキの神はそれに答えて 「いとしいおまえがそうするなら、わたしは日に五千人の子どもをつくるでしょう」と言った。そうして、人は一日に多く死ぬが、それよりも多く生ま れるようになったのである。

*1 地底にある死者がいく世界
*2 死者の世界の食べ物を食べると、現世との縁が切れるとされる。他の神話(ギリシャ神話)にも類型の話がある。
*3 死の恐怖を象徴する醜く恐ろしい女のこと。会ったことある?
*4 恐怖から逃げ出し、逃げ切るために色々なものを投げつけるという神話は、世界中にある。呪的逃走説話と呼ばれる。
*5 黄泉比良坂は、葦原中国と黄泉国との間にある坂。
*6 桃は悪鬼を払う力があるとされる。多分に中国の思想を含んでいる。
*7 大きな岩のこと。
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三貴神の誕生

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 イザナキの神は、言われた。「私はなんとけがらわしい国へ行ってきたことか。禊(みそぎ *1)をして身を清めよう。」  そうして、筑紫の国の阿波岐原に来て禊をされた。

 イザナキの投げ捨てた杖、帯、ふくろ、衣、はかま、冠、左右の手巻きから、ツキタツフナトの神をはじめとして12神が生まれた。

 川のなかばに入ってすすぐと、ケガレによって、ヤソマガツヒの神、オオマガツヒの神(*2)が生まれた。次にケガレが流れ出てしまうとカムナオビの神を 始めとして9神が誕生した。
 その後、左の目を洗うと、天照大御神(あまてらすおおみかみ)、右の目を洗うと月読命(つくよみのみこと)、 鼻を洗うと建速須佐之男命(たけはやすさのをのみこと)が生まれた。  このとき、イザナキの神は非常に喜んで、「たくさんの子どもを生んだ最後に、三人の尊い子を得ることができた。」と言われた。

首に掛けた玉の首飾りを天照大御神に与えて、「あなたは、高天原を治めなさい」と言い、月読命には「夜の食国(よるのおすくに *3)を治めなさい。」 建速須佐之男命には、「あなたは、海原を治めなさい」と言われた。  

*1 水に体をさらして、身のケガレを落とすこと。
*2 禍つ神(まがつかみ)は悪神で、災いをもたらす神のこと。
*2 夜の国のこと。
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