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『ぱんさ』の世界神話全集

Pantha's Complete Works of World Mythology

聖書の神話

聖書は、ユダヤ教、キリスト教の聖典であり、最も多く読まれ、研究されてきた書物であるといえるでしょう。
聖書は、紀元前1400年から紀元前400年間にわたって複数の著者によって、神の啓示により書かれたものと言われています。
ここでは、旧約聖書の巻頭にある創世記の、天地創造からノアの箱船までを取り上げます。

天 地 創 造

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 初めに神が天地を創られた(*1)。
 地は形がなく、そこには何もなかった。闇が大いなる水の上にあった。 そのとき、神が「光、あれ」と言われると、光ができた。神は光を見、それを善しとされた。 そして、光と闇を区別された。光を昼と名づけ、闇を夜と名づけられた。こうして、夕があり、朝が来た。 創造の第1日である。

 神は、「大空よ。水の間にあれ。水と水を分けよ。」と言われた。こうして大空ができ、大空の下の水と 上の水を区別された。神は、大空を天と名づけた。こうして、夕があり、朝が来た。創造の第2日である。

 神は、天の下の水は一所に集まれ。かわいたところが現われよ。」と言われた。神は、かわいたところを 地と名づけ、水の集まったところを海と名づけた。神はそれを見、善しとされた。
 神は、「地は、植物、種類にしたがって草、果樹を芽生えさせよ。」と言われると、そのようになった。神はそれを見、善しとされた。 こうして、夕があり、朝が来た。創造の第3日である。

 神は、「光るものは天にあって、昼と夜を区別せよ。しるしのため、季節のため、日のため、年のために役立て。」 と言われた。神は太陽と月を造り、太陽に昼をつかさどらせ、月に夜をつかさどらせた。 また星を造られた。神はそれを見、善しとされた。こうして、夕があり、朝が来た。創造の第4日である。

 神は、「水には、生き物の群れが群がるようになれ。鳥は、大空を飛べ。」と言われた。神は、海の巨獣と、 その種類にしたがって水に住む生き物と、その種類にしたがって翼ある鳥を造られた。神はそれを見、善しとされた。 また、神は祝福し「生めよ、増えよ水に満ちよ。鳥は地に増えよ。」と言われた。 こうして、夕があり、朝が来た。創造の第5日である。

 神は、「地は、その種類にしたがって、生き物、家畜、這うもの、野の獣を生ぜよ。」と言われた。 するとそのとおりになった。神はそれを見、善しとされた。
 そして神は、「われわれに似るように、われわれの形に人を造ろう。そして、かれらには、地のすべてのものを支配させよう。」 と言われた。神はご自身のかたちに人を創造し、男と女を造られた。 神は彼らを祝福し、「生めよ、増えよ地に満ちよ。地を従え、すべての生き物を支配せよ。」と言われた。
 神は言われた。「見よ、わたしは全地の上にあり、種をもつ植物をあなたがたに与えた。それがあなたがたの 食料となる。また、地の獣、空の鳥、地を這うすべてのもので、命あるものは、食物としてすべての緑の 草を与える。」
 神は、造られたすべてのものを見、すべてに満足した。夕があり、朝が来た。創造の第6日である。

 こうして、すべてのものがつくられ、世界が完成した。神は第7日目に完成を告げられ、そのわざを休まれた。

*1 神の存在を前提とした創造神話は聖書の特徴であるといえる。多くの神話は神の誕生に言及している。
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エデンの園

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 神が天と地をつくられたとき、地には一本の木もなく、野の草もなかった。神が雨を降らせず、土地を耕す人も いなかったからである。ただ、霧があり、地の全面を潤していた。

 神は、地のちりで人を形造り、いのちの息を吹き込まれると、人は生き物となった。神は、東の方のエデンに園を 設け、そこに人を置かれた。

 神はその地に見るに良く食べるに良いすべての木を生えさせた。園の中央には、いのちの木、善悪の知識の木 を生えさせた。神は人をその園に置き、耕させ、守らせた。  神は人に命じられた。「この園のどの木からも、思いのまま食べてよい。しかし、善悪の知識の木からは食べては ならない。それを食べるとあなたは死ぬであろう。」

その後、神は言われた。「人が一人でいるのは良くない。彼のためふさわしい助け手を造ろう。」 神は、人にすべての生き物を見せたが、彼の助け手は見当たらなかった。
 そこで神は、人を深く眠らせ、そのあばら骨のひとつを取った。神はそのあばら骨からひとりの女を造り、人の ところに連れてこられた。人は女を見て気に入り、自分の助け手とした。

 このとき、人もその妻も裸であったが、互いに恥ずかしいと思わなかった。

 神につくられた生き物のうちヘビが一番狡猾であった。ヘビは女に言った。「神はあなたに園のどんな木からも 食べてはならないと言われたのですか。」 女は「わたしたちは園にある木の実を食べてよいのです。しかし、園の中央 にある木の実については、神は『食べてはならない。それを食べるとあなたは死ぬであろう。』と言われました。」  ヘビは女に「あなたがたは、決して死にません。あなたがたが食べると、あなたがたが神のようになり、善悪を知る ようになることを神は知っているのです。」と言った(*1)。

 女が、その木を見ると、おいしそうで、いかにも人を賢くしそうであった。女は、その実を取って食べ、いっしょに いた夫にも取って与えたので、夫も食べた。すると、ふたりの目は開かれ、自分たちが裸でいることを知り、イチジク の葉をつづり合わせ、腰のおおいを作った。
 そよ風のふくころ、ふたりは神の声を聞き、園の木の間に身を隠した。神は、人に呼びかけた。 「あなたは、どこにいるのか。」 人は答えた。「わたしは園で、あなたの声を聞き、わたしは裸なので、恐れて隠れました。」  神は、「あなたがたが裸であるのを、だれが教えたのか。あなたは禁じた木の実を食べたのか。」と言われた。 人は言った。「あなたがわたしのそばに置かれた女がくれたので、わたしは食べました。」 神は女に言われた。 「なんということをしたのか。」 女は答えた。「ヘビがわたしを惑わしたのです。」(*2)

 神はヘビに言われた。
「おまえは、こんなことをしたので、おまえはあらゆる獣よりのろわれる。おまえは、一生腹ばいで歩きちりを食べる。  おまえと人とその子孫の間に敵意を置く、人はおまえの頭を踏み砕き、おまえは人のかかとにかみつく。」
 女(エバ)にはこう言われた。
「あなたの妊娠と出産の苦しみを増す。あなたは苦しんで子供を生まなければならない。また夫を恋従うが、 夫はあなたを支配する。」
 人(アダム)にはこう言われた。
「あなたが、食べてはいけないと命じておいた木から食べたので、地はのろわれてしまった。あなたは一生苦しんで 食を得なければならない。あなたは野の草を食べなければならない。あなたは額に汗して食べ物を得、最後にあなた は土に帰る。あなたはそこから生まれたのだからそこに帰る。あなたはちりだから、ちりに帰らなければならない。」
 神は、アダムとエバのため皮の衣を作り、着せた。
神は、人がさらに手を伸ばし、いのちの木からも取って食べ、永遠に生きないように、エデンの園から追い出した。

 そうして、人は土を耕し、額に汗して食べ物を得るようになった。
 神は、人を追放して後、いのちの木への道を守るためエデンの園にケルビム(*3)と回る炎の剣をおいて守らせた。

*1 ヘビは一言も食べろとは言っていない。これも狡猾なところか。
*2 人類最初の「責任転嫁」。
*3 神の力を象徴する翼のある天使といわれる。
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カインとアベル

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 エデンから追放された後、エバは、みごもりひとりの男子を得た。カインである。その後彼女は弟アベルを生んだ。

 アベルは羊飼いとなり、カインは土を耕す者となった。ある時がきて、カインは、地の作物から神にささげ物を持ってきた。 アベルも彼の羊の群れから、羊の初子のうち最上のものをもってきた。神はそれらの物を見て、アベルのささげ物のみに目を 留められた。カインのものには目を留められなかった。カインはひどく怒り、顔を伏せた(*1)。
 神はカインに言われた。「あなたは、なぜ怒っているのか。なぜ顔を伏せているのか。あなたが正しく行ったのなら、 受け入れられる。行っていないのなら、罪はあなたの戸口で待っている。あなたはそれを治めなければならない。」

カインは、弟アベルに「野に行こう。」と誘い、野にふたりでいるとき、カインは弟アベルに襲いかかり、彼を殺してしまった(*2)(*3)。
 神はカインに言われた。「あなたの弟アベルはどこにいるのか。」カインは答えた。「知りません、わたしは弟の番人なのですか。」 神は言われた。「あなたは、なんということをしたのですか。聞きなさい、弟アベルの血がその土地からわたしを呼んでいる。あなたの ために土地はのろわれた。あなたが土地を耕しても、もう土地はあなたのために力を生じない。あなたは地上のさすらい人となるのだ。」
 カインは神に言った。「わたしの罪は大きすぎて、にないきれません。あなたがわたしをこの土地から追い出されたので、あなたの 前から隠れ、さまよい人とならねばなりません。わたしを見る者は、わたしを殺そうとするでしょう。」 神は、カインにしるしを 与えて「あなたを殺すものは、七倍の復讐を受ける」と言われた。そうしてカインは神の前から去り、エデンの東、ノデに住み着いた。

 アダムとエバはふたりの息子を失った後、ひとりの男子を得た。名はセツという。

*1 神は肉が好きであった、というわけではない。真心の問題であろう。
*2 人類最初の殺人。
*3 この物語が「カイン・コンプレックス(兄弟に対する劣等感)」という言葉の語源となった。
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ノアの箱船

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 人の始祖アダムの子孫は多く増えた。しかし、神は、地上に人の悪が増大し、その心に計ることがいつも悪いことばかりなのを見て、 神は地上に人を造ったのを悔やみ、心を痛められた。神は言われた。「わたしが創造したものを地上から消し去ろう。人も家畜も空の鳥に 至るまで。わたしはこれらを造ったことを悔やむ。」

 しかし、人の中でもノアは、その時代にあっても正しき人であった。神はノアに言われた。「すべての肉体をもったものの終わりが 来ている。暴虐で満ちている地を、彼らとともに滅ぼす。あなたは、木で箱船を造りなさい。箱船の中に部屋を作り、内と外を木のやに で塗りなさい。箱船の大きさは、長さ300キュビト(*1)、幅は50キュビト、高さは30キュビトとしなさい。わたしは今、いのちあるすべての肉体 あるものを天の下から滅ぼすために、地上に大洪水(*2)を起こす。地上のすべてのものは死に絶えなければならない。」
 「わたしはあなたと契約を結ぶ。あなたは、あなたの息子たち、あなたの妻、息子たちの妻たちとその箱船に乗りなさい。」 「また、すべての生き物のうちからそれぞれひとつがいずつ箱船に連れて入り、あなたとともに生き残れるようにしなさい。 また、あらゆる食料を積み、あなたと生き物の食物としなさい。」
神は言われた。「あと7日たつと、わたしは、地上に40日40夜、雨を降らせ、すべての生き物を地の面から消し去る」  ノアは、すべて神が命じられるようにした。

 ノアとその家族、すべての生き物がひとつがいづつ箱船に入ると、神は後ろの戸を閉ざされた。それから、大洪水が地上に起きた。 大雨は40日40夜、地上に降った。水かさは増し、どんな高い山も水におおわれた。

 こうして、地上のすべての生き物は死に絶えた。ただノアと箱船のなかにいるものだけが残った。水は150日間地の上に増え続けた。 その後減り始め、箱船はアララテ山の山頂にとどまった(*3)。ノアは窓を開き鳩を放った。しかし、鳩は足を休める場所を見つけられなかった ので、ノアのもとに帰ってきた。7日後にふたたび鳩を放った。鳩は、夕方になってノアのもとに戻ってきた。すると、むしりとった ばかりのオリーブの若葉がそのくちばしにあった(*4)。それから7日がたって、再びノアは鳩を放した。鳩はもう彼のところには戻ってこな かった。それで彼は地上から水が引いたことを知った。

 神はノアに言われた。「あなたは家族とともに箱船を出なさい。あなたといっしょにいるすべての生き物もすべて連れ出しなさい。」
 ノアは家族と生き物たちと箱船を出た。ノアは神のため、生き物の中からいけにえをささげた。
 神は言われた。「わたしは、決して再び人のゆえに、この地をのろうことはない。人の心の思い計ることは、初めから悪であるからだ。 わたしは決して再び、すべての生き物を打ち滅ぼすことはしない。」
 神は言われた。「わたしは、あなたがたと契約を立てる。すべての肉体のものは大洪水の水では断ち切られない。もはや、大洪水が地上 を滅ぼすことはない。」「わたしは雲の中に、虹を立てる。それはわたしと地の間の契約のしるしとなる。虹が雲の間にあるとき、 わたしはそれを見、この永遠の契約を思い出そう。」

*1 1キュビトは44センチ。したがってこの箱船の長さは、132メートルくらい。
*2 大洪水説話は、世界中の神話の中に見られる。人類の共通の祖先が体験したことであろうか。
*3 実在の山であるが、政治的に難しい場所にあり、考古学的調査がむつかしい。
*4 鳩とオリーブは平和の象徴とされるようになった。
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