ユーフォルビア・フランコイシー交配種について
Eeuphorbia francoisii Hybrids
 マダガスカルを原産とする塊根性ユーフォルビアの「Eeuphorbia francoisii」は、葉色や草姿の美しさから交配種としての改良が進んでいます。
 本記事は、フランコイシーハイブリッドのフリードに取り組み、我が国における実質的なトップブリーダーであり、ぱんさの親しい友人でもあるショップ「FeelGreen」店主に著述をお願いし、それをぱんさが監修したものです。

francoisii原種(系)
 マダガスカルの最南部インド洋を望む沿岸原産の「Eeuphorbia francoisii」には、多くの変異、バリエーションがありますが、原種としては以下にまとめられます。
 基本種である「francoisii var. francoisii」 (写真1) は細葉で、塊根も細身、少し暴れたり曲がったりし、綺麗な塊根は形成しにくい性質があります。
 広葉のタイプの「francoisii var. crassicaulis」 (写真2)は前述の基本種と比べると丸みのあるぽっこりとした塊根を形成します(写真3)。他にも葉の形状や色などが異なる「crassicaulis f. rubrifolia」と呼ばれるもの(写真4)等があります。
 しかし、残念な事に現在、当該名称で流通しているほとんどが完全な原種とは言い切れず、何かしら交雑している可能性があり、本記事では原種に限りなく近い形をしたものを便宜上原種(系)と表記しています。
 ただ、こういった違いが分からず販売するショップなどがあり、このため種名は混乱しており、中には明らかに交配種であるにも関わらず、(おそらく知らずに)原種として販売しているところもあります。


写真1 francoisii var. francoisii系統
総じて細葉なタイプ
©FeelGreen

写真2 francoisii var. crassicaulis系統
広葉なタイプ
©FeelGreen

写真3 francoisii var. crassicaulis系統
塊根の形状
©FeelGreen

写真4 francoisii var. crassicaulis f. rubrifolia
と呼ばれるタイプに限りなく近いもの
©FeelGreen
原種系交配種
 原種系にも様々なバリエーション等がある事から、基本種や個性の違う「var. crassicaulis」同士などを交配して元々の系統には無かった色や形の葉などが作出されるようになりました(写真5)。
 それでも原種系同士の交配では、発現するパターンに限界があり、似たり寄ったりなものになりがちです。また、原種系の元々の性質から枝の分岐が激しく葉が展開する時にお互いにぶつかり合ってしまい綺麗に展開せず(それが面白いと言えなくもありませんが)、全体的に見ると「ごちゃっ」とした感じになることが多いです。


写真5 原種同士の交配で少しバリエーション
の幅が広がったもの
©FeelGreen
フランコイシーハイブリッド
 原種系交配種の難点である限られたパターンと、崩れた感じの草姿を改善するため、マダガスカル原産の近縁の系統の他の種類のユーフォルビア(特に「Euphorbia tulearensis(トゥレアレンシス)」。詳細は、下記カコミ記事参照)との交配が行われた結果(写真6)、綺麗なロゼットを形成したり(写真7) 、葉の大きさ、形や色など原種系交配種と比べバリエーションが広がりました(写真8)。


写真6 francoisiiにtulearensisの血統が入ったもの
(逆交配だとtulearensisの血が色濃く発現しやすい)
©FeelGreen

写真7 まだシンプルながら色や形が綺麗に
発現してきたもの
©FeelGreen

写真8 更に大きさなどの違いも出てき
ているが元々の親の系統の何が強く出て
いるかが何となくイメージ出来るもの
©FeelGreen

 かなり変異のあるもの同士を選抜し更に交配を繰り返すことにより、原種系では想像ができなかったものができるようになり(写真9)、海外ではコンテストなども開催されているほど、盛んにブリードが行われています。自分の考えた色姿形のものを作出する楽しみや、偶然に起こる奇跡の様な変化など楽しみ方にも無限の可能性を秘めています(写真10)。


写真9 FeelGreenで最高の親株として使っている
かなり良いもの
©FeelGreen

写真10 究極まで広葉にとか小葉にとか葉姿や
葉色や葉脈などの形状とかに拘ったオリジナル実生
©FeelGreen

「Euphorbia tulearensis(トゥレアレンシス)」について

Euphorbia tulearensisは、変異が多い。
右上はtulearensisに違う血統が入っていると思われる。
©FeelGreen
 フランコイシーハイブリッドの作出には、マダガスカル原産の近縁のユーフォルビア、特に「Euphorbia tulearensis(トゥレアレンシス)」が交配の片親として優秀で、よく使われます。
実生の醍醐味
 海外ではとかく葉を鑑賞する事に重きが置かれており、美しい色や形の葉をもつクローン株(挿木などの栄養生殖によるもの)が高額で取り引きされています。輸入苗も、クローン苗がほとんどです。しかし、クローン株ではタコ足の根が太るだけで、形の良い塊根が形成されません(写真11)。
 塊根植物が好まれ、元々盆栽文化があり草姿を重視する我が国では、塊根がきちん形成され、立ち上が美しくなければ、観賞価値がほぼ無いと考えていいでしょう(写真12)。
 従って、葉だけを楽しむあるいはその株を親株として使う目的以外では、実生株を入手することが肝要です。購入する際には、信用と知識のあるショップで「実生かどうか」をしっかり確認するとよいでしょう。(仕入れただけで、どちらか分かっていないショップに注意)
 実生苗であれば、元の親の系統にもよりますが、葉の変化のみではなく、塊根と立ち上がり、樹形、草姿を楽しむ事が出来ます。
 適切に製枝し誘引することにより、素晴らしい小品盆栽に作り込む事も出来るので(写真13)楽しみ方の可能性は更に広がると言えます。


写真11 挿し木(栄養生殖)によるタコ足根の苗
©FeelGreen

写真12 立ち上がりの美しい実生による苗
©FeelGreen

写真13 盆栽風に仕立てるには、まだまだ年数
を必要とするのですが、趣のある形にするよう
少し手を加えたもの
©FeelGreen
栽培のポイント
【用土について】

 自身の育成環境にて水やり時が把握出来る使い慣れた一般的な多肉用土でいいでしょう。

【栽培環境について】

 直射過ぎると葉の色が濃くなり過ぎ、焼けたようなくすんだ色合いになってしまうので、葉を鑑賞する目的もあるフランコイシーは、ある程度遮光した方が美しくなります。環境により違いますので、何%遮光とは言えませんが、色々試して葉が上を向いたりしない程度の明るさで、なおかつきれいに発色するベストな遮光率を探ってみてください(ワイルドな感じに仕上げる場合には多少焼いた方が荒々しい雰囲気にはなりますが。)。

【温度管理について】

 他のマダガスカル南部原産の塊根性ユーフォルビア同等の耐寒性はあり、枯れない程度の管理であれば最低5℃程度です。ただ、葉を鑑賞する目的もありますので葉を痛めない為にも10℃位はあった方がよいと思います。基本的に、落葉して休眠という性質ではないので、冬季の低温で、枯れないまでも完全に落葉してしまうと立ち上がりに時間がかかってしまいます。(冬季の室内管理については、下記【冬季の室内管理の注意点】参照)

【水やりについて】

 フランコイシーは他の塊根性ユーフォルビアと比べて、若干水が好きですので、成長期には少し頻度を多めに鉢内が乾き切る前位にやりましょう。ただし、あまりヒタヒタに濡れたままの状態が続くと、根腐れを起こすのでこまめに状況を観察し、ご自身の育成環境に合った頻度での水やりをしてください。
 冬季低温期は基本的に水やりも控えますが、最低10℃程度あるような暖かい室内等で、植物に動きがあれば、たまの暖かい日には上からたっぷりと葉についた埃を落としたり用土の水通しなどするイメージで水やりをすると良いでしょう。

【植え替えについて】

 フランコイシーは新しい用土を好みますので、適宜植え替えしてやると調子が上がります(年1~2回)。しかし冬季などに植え替えすると根が痛んでしまうので成長期前か成長期の温暖な時期にします。
 葉が広く展開して、株元を覆い、上からの水やりで鉢の用土に水がかからなくなった時には鉢増しを兼ねての植え替えをしてやると良いでしょう。

【肥料について】

 植え替えの際に少量の元肥を入れたり、成長期に薄めの追肥などをした方が良く育ちます。

【病害虫・生理障害について】

 フランコイシーは基本的には丈夫で病気はあまり発生しにくいのですが、風通しが悪いと思わぬ病気などが発生する事もあります。環境に注意しましよう。また枯れた下葉や花殻などからカビが発生するのでこまめに取り除いてやります。
 地上につく害虫の被害はあまり多くはありませんが地中でネジラミなど発生する事があるので、植え替えで根のチェックと対策をしてください。
 古い下葉が枯れて黒くなって落ちるのは正常な生理現象ですが、稀に正常な上の方の葉が肉厚なまま腐ったようにポロポロと落ちる事があります。これは根腐れのサインですので、早急に鉢から抜いて根の状態を確認して下さい。早いうちでしたら細根が少し腐っている程度なので充分リカバリー出来ます。それが徐々に太根まで腐りやがて塊根部まで腐るとその部分は切除しなければならず、折角の実生苗がただの挿し木苗と同じものになってしまいますので注意してください。

【冬季の室内管理の注意点】

 フランコイシーは耐陰性はある方なので、冬季は室内に取り込んで、窓辺などの明るい場所やLED照明などの補助的な光などでも問題ありません。以下は、ハウスなどの栽培環境が整っている方に向けではなく、室内に取り込んで管理される方への注意点です。冬場の閉め切った室内と言うのは、およそ自然とはかけ離れた特殊な環境です。こういった環境下で、ベストとはならなくとも最低限健康に維持出来る事を目的としています。
 冬季は、人間の生活のため室内で暖房器具を用いる事になります。フランコイシーが健康的に維持できる温度帯は大体人間が快適に過ごせる程度の温度ということもあり、室内で人間の暖房器具と過ごすこととなります。この場合、乾燥している季節の上に、閉め切った室内で乾いた温風が循環すると、思っている以上に空気が乾きます。しっかりと水遣りをしているつもりでも場合によっては湿度不足となり障害が起こりうる事もあります。
 写真14の様に葉が内側に丸まってしまう事がありますがこれは極度の乾燥によるものです。フランコイシーは丈夫なのでこのくらいではすぐに枯れてしまう様な事はありませんが、美しいハイブリッドは葉を愛でると言う目的もあるので出来れば健全に育てたいところです。こうなってしまった場合には復活させるのにそれなりの湿度を与えてやる必要がありますが、水遣りや霧吹きミストだけでは足りないので加湿器などを用いてやると良いでしょう。その時葉の裏側にもしっかりと湿度が行き渡る様なイメージで加湿器を使ってやると葉が綺麗に展開します。


写真14 乾燥により内側に丸まった葉
©FeelGreen

 ただ加湿器を使用した場合に注意が必要なのが、湿度が高くなると植物全体がしっとりとし、枯れた花殻や下葉などにカビが生え易くなります。室内でも極度に乾燥している場合や屋外で常に新しい風が循環している様な環境でしたら、たいした問題になりませんが、室内で高湿度と言う環境に於いてはこのカビ(写真15)が爆発的に蔓延する恐れもありますので、特に注意して枯れた花殻や下葉は除去(写真16)する様にしましょう。
 気温の高い日中には窓を開けて換気をしたりサーキュレーターなどで風を送る、暖かい日には汚れや埃などを洗い流すイメージでしっかりと水通しをしてやる事などで、だいぶリスクは軽減されますので健康に維持する為にはその辺りを留意してください。


写真15 カビの発生
©FeelGreen

写真16 枯れた花殻や下葉の除去
©FeelGreen

ユーフォルビア・フランコイシー交配種
Eeuphorbia francoisii Hybrids
Eeuphorbia francoisii Hybrid

Eeuphorbia francoisii Hybrid

FeelGreen
ユーフォルビア・フランコイシー交配種
Eeuphorbia francoisii Hybrids

 FeelGreenから購入したユーフォルビア・フランコイシー交配種です。すべて実生。どうなっていくのか楽しみですね。