キフォステンマ属は、アフリカ、マダガスカルに自生する塊茎・塊根性のブドウ科植物。雨季が来ると葉を展開し成長する。多くの場合ツル性。
 種類により、塊茎は地上に立ち上がり長大な円錐、円筒形となるもの、地中に円盤、球形の塊茎を作るものがある。
 キフォステンマ・エレファントプス、キフォステンマ・ラザ等がマダガスカル原産のキフォステンマ属の有名種。
 参考として、マダガスカルを原産とするアデニア属の学名記載のある種を下表にまとめた。

【マダガスカル原産キフォステンマ属一覧(記載種)】
読み名 種名 命名 記載 標本等産地 備考
キフォステンマ・アンプレクシカウレ Cyphostemma amplexicaule Desc. 1967 アンタナナリボ・ボンゴラベ、フィラナランツア・アモロニマニア
34000129
キフォステンマ・アンダヴァドアケンセ Cyphostemma andavadoakense Rabarij. & L.M. Lu 2023 トリアラ・アティモアンドレファナ
100538019
キフォステンマ・アンカラネンセ Cyphostemma ankaranense Desc. 2007 アンティラナナ
100393571
キフォステンマ・アンキリヒトレンセ Cyphostemma ankirihitrense Desc. 1963 マハジャンガ・ボエニイ
34000107
キフォステンマ・カエルランス Cyphostemma caerulans Desc. 2007 アンティラナナ
100393572
キフォステンマ・カルカリウム Cyphostemma calcarium Rabarij. & L.M. Lu 2021 アンティラナナ
100519957
キフォステンマ・コルニゲラ Cyphostemma cornigera Desc. 1964 マハジャンガ
34000104
キフォステンマ・クリスチゲラ Cyphostemma cristigera Desc. 1963 フィナランツァ
34000116
キフォステンマ・コモリエンセ Cyphostemma comoriense Desc. 2007 コモロ諸島
100393574
キフォステンマ・ダライネンセ Cyphostemma darainense Wahlert & Phillipson 2012 アンティラナナ
100385506
キフォステンマ・デルフィネンセ Cyphostemma delphinense Desc. 1962 トリアラ
34000119
キフォステンマ・エキノカルパ Cyphostemma echinocarpa Desc. 1964 トリアラ・アティモアンドレファナ、トリアラ・アノシイ
34000105
キフォステンマ・エレファントプス Cyphostemma elephantopus Desc. 1962 トリアラ・アティモアンドレファナ
34000109
キフォステンマ・エレファントプス・エレクタム Cyphostemma elephantopus var. erectum Rabarij. & L.M. Lu 2023 トリアラ・アティモアンドレファナ
100538020
キフォステンマ・グランデュロソピロサ Cyphostemma glanduloso-pilosa Desc. 1963 トリアラ、トアマシナ、アンティラナナ
34000111
キフォステンマ・グレベアナ Cyphostemma greveana Desc. 1963 フィナランツァ、アンティラナナ
34000120
キフォステンマ・ホロンベンセ Cyphostemma horombense Desc. 1966 トリアラ、フィナランツァ
34000128
キフォステンマ・ジグウ Cyphostemma jiguu Verdc. 1986 =Cyphostemma pachypus
34001482
キフォステンマ・ラバティイ Cyphostemma labatii Desc. 2007 コモロ諸島
100393575
キフォステンマ・ラザ Cyphostemma laza Desc. 1962 トリアラ、トリアラ・アティモアンドレファナ
34000041
キフォステンマ・ラザ・パルヴィフォリア Cyphostemma laza var. parvifolia Desc. 1962 アンタナナリボ
34000110
キフォステンマ・レアンドリ Cyphostemma leandrii Desc. 1963 マハジャンガ
34000130
キフォステンマ・レウコルフェスケンス Cyphostemma leucorufescens Desc. 1963 アンタナナリボ
34000113
キフォステンマ・マクロカルパ Cyphostemma macrocarpa Desc. 1963 アンティラナナ
34000114
キフォステンマ・マクロカルパ・ミヌティフォリア Cyphostemma macrocarpa var. minutifolia Desc. 1963 マハジャンガ・ボエニイ
34000115
キフォステンマ・マナンボベンセ Cyphostemma manambovense Desc. 1962 トリアラ
34000117
キフォステンマ・マンドラケンセ Cyphostemma mandrakense Desc. 2007 アンタナナリボ
100393577
キフォステンマ・マッピア Cyphostemma mappia (Lam.) Galet 1967 モーリシャス、マスカリン諸島
100319406
キフォステンマ・マロジェジェンセ Cyphostemma marojejense Desc. 2007 アンティラナナ
100393578
キフォステンマ・ミクロディプテラ Cyphostemma microdiptera (Baker) Desc. 1966 トリアラ・アノシイ、アンタナナリボ、トマシアナ
34000122
キフォステンマ・モンタグナッキイ Cyphostemma montagnacii Desc. 1962 トリアラ・アティモアンドレファナ
34000118
キフォステンマ・パキプス Cyphostemma pachypus Desc. 1963 アンツィラナナ =Cyphostemma jiguu
34000106
キフォステンマ・プミラ Cyphostemma pumila Desc. 1963 トリアラ、フィナランツァ
34000127
キフォステンマ・ロセイグランデュロサ Cyphostemma roseiglandulosa Desc. 1964 マハジャンガ
34000112
キフォステンマ・ルティランス Cyphostemma rutilans Desc. 1997 アンティラナナ
50179270
キフォステンマ・サカラベンセ Cyphostemma sakalavense Desc. 1963 アンティラナナ、マハジャンガ
34000108
キフォステンマ・サンビラネンセ Cyphostemma sambiranense Rabarij. & L.M. Lu 2023 アンティラナナ
100537644
キフォステンマ・ツァラタナネンセ Cyphostemma tsaratananense Desc. 1963 アンティラナナ
34000131
キフォステンマ・ヴェゼンセ Cyphostemma vezense Desc. 1963 トリアラ
34000121
キフォステンマ・ヴィロスム Cyphostemma villosum Rabarij. & L.M. Lu 2023 アンティラナナ
100538021
 
キフォステンマ属
Cyphostemma

Cyphostemma lazaの葉

Cyphostemma lazaの塊茎

キフォステンマ・ラザ
Cyphostemma laza

 マダガスカル原産(固有種)。

 紡錘形の塊茎からつるを伸ばす。塊茎は成長につれて薄皮がぺろぺろと剥けてくる
 湯浅博士(進化生物学研究所)によると、マダガスカル原住民のアンタンドロイ族は、この植物を魔力のある植物と信じ、元気よく育つと一族が繁栄し、枯れると一族に不幸が訪れるとしている。
 魔力は、そこらに売っている「幸福の木(ドラセナ・マッサンゲアーナ)」の比ではないので、栽培する気なら、なんとしても枯らさないようにしなければならない・・



Cyphostemma elephantopusの葉

Cyphostemma elephantopusの塊茎

キフォステンマ・エレファントプス A
Cyphostemma elephantopus A

 マダガスカル原産(固有種)。

 大きく扁平な塊根に茎を立てる。地上部はつる状。



キフォステンマ・エレファントプス B
Cyphostemma elephantopus B

 マダガスカル原産(固有種)。

 これも「Cyphostemma elephantopus」とされるが、前種との関係はよく分からない。
 葉は細く多肉質で厚みがあり面白い。塊茎はコマ形。

Cyphostemma laza var. parvifoliumの葉

Cyphostemma laza var. parvifoliumの塊茎

キフォステンマ・ラザ・パルヴィフォリウム
Cyphostemma laza var. parvifolium

 マダガスカル原産(固有種)。

 某所で「Cyphostemma pachypus」となっているもの。前述の「Cyphostemma pachypus」とはまったく異なるので、「Cyphostemma pachypus」ではない。おそらく「Cyphostemma laza var. parvifolium」。
 丸い塊茎からつるを伸ばす。塊茎は成長につれて薄皮がぺろぺろと剥けてくる。



キフォステンマ・サカラベンセ
Cyphostemma sakalavense
=キフォステンマ・サカラバ
Cyphostemma sakalava

 マダガスカル原産(固有種)。アンツィラナナ州アンツィラナナ~マジュンガ州マハジャンガ

 紡錘形の幹をもち、幹は成長につれて薄皮がぺろぺろと剥けてくる。葉は同系のCyphostemma lazaと比較してもかなり大きい。若木の頃はツルらしいツルは持たないが、成株ではツルに変化する。
 寒さに弱いので注意が必要。

Cyphostemma pachypusの葉

Cyphostemma pachypusの花

Cyphostemma pachypusの塊茎

キフォステンマ・パキプス
Cyphostemma pachypus

 マダガスカル原産(固有種)。アンツィラナナ州アンツィラナナ

 これが本物の「Cyphostemma pachypus」。丸い塊茎で表面はごつごつとして、ややひび割れが見られる。地上部はつる状。葉は艶やかで5出の複葉。花は赤く目立ち萌芽に先駆けて咲く。
 寒さに弱いので注意が必要。


塊茎
本種(前)とCyphostemma pachypus(後)の葉の違い
キフォステンマ・sp
Cyphostemma sp. aff. pachypus

 マダガスカル原産(固有種)。

 「Cyphostemma pachypus」として入ってきたものであるが、「Cyphostemma pachypus」ではない。
 丸い塊茎であるが、「Cyphostemma pachypus」のように表面はひび割れず滑らか。葉は「Cyphostemma pachypus」より大きく、奇数複葉であるが、萌芽初めは3出で後に5出となる。葉は赤味がある。花は確認できていない。

キフォステンマ・マッピア
Cyphostemma mappia

 モーリシャス島原産(固有種)。モーリシャス島はマダガスカル島の東に位置するマスカリン諸島のひとつ。マダガスカルから東へ900kmの位置にある。インド洋の貴婦人と呼ばれる美しい自然が残る島。

 本種は、自生地では、高さ10mに達する巨大な樽状樹。ブドウ科とは思えない美しい赤銅色の葉幅の狭い小葉の羽状複葉をもつが、この葉は幼樹の葉であり、成樹は、この葉から想像もできない幅広い小葉の羽状複葉(これもまたブドウ科と思えない)に変わる。
 余談だが、この葉はリクガメに食害されないよう、背の低い幼樹の内は、カメにとっては嗜好性の低い「不味そうな」形状に進化したものだという。その進化の原因となったモーリシャス島ネイティブのカメ(モーリシャスオオリクガメ Cylindraspis triserrata)は人間により1700年代には根絶やしにされてしまった。現在モーリシャス島にいるカメ(アルダブラゾウガメ Aldabrachelys gigantea)はセイシェル諸島からの人為的な外来種ということだ。
 栽培的には、高温期は非常に元気であるが、最低でも15℃を切ることがないモーリシャス原産であり、寒さに弱いと思われるので注意が必要。