マダガスカルアロエ標本園(2021.05.01撮影)

 アロエ属は、アフリカ大陸南部からマダガスカルに分布し、記載されているものは、変種も含めて約1000種の大所帯の属です。その内、マダガスカル固有種は約200種類です。
 マダガスカル原産のアロエは、高さ6m、葉長2m近くになる大型アロエ、いわゆる巨人アロエから、手のひらにのるような小型種まで多種多様です。
 このページは、ぱんさの栽培する多肉植物から、マダガスカル原産アロエ属(高地性)の植物をまとめています。

 なおアロエの系統及び分類についてはこちらを参照→アロエ属の系統と分類

 マダガスカル産に限らず、アロエは名前の間違いが多く、これは誤った名前がついた種子(有名種子会社で扱う種子も同様です。彼らは、仕入れて売るだけで、育てて確認して売っている訳ではありません。)からの実生によるものです。また、アロエは交雑しやすく、栽培場で交雑による自然結実したものが、母株名で流通することもあります。
 マダガスカル分園では、開花を確認した正しい両親株からの採取種子による苗の育成を、とても時間はかかりますが進めています。

このページは「アロエ(高地性)」です。
「アロエ(高地湿潤性)」についてはこちらをご覧ください。→アロエ(高地湿潤性)
「アロエ(低地性)」についてはこちらをご覧ください。→アロエ(低地性)

 
アロエ属(高地性)
Aloe (in highland of Madagascar)

主にマダガスカル中央高地の標高1000mを超える地域の原産。わが国の夏の蒸暑さを嫌うので注意が必要。
大型
ロゼットの直径が1mを超える
Aloe macroclada
Aloe macroclada
Aloe macroclada
アロエ・マクロクラダ
Aloe macroclada

 マダガスカル中央高地のバキノカアタラから南部アヌシ、標高500-2500m原産

大型種。葉長は1mを超えるので、ロゼットの直径は2m以上。茎は立たない。サイズ的に一般家庭で維持していくのは難しいかもしれない。アロエ界のリュウゼツランと言っていいかも。
葉はパウダーグリーン、伸びやかで美しい。花はかなりの大株にならないと見れない。花茎は2mを超え、花も大きめで咲き進むとゴージャス。
薬用植物として知られているらしい。


中型
ロゼットの直径が20cmを超え1m以下
Aloe capitata

Aloe capitata

アロエ・カピタタ
Aloe capitata var. capitata
人形錦(にんぎょうにしき)

 マダガスカル中央高地、標高1000-2000m原産

Aloe capitataの分布域は広く、変異幅がかなりある。これは、典型的なAloe capitata var. capitata(基本種)のタイプであり、逆に珍しい。
高地性の中でも適応力が強いためか作りやすい。

Aloe capitata var.

Aloe capitata var.

アロエ・カピタタ var.
Aloe capitata var.

 葉幅は、Aloe capitata var. capitataより狭く、パウダーブルーの葉色に赤味のある鋸歯はとても美しい。これは、var. quartziticolaとして入ってきたものであるが、Aloe capitataの基本種ではなく変種では間違いないもののAloe capitata var. quartziticolaとは異なる。var. angavoanaにやや似る。

Aloe capitata var. aff. angavoana

Aloe capitata var. aff. angavoana

Aloe capitata var. aff. angavoana

アロエ・カピタタ var. aff. アンガボアナ
Aloe capitata var. aff. angavoana

 前項のAloe capitata var. と比較して、葉幅は狭く、太く見え、葉縁の鋸歯は赤味があって間隔は広く荒い、葉は粉を吹いた様に白く美しい。これは、Aloe capitataとは、まったくの別種の名でかめ氏が種子を導入して実生したものを、花を確認するために私が譲り受けたもの。Aloe capitata var. angavoanaに似る。

Aloe argyrostachys

Aloe argyrostachys

アロエ・アルギロスタキス
Aloe argyrostachys
(誤)Aloe compressa

 マダガスカル中央高地のアンタナナリボ州のアンツィラベの西部山地原産

 compressaとされることがあるが誤称。argyrostachysは、compressaと比べて大型で花色は白。
 葉が2方向に伸びる跨状(こじょう)(2列互生)種。
 なお、たまにこの葉のつき方を「対生」という人がいるが、「対生」とは1箇所から2枚の葉が対で出ることを言うのであって、無知を晒さないように注意が必要。

【タイプA】
Aloe conifera
Aloe conifera
Aloe conifera 花の様子
Aloe conifera 花後の様子

【タイプB】
Aloe conifera タイプ違いのコニフェラ
Aloe conifera 花の様子
アロエ・コニフェラ
Aloe conifera

 マダガスカル中央高地のバキノカアタラからアモロニマニア、標高1000-2000m原産

 若い株の葉には赤い盛り上がった斑点があるが、成株では目立たなくなる。この斑点は、粗いものから目立たない細かいものまでかなりのタイプがある。
 花は花茎にみっしりと付き黄色。この花のつくりは、Aloe betsileensisによく似て、誤って流通することがあるが、以下のような違いがある。(Aloe betsileensisは、「アロエ(低地性)」を参照されたい。)

Aloe conifera  花序は紡錘形で咲き始めるとやや円筒形、花茎から花序まで赤味を帯びる。雄蕊の葯は丸く長さ1mm未満。花後は苞は閉じて松傘状。
Aloe betsileensis 花序は円筒形で、花茎から花序まで濃い青緑で暗色かかる。雄蕊の葯は楕円で長さ2mm程度。花後は苞は開き果実が突き出す。

Aloe ibitiensis

Aloe ibitiensis

Aloe ibitiensis

アロエ・アルボストリアタ
Aloe albostriata
(誤)Aloe ibitiensis
(誤)Aloe ibityensis

 マダガスカル中央高地のバキノカアタラからアモロニマニア、標高1000-2000m原産

 ibitiensisと誤称されるが、ibitiensisではない。
 葉はライトグリーンで幅狭く、ラインが入る。花は、アロエには珍しくパステルカラー。

Aloe cryptoflora
Aloe cryptoflora
アロエ・クリプトフロラ
Aloe cryptoflora
(誤)アロエ・エリトロフィラ
(誤)Aloe erythrophylla

 マダガスカル中央高地のフィアナランツォアのイソラナ、標高1300m原産

 Aloe erythrophylla名で実生されたものであるが、Aloe erythrophyllaではなくAloe cryptoflora。葉はツヤがあり緑色、強い光の元では赤褐色を帯びる。鋸歯は赤みを帯びる。
 暑熱をかなり嫌い、生理障害から真菌性の斑点病が発生し葉が傷みやすい。


Aloe laeta

Aloe laeta
アロエ・ラエタ
Aloe laeta

 マダガスカル中央高地のバキノカアタラからアモロニマニア、標高1000-2000m原産

成長著しく遅い。


Aloe compressa

Aloe compressa
アロエ・コンプレッサ
Aloe compressa

 マダガスカル中央高地のアンタナナリボ州イビティ山、ラニハリナ・ツィトンドレイン山、標高1500m原産

 葉が2方向に伸びる跨状(こじょう)(2列互生)種。
 成長はゆっくり。花はピンクがかかる白~ピンクで花弁が反り返って美しい。


Aloe compressa var. schistophila

Aloe compressa var. schistophila
アロエ・コンプレッサ・スキストフィラ
Aloe compressa var. schistophila

 マダガスカル中央高地のフィアナランツァ州アンバトフィナンドラファナ、イトレモ原産

 葉が2方向に伸びる跨状(こじょう)(2列互生)種。
 Aloe compressaと比してしゅっとした感じで葉厚は薄くスマート。成長はゆっくり。花はピンクがかかる白~ピンク。


Aloe perrieri

Aloe perrieri

アロエ・ペリエリ
Aloe perrieri

 マダガスカル中央高地のフィアナランツォア州ザザフォツィ、 イウーシの岩場、標高1200m原産

 葉色は緑~褐色、白色の斑点がある。花茎は立ち上がり、花は下垂する。

Aloe perrieri

Aloe perrieri

アロエ・aff・ペリエリ
Aloe aff. perrieri

 

 Aloe perrieriに似た植物ではあるが、葉色は褐色、花茎が著しく細く下垂することなどから、Aloe perrieriとは異なる。
 花茎が下垂する性質はかなり面白く、吊り鉢に向くと思う。

Aloe pseudoparvula

Aloe pseudoparvula

アロエ・プセウドパルブラ
Aloe pseudoparvula

 マダガスカル中央高地のイタレモのかなり限定された地域、標高1500-2000m原産

 


Aloe parallelifolia

アロエ・パラレリフォリア
Aloe parallelifolia

 マダガスカル中央高地のアンタナナリボ州イビティ山山頂付近、標高1800-2000m原産

 葉は棒状、暗い緑~褐色、茎立ちする。
 高地性やや強く、暑熱に注意が必要。

 同じマダガスカル原産で、葉が棒状に近いアロエはいくつかあり、以下の違いがある。
Aloe parallelifolia 葉の鋸歯が最も少なく目立たない。あっても不規則に並ぶ。
一つの株で茎は1本、根元から株立ちとなっても、茎は2、3本程度まで。
花序は、散房花序となる。
Aloe hoffmanni 葉数は多く、葉の幅が広めで、棒状とまでは言えないかもしれない。
葉縁には、目立つ鋸歯が規則的に並ぶ。
花序は、散房花序となる。
Aloe johannis 葉は細葉であるものの、棒状とまでは言えないかもしれない。 葉縁には、鋸歯が規則的に並ぶ。
根元から株立ちとなって、茎は匍匐する。
花序は、散房花序となる。
Aloe isaloensis 葉縁には、鋸歯が規則的に並ぶ。
花序は、総状花序となる。

Aloe hoffmanni、Aloe johannis、Aloe isaloensisがあるが、その中で最も鋸歯が少なく不規則に並び目立たない。


Aloe parvula

Aloe parvula
アロエ 'ダイル'
Aloe 'Dile'

 Aloe parvula系。葉幅は1cmを超え粉をふいて白く、葉表にもトゲ状の突起が疎らに並ぶ。仔吹きよく群生し、美しい。

小型
ロゼットの直径が20cm以下
Aloe calcairophila
Aloe calcairophila
アロエ・カルカイロフィラ
Aloe calcairophila

 マダガスカル中央高地のアモロニマニア、標高1000-1500m原産

 葉が2方向に伸びる跨状(こじょう)(2列互生)種。
 濃緑、紫を帯びて鋸歯が細かくカッコ良い。
 やや気難しいところがあり、生理障害から真菌性の斑点病が発生し葉が傷みやすい。

Aloe droseroides

Aloe droseroides

Aloe droseroides

アロエ・ドロセロイデス
Aloe droseroides

 マダガスカル中央高地のアモロニマニア、標高1500-2000m原産

雰囲気はAloe parvulaの葉幅を狭くした感じ。種小名は、ドロセラ(もうせんごけ)に似たという意味。Aloe parvulaのさらに高地に自生する。小型種で見た感じはパッとしないが、マニア垂涎の植物。
 暑いのは苦手、小型種で体力もないので乱暴な育て方はダメ。花茎は残暑の頃伸ばすことが多いが、ハオルチアと同様花茎の「中折れ」現象が起きることがある。できるだけ涼しくする。


Aloe haworthioides

Aloe haworthioides

アロエ・ハオルチオイデス
Aloe haworthioides
羽生錦(はにゅうにしき)
瑠璃姫孔雀(るりひめくじゃく)

 マダガスカル南東部高地のオートマティアトラ、標高1000-2000m原産

 種小名は、ハオルチアに似たという意味。

Aloe parvula

Aloe parvula
アロエ・パルブラ
Aloe parvula
女王錦(じょおうにしき)

 マダガスカル中央高地のアモロニマニア、標高1000-2000m原産

 葉幅は1cm未満。葉縁にはトゲ状の鋸歯があり、葉表にもトゲ状と粒状の突起が並ぶ。


Aloe parvula アロエ・パルブラ 'サンドリーフ'
Aloe parvula 'SandLeaves'

 Aloe parvula系。葉幅が広く、葉を広げるタイプで、葉表にも突起が数多くあるが、ほとんど粒状。葉表の紙やすりのようなザラザラ感が面白い。Aloe parvulaは、盛んに子吹きして群生になるが、こちらは子吹きしない。時期によりロゼットの中心は紫がかる。
 Aloe parvulaより美しいので、繁殖を狙いたいところであるが子吹きしないので、これを母株として、一般的なAloe parvulaを父株として作出したものが、「Aloe parvulaぱんさ系」である。「Aloe parvulaぱんさ系」については、何株かは世の好事家のところに出ている。