アデニア属は、旧世界の熱帯・亜熱帯(主にアフリカ)に分布するトケイソウ科植物である。
 マダガスカルには、いくつかの種類が固有種として原産する。

 マダガスカルを原産とするアデニア属の植物は、幼株と成株では葉の形が異なるものが多く、また、萌芽始めと最成長期でも葉形が違うものが多いため、種名の間違いや不明種が著しく多く種の同定はかなり難しい状況にある。
 参考として、マダガスカルを原産とするアデニア属の学名記載のある種を下表にまとめた。

【マダガスカル原産アデニア属一覧(記載種)】
読み名 種名 命名 記載 標本等産地 備考
アデニア・アクタ Adenia acuta W.J. de Wilde 1970 トアマシナ
アデニア・アンボンゲンシス Adenia ambongensis Claverie 1909 →Adenia cladosepala
アデニア・アントンギリアナ Adenia antongilliana (Tul.) Schinz 1892 アンツィラナナ
アデニア・ボイヴィニイ Adenia boivinii W.J. de Wilde 1970 葉は、若い株では3裂で、裂片は鋭頭又は鈍頭、幹は棒状。
成株では、葉は心臓形、小裂がはいることもある。やや裏側に湾曲する。旺盛なツル性で、根元は円柱又は円錐形で、直径数十cmに達する。
アデニア・クラドセパラ Adenia cladosepala (Baker) Harms 1897 マハジャンガ
アデニア・デンシフロラ Adenia densiflora (Baker) Harms 1897 アンタナナリボ
アンツィラナナ
→Modecca densiflora
アデニア・エキロッサ Adenia ecirrosa W.J. de Wilde 1970 トリアラ 葉は幼い株では広披針形で中肋あたりに銀色の模様が入る。
成長に従い、模様は消え3裂葉となる。塊茎は棒状で地際から地中にかけてやや太る。
アデニア・エレガンス Adenia elegans H. Perrier 1940 フィアナランツォア
トリアラ
葉は幼株では心臓形、成長すると小裂し3裂となることもある。塊根は丸い。
アデニア・エピゲア Adenia epigea H. Perrier 1940 アンツィラナナ 葉は、幼い株では3裂葉、成長に伴い心臓形と勢いのよい枝には3裂葉、塊茎は塊状でそこから幹が伸びる。葉の赤味のあるタイプは「Adenia stylosa」になる。
アデニア・エピゲア・スティロサ Adenia epigea var. stylosa H. Perrier 1940 アンツィラナナ →Adenia stylosa
アデニア・ファシキュラータ Adenia fasciculata W.J. de Wilde 1970 マハジャンガ
アンタナナリボ
アデニア・フィンガラベンシス Adenia firingalavensis (Drake ex Jum.) Harms 1925 マハジャンガ
トリアラ
葉は基本3裂形、裂片は鋭頭又は鈍頭、裂が浅い葉もある。塊茎は、緑色が残り、若い株では棒状、生長に伴い紡錘形となり直径数十cmに達する。
アデニア・フィンガラベンシス・スティロサ Adenia firingalavensis var. stylosa (H. Perrier) W.J. de Wilde 1970 →Adenia stylosa
アデニア・イサロエンシス Adenia isaloensis (H. Perrier) W.J. de Wilde 1970 フィアナランツォア
トリアラ
小型種で、高さは数十cm程度。塊茎は直径数cm。葉は、小さく心臓形で、表面に細かい毛をもつ。
アデニア・ラピアジコラ Adenia lapiazicola Bardot-Vaucoulon 1997 アンカラナ・ツインギー 葉は心臓形、茎は円柱又は円錐で幹立ちしツル性ではない。ツインギーの岩の割れ目に自生する。
アデニア・リトラリス Adenia litoralis Hearn 2007 アンツィラナナ
アデニア・ロンゲスチピタタ Adenia longestipitata W.J. de Wilde 1970 アンタナナリボ
フィアナランツォア
アデニア・ロンギスチプラタ Adenia longistipulata W.J. de Wilde 1970 →Adenia longestipitata
アデニア・マクダディアナ Adenia mcdadiana Hearn 2007 アンツィラナナ
アデニア・メタモルファ Adenia metamorpha Hearn 2007 アンツィラナナ 成長に伴い塊根や葉の形状が変わることで有名。若い株の葉は、5裂を基本として、細かく多く裂し、葉の表面には銀色の模様が入る。また、塊根は丸い。
成長とともに塊根は円錐又は紡錘形となり、葉は銀色の模様を失い心臓形か3、4裂する。
アデニア・モナデルファ Adenia monadelpha H. Perrier 1940 Adenia ecirrosaとほぼ同じ特徴。おそらくAdenia ecirrosaと同種
アデニア・オラボエンシス Adenia olaboensis Claverie 1909 フィアナランツォア
トリアラ
葉は、幼い株では3裂で裂片は円頭。幹は棒状。
成長に伴い、葉は心臓形、腎形、円形となり、小裂があることもある。幹は円錐形、直径数十cmに達する。
アデニア・オラボエンシス・パルヴァ Adenia olaboensis var. parva W.J. de Wilde 1971 トリアラ Adenia olaboensisの小型種
アデニア・パキフィラ Adenia pachyphylla W.J. de Wilde 1970 トアマシナ
アデニア・ペルタタ Adenia peltata (Baker) Schinz 1892 フィアナランツォア
アデニア・ペリエリ Adenia perrieri Claverie 1909 マハジャンガ 葉は5裂を基本とし、葉脈の近くまで深い裂が入り、葉脈を強く意識させる。葉の表面には銀色の模様が入り、レース編みを思わせる。
成長に伴い、葉は5裂の掌状になることもある。根元は、紡錘から若干の塊状で目立つ塊根を作らない。
アデニア・フィロモルファ Adenia pyromorpha (H. Perrier) W.J. de Wilde 1970
アデニア・レフラクタ Adenia refracta (Tul.) Schinz 1892 アンツィラナナ
マハジャンガ
アデニア・スファエロカルパ Adenia sphaerocarpa Claverie 1909 マハジャンガ 葉は、5裂を基本として、細かく多く裂する。
アデニア・スファエロカルパ・イサロエンシス Adenia sphaerocarpa subsp. isaloensis H. Perrier 1940 →Adenia isaloensis
アデニア・スファエロカルパ・マンドラレンシス Adenia sphaerocarpa subsp. mandrarensis H. Perrier 1940 トリアラ 葉は大きく心臓形
アデニア・スティロサ Adenia stylosa (H. Perrier) Hearn 2007 アンツィラナナ Adenia epigea 'Red Form'とされていたもの。
アデニア・サブセッシリフォリア Adenia subsessilifolia H. Perrier 1940 トリアラ 丸い塊茎から、多数の枝を伸ばし、あまり目立たない葉柄のない披針形、線形の葉を着ける。
アデニア・サブセッシリフォリア・フィロモルファ Adenia subsessilifolia fo. pyromorpha H. Perrier 1940 →Adenia pyromorpha

 
アデニア属
Adenia
アデニア・クラドセパラ Adenia cladosepala 全容
アデニア・クラドセパラ Adenia cladosepala 葉形(心臓形)
アデニア・クラドセパラ Adenia cladosepala 葉形(小裂)
アデニア・クラドセパラ Adenia cladosepala 地際
アデニア・クラドセパラ Adenia cladosepala 雄花
アデニア・クラドセパラ Adenia cladosepala 雄花
アデニア・クラドセパラ
アデニア・ダドセパラ(誤)
Adenia cladosepala
=Adenia dadosepala

 マダガスカル原産(固有種)。マハジャンガ州ブエニイ付近

 「Adenia dadoseipala」といった種名の種子の実生。これは、「Adenia cladosepala」であって、綴りの誤記と思われる。
 その他、文献などでは、「Adenia dadosepala」という表記がされることがあるが、当該の種は記載なく、「Adenia cladosepala」の誤りと考えられる。
 棍棒状の塊茎から、成長旺盛なツルを伸ばす。葉は若株のうちは中裂するが、成熟した株ではハート形となる。
 自生地の(おそらく)数百年の大株では立派な塊茎が見られる。
 

アデニア・エキロッサ Adenia ecirrosaAdenia ecirrosa 成株葉
アデニア・エキロッサ Adenia ecirrosa
Adenia ecirrosa 雌花
アデニア・エキロッサ Adenia ecirrosa Adenia ecirrosa 雄花
アデニア・エキロッサ Adenia ecirrosa Adenia ecirrosa 果実
アデニア・エキロッサ Adenia ecirrosa

アデニア・エキロッサ ♀
Adenia ecirrosa

 マダガスカル原産(固有種)。トリアラ州アティモアンドレファナ付近。

 基部がやや膨らむ紡錘形の塊茎をもつ。茎は直立し幼株ではツル性ではないが、成株はツル性となる。
 葉は、幼株では楕円で銀色の模様が入るが、成株では消え、葉は中裂する。
 

アデニア・メタモルファ Adenia metamorphaAdenia metamorpha
アデニア・メタモルファ Adenia metamorphaAdenia metamorpha
アデニア・メタモルファ Adenia metamorphaAdenia metamorpha
アデニア・メタモルファ
Adenia metamorpha

 マダガスカル原産(固有種)。アンツィラナナ州。

 成長に伴い塊根や葉の形状が著しく変わることで有名。
 若い株の葉は、5裂を基本として、細かく多く裂し、葉の表面には銀色の模様が入る。また、塊根は丸い。
 成長とともに塊根は円錐又は紡錘形となり、葉は銀色の模様を失い心臓形か3、4裂する。
 この「Adenia metamorpha アデニア・メタモルファ」のように、葉が細かく多く裂し、葉に銀色の模様が入るものを、「Adenia perrieri アデニア・ペリエリ」とする頭の悪いショップがあるそうだが、まったくの別種。
 マダガスカルで最も高温の地域を原産地としている。

アデニア・ペリエリ Adenia perrieriAdenia perrieri
アデニア・ペリエリ Adenia perrieriAdenia perrieri
アデニア・ペリエリ
Adenia perrieri

 マダガスカル原産(固有種)。マハジャンガ州アンバトボイナ。

 葉は5裂を基本とし、葉脈の近くまで深い裂が入り、葉脈を強く意識させる。葉の表面には銀色の模様が入る。葉は繊細で美しくレース編みや雪の結晶を思わせる。成長に伴い、裂が浅く5裂の掌状になることもある。
 若い株は、根元に目立つ塊茎をもたず普通の樹を思わせる。成株では、根元はやや膨らみ円錐から紡錘、目立つぽっこりとした塊根を作らない。
 ある文献では、山火事が発生する場所が自生地の本種は葉は深く切れ込みが入り、山火事のない場所では、切れ込みが浅いとの記述がある。山火事への適応なのかどうかは不明だが、本種はかなり変異幅が大きく興味深い植物であるといえる。

【Adenia perrieri アデニア・ペリエリ 類似種の比較】
Adenia perrieri
アデニア・ペリエリ
 
【葉】
裂は葉脈近くまで達し、部分的に葉脈のみになったようなイメージ。
【茎】
非つる状だが、生長に従いつる状となる。
【幹の基部】
やや膨らむが、塊茎とは言い難い。
文献上の
Adenia perrieri
アデニア・ペリエリ
 
引用:Succulent and Xerophytic Plants of Madagascar : Werner Rauh
Adenia metamorpha
アデニア・メタモルファ
 
【葉】
裂が入るが、葉脈に達することはない。成長に伴い葉は銀色の模様を失い心臓形か3、4裂する。
【茎】
非つる状だが、生長に従いつる状となる。
【幹の基部】
目立つ球状の塊茎をもつ。
Adenia sp.
アデニア・不明種 No.2
後述
 
【葉】
裂は葉脈近くまで達することがあるが、あくまで部分的で多くは葉脈に達しない。
【茎】
つる状。
【幹の基部】
やや膨らむが、塊茎と言い難い。

Adenia olaboensisAdenia olaboensis
葉が心臓形のもの
Adenia olaboensisAdenia olaboensis
葉が3裂のもの
アデニア・オラボエンシス
Adenia olaboensis

 マダガスカル原産(固有種)。フィアナランツォア州~トリアラ州

 葉は、多くの場合、心臓形、腎形、円形となり、小裂があることもある。また、葉の表面、主脈付近に銀色の模様があることがある。幼い株で、3裂で裂片は円頭の葉が見られる。
 幹は棒状、成長に伴い、ボコボコとした突起が見られる。
 

Adenia 不明種 No.1
Adenia 不明種 No.1

Adenia 不明種 No.1Adenia 不明種 No.1

Adenia 不明種 No.1
Adenia 不明種 No.1
鉢物として仕立てたもの
アデニア・不明種 No.1
Adenia sp.

 マダガスカル原産(固有種)。

 ツル性で大きいハート型の葉をもつ。
 

Adenia 不明種 No.2Adenia 不明種 No.2
Adenia 不明種 No.2Adenia 不明種 No.2
Adenia 不明種 No.2Adenia 不明種 No.2 葉
アデニア・不明種 No.2
ペリエリもどき
Adenia sp.
Adenia sphaerocarpa ?

 マダガスカル原産(固有種)。

 幹は棒状。茎はツル性。
 葉は、5裂を基本として、複雑に裂し、裂片は円頭。中肋辺りに銀色の模様が入る。
 本種の様に、葉が細かく多く裂し、葉に銀色の模様が入るものを、「Adenia perrieri」と言って売るショップがある。
 

Adenia 不明種 No.3Adenia 不明種 No.3
Adenia 不明種 No.3Adenia 不明種 No.3
Adenia 不明種 No.3Adenia 不明種 No.3 萌芽始めの線形葉
Adenia 不明種 No.3Adenia 不明種 No.3 生長が進んだ3裂葉
アデニア・不明種 No.3
Adenia sp.

 マダガスカル原産(固有種)。

 幹は棒状。茎はツル性。
 葉は、萌芽始めは線形、成長につれて3裂する。
 

Adenia 不明種 No.4Adenia 不明種 No.4 葉
Adenia 不明種 No.4Adenia 不明種 No.4 葉
アデニア・不明種 No.4
Adenia sp.

 マダガスカル原産(固有種)。

 幹は棒状。茎はツル性。
 葉は、萌芽始めは3裂、成長につれて心臓形。葉身の基部には目立つ突起がある。一般的な植物では蜜腺と呼ばれる器官のある場所に思えるが、その器官なのかよくわからない。