Pantha's Labyrinth
ぱんさのカニのいる生活
−陸生のカニの飼育−
海水への依存度
10〜20%
のカニ
 
はじめに・・・

 この飼育方法に該当するカニは、アカテガニ(Chiromantes haematocheir)、ベンケイガニ(Sesarmops intermedium)、クロベンケイガニ(Chiromantes dehaani)、アシハラガニ(Helice tridens)等陸生のカニです。
 このタイプのカニは、海水に常時浸かることはないので、ろ過設備が不要です。このため、もっとも簡単にお金をかけずに飼育できるカニです。
 なお、このタイプのカニは、同じケースで複数匹は飼育できません。一匹が、脱皮をしてやわらかくなると、他のカニに食べられとても悲惨な状態になります。

飼育環境

 このタイプのカニの飼育環境としては、右図のようなものがよく書籍等で紹介されますが、このような環境では水換えが難しい上に、ゲージ内が汚れやすく、だんだん世話がするのがいやになってしまい、そのうちカニが死ぬという結果になります。
 水入れは水入れとして、水換えしやすく掃除しやすいように別容器で設置するのが一番良い方法です。

 ここでは、「水入れ」を設置して、あなたが、手間ひまかけて頻繁に水を交換してあげるという前提で記載しています。しかし、面倒くさがりやのあなたが飽きずに飼育を続けられるようにするには、ろ過装置を設置した飼育環境で飼育するのが「より良い」と思います。その場合は、このページの後半「理想の飼育環境」をご覧下さい。

◆飼育ケース

 飼育ケースにはプラ飼育ケースを利用します。水槽でもいいのですが、重たくて扱いにくいのでプラ飼育ケースがいいでしょう。
 下記のようなものをセットしなければならないので、Mサイズのケースは必要でしょう。


◆水入れ

 清潔な水を用意します。陶器でもプラスチックでもかまいません。ただ、あまり軽いものだとひっくり返される場合があります。
 大きさは、カニが脚をのばしても十分な広さで、全身が浸かれるものとしてください。脱皮するときには水中で行いますのでその大きさがどうしても必要です。
 あまり深いとカニが外にでれませんので、適当な大きさのものを探してください。
 中に入れる水は、汲み置きの水道水、つまり淡水(「真水」と呼びます。)で良いとされてますが、真水と海水(人工海水)を1:1で混ぜたもの(「汽水」と呼びます。)が良いかは明確になっていません。とりあえずは、淡水でもいいでしょう。


 このページに該当する陸生のカニの生息領域から見ると、上図のようになりますので、アカテガニ、ベンケイガニ、クロベンケイガニ等は、真水でも飼育可能と思われます。
 アシハラガニについては、淡水域には生息していないので、おそらく汽水にした方がいいかも知れません。


◆餌皿

 直接、敷砂の上に餌を置くと痛みやすいので、餌皿を用意したほうがいいでしょう。餌皿は、カニにひっくり返されない程度の重みがあり、浅いものなら特にかまいません。陶器や二枚貝の貝殻を利用するといいかもしれません。
(餌皿については、「餌皿いろいろ」を参照ください。)

◆隠れ家

 カニは、何かの下に隠れることが好きなので、岩などを用いて隠れ家を作る必要があります。どんなものでもいいのですが、当然、不潔なもの、腐敗するもの、薬品が染み込んでいるものはタブーです。

◆敷砂

 カニが歩きやすい、また、湿度を保つためにも必要となります。この種類のカニは、砂には潜りませんので、あまり多く敷く必要はありません。あまり多く敷くと掃除などの管理が大変なので、数mm程度敷けばいいです
 砂の種類は、特になんでもいいですが、あまり細かいものではなく、清潔に保もてて洗いやすいものがいいでしょう。大磯砂、珪砂などが見た目もいいかもしれません。
(敷砂については、「敷砂について」を参照ください。)


◆フタ

 カニが、逃げ出さないようにフタは必須です。
 飼育ケースの場合はセットになっているのでそのまま利用できますが、水槽の場合は、夏は通気、冬は保温が良い物を考えましょう。

(右写真はGEXの小動物用の水槽用のフタ(40cm水槽用のみ)で、しっかりしたつくりで愛用していますが、とても残念なことに生産中止となってしまいました・・・問屋に在庫があるかもしれませんので、欲しい方はホームセンターに注文してみてください。)

◆ヒーター

 この種類のカニは、5℃程度でも耐えることができますので、室内で越冬させることができます。
 飼育ケース内では、カニが好きなところにいくことができませんので、心配な場合や、寒い地域では、ヒーターで暖める方がいいでしょう。
 当然、水中ではないので、熱帯魚用のヒーターは使えません。飼育ケースの下にシートヒーターを敷く方法が一番よいと思います。

飼育管理

◆温度・湿度管理

 冬季を除いて、室内であれば温度管理は不要です。ただし、直射日光にあてるなどすれば、高温になりすぎるため、日陰にケースをおきます。またできるだけ風通しの良い場所がいいでしょう。
 冬季については、心配な場合や、5℃以下になる寒い地域では、飼育ケースの下にシートヒーターを敷き、加温します。通常の飼育ケースでは、上が網なので、冬季はタオルを被せるなどして、保温に努めましょう(電気料金の節約になります。)。
 湿度は、敷砂を湿らせることにより保ちます。

◆水換え

 水入れの水は頻繁に換えてあげましょう。汚れていない場合でも3日に1度は、換えましょう。この環境で具合よくカニが飼えるかどうかは、水入れの水換えがしっかりできるかにかかっています。
 見た感じであまり汚れていないと思っても、とても汚い場合があります。

◆餌

 この種類のカニは、雑食性です。動物質・植物質をバランスよく与えましょう。
 人間の食物をカニにも与える場合がほとんどですが、カルシウムあふれる海と異なり、陸生のカニは特にカルシウムがポイントとなります。食物に含まれるカルシウムと、カルシウムの摂取に深い関係のあるリン、シュウ酸については、食物に含まれるカルシウムとリン、シュウ酸をご覧ください。
 脱皮の前後、冬季は餌を食べなくなりますが、そんなに心配する必要はありません。
 特に陸生のカニは、同じ餌ばかり与えると飽きて食べなくなる場合が多いように思えるので、餌の種類を変えるのも必要です。
 なお、ケースが汚れたり、水入れの水が古くなると、カニが弱って餌食いが悪くなります。その場合は、ケースを掃除して、新鮮な水に換えてみましょう。
 食べ残しは除いて、ケースが不潔にならないようにします。
 下表は、主な餌です。

キョーリン
ザリガニ・ヤドカリ・カニの餌

 ザリガニ・ヤドカリ・カニの餌と称して売っているものです。とても扱いやすいのですが、与え続けると飽きてしまう場合もあります。
【使用原料】
フィッシュミール、とうもろこし、糟糠類、小麦粉、大豆粕、グルテンミール、オキアミミール、魚油、消化酵素、ビール酵母、ガーリック、カロチノイド、アミノ酸、各種ビタミン、各種ミネラル、安定型ビタミンC
テトラ
ベジタブル スティック

 中型・大型の植物食性観賞魚の人工餌です。粒が大きく、雑食性のカニには良いのではないかと思います。カニの大きさに合わせて、そのまま、あるいは折って与えます。
【使用原料】
フィッシュミール、イースト、オートミール、海藻ミール、シュリンプミール、スキムミール、レシチン、その他
煮干
ジャコ
シラス

 煮干、ジャコ、シラスも食べます。着色剤、防腐剤、漂白剤等の無添加のものがいいです。
クリル
 クリルは、観賞魚の餌にする、アミエビをフリーズドライしたものです。
 開封するととにかく酸化が早く、頭が黒ずんできます。こうした、クリルを与えてはいけません。多少割高でも少量で乾燥剤同封の製品を使うべきです。
冷凍のシーフード
・アサリの剥き身
・イカ
・ホタテ等
魚の切り身
 ナチュラルな餌で、嗜好性も高いのですが、食べ残しは飼育環境を激しく汚すので、食べ残したら傷む前にケースから出しましょう。
 当たり前のことですが、冷凍のものは、解凍してから与えてください。また、大きいままでなくカニがつまめる程度の大きさにしてください。

【添加物】
 冷凍シーフードミックスとして売られているほとんどのものに、「亜硝酸ナトリウム」「リン酸塩」等の添加物が多く加えられています。可能であれば、それらがないもの(あまりない)か、生の海産物を自分で冷凍して作るのがいいです。

野菜
 この種のカニは、植物性の餌も必要ですので、料理の時にでるキャベツ、キュウリ、ニンジン、レタス、サツマイモ等の野菜クズも捨てずに与えて見てください。ただし、植物性の餌だけでは生きていけません。
 タマネギ、ネギ、ニラ、パセリ、セロリ等の香りやあくの強いものは、避けたほうが無難でしょう。
リンゴ
その他果物

 リンゴは好きです。捨ててしまう芯のあたりをあげるとよいでしょう。
 その他、果物は、いろいろ食べます。ただ、輸入果物は、防カビ剤など残留農薬が心配ですけど。
ごはん、パン、麺類
 この種のカニは、ごはん、パン、麺類(うどん、パスタ)も食べます。
 ただし、カニが必要とするカルシウム、たんぱく質はほとんどなく、ぬめりが多いので、大量に与えたり、こればかり与えたりしない方がよいでしょう。
カルシウム補助餌
キャトルボーン

 キャトルボーンは、コウイカの甲です。
 甲殻類の外殻は、キチン質、たんぱく質、カルシウムからできています。甲殻類にはできる限り、カルシウムを与えるべきです。特に陸生のカニは、カルシウムの摂取不足になります。一般の食品では、カルシウムの摂取が十分できないため、カルシウム補助餌が必要と考えます。
 一度に大量に食べるものでもないため、直接餌皿に置くと、汚れたり、ひっくり返されたりするので、水の付かないところに針金でくくって常置するようにします(右図)。
 
【食べさせてはいけないと思われる餌】
レップカル リクガメフード、
イグアナフード等の人工餌

成分に硫酸銅が入っているもの。
 色とりどりの粒状の餌です。果物、野菜等で味付けがしてあるので、喜んで食べるとは思いますが、この人工餌には、「硫酸銅」が添加されています。リクガメ、イグアナなど脊椎動物の場合、微量な銅は必須要素ですが、無脊椎動物にとっては代謝異常を起こさせる可能性があります。安全性が確認できないので与えない方が無難です。
ホウレンソウ
成分に蓚酸が多く含まれる野菜
 蓚酸は、カルシウムと結びつき蓚酸カルシウムを形成します。このため、カルシウム、その他ミネラルの吸収を不足させる可能性があります。これは、脊椎動物、無脊椎動物共通と思われますので、あえて与えない方が無難です。
 ホウレンソウの他にも、タケノコ、ショウガ、ミョウガなどに多く含まれますが、これらをあげる人はいないと思います。
 野菜には、多かれ少なかれ蓚酸は含まれているので、大したことはないという考えもありますが、キュウリ、ダイコンには蓚酸は含まれず、ホウレンソウには、サツマイモの蓚酸含有量の5倍の量が含まれます。

◆飼育ケースの掃除

 ケースを不潔にしていると長生きできません。天気のいい日に定期的にすべて出して掃除します。
 敷砂は、お米を研ぐようにしてあらうとゴミがいっぱい出てきます。洗った後は、日光消毒ができれば、更にベストです(カニは日光消毒しないように・・)。
 岩などには、ゴキブリが巣くう場合がありますので、水に沈めて退治します。

◆脱皮

 節足動物は、脱皮をしながら大きくなります。
 脱皮の周期については、種類や個体の大きさなどにより違いますが、年数回から1回程度です。ハサミや脚に欠損がある場合は、数か月で脱皮する場合があります。脱皮は、命がけでかなりのエネルギーを必要とします。脱皮の結果は、良くも悪くもそれまでの飼育方法の結果になります。
 脱皮前には、数日〜1週間程度餌を食べなくなります。脱皮は、水中に潜り、1晩かけて行います。脱皮後、数日〜1週間程度は、体が柔らかいので、隠れて暮らします。
 脱皮中は体が柔らかく無防備で弱い状態です。脱皮に失敗すると死ぬ場合があります。脱皮後は絶対に触らないようにしましょう。

理想の飼育環境

 陸性のカニは、とても粗末な環境で飼育されるのがほとんどです。水入れにしても、頻繁に水換えをしてあげなければ、すぐに劣悪な水質になってしまいます。最初は、大切に飼ってもそのうちに面倒くさくなって、最後にはほったらかしにされて死んでしまうのがお決まりのコースです
 水換えの手間を減らす、飼育ケースを清潔に保てることをポイントにして、理想の飼育環境を構想してみました。

その1 低水位ろ過装置付き水部飼育ケース

 ザルや底抜きの容器を用いて水部を作り、水部にろ過装置を設置します。
 なお、水の浄化について分からない人は、「ろ過装置による水の浄化原理」をお読みください。

 低水位のため、ろ過装置としては、GEXの「e〜ROKA」等の小型水中ポンプ式ろ過装置を横倒しで利用したり、「低水位用簡易ろ過装置『ぽっとくん』」を利用します。
「e〜ROKA」を利用する場合は、若干改造が必要です。以下を参照してください。

e〜ROKA利用の実際

低水位用簡易ろ過装置『ぽっとくん』の作成
 
 汽水とする場合は、蒸発によって水の比重が上がらないよう(濃度が濃くならないよう)に、蒸発によって減った分は、真水を足します。
 
その2 底面ろ過装置付加飼育ケース

 陸部が、水部に崩れ込まないようにしつつ、底面ろ過を用いて、バクテリアに浄化させることにより、水を保ちます。
 なお、水の浄化について分からない人は、「ろ過装置による水の浄化原理」をお読みください。
 この飼育環境の欠点は、底砂が目詰まりを起しやすいので、できるだけ荒い底砂を利用しなければならないことです。また、これだけのものを作り込もうとすると、飼育ケースがLサイズ程度になってしまうことです。

 この飼育環境を実際に作成して、使ってみました。その関係の記事は以下をご欄ください。

  「陸生カニ用底面ろ過付加飼育ケース」の実際
 
 汽水とする場合は、蒸発によって水の比重が上がらないよう(濃度が濃くならないよう)に、蒸発によって減った分は、真水を足します。
 

その3 カニテラリウム

 アクアテラリウムは、水槽内に水中と水上の環境をつくり、陸上植物や水生植物を植栽するとともに、魚等を飼育します。魚と場景を楽しむものです。このアクアテラリウムで魚ならぬ「カニ」を飼育する方法です。
 ろ過及び植物の吸収により、水はかなりきれいに保てますので、理想的な環境です。

 しかし、いろいろ課題があります。
  • アクアテラリウムでは、前面オープン型の水槽が用いられますが、カニの脱走防止のため普通水槽しか用いられません。
  • アクアテラリウムでは、植物を育てるために、当然、かなりの光量の照明をつけます。そのため、水槽上部を開放する(フタをしない。)場合が普通です。けれどもカニを飼育する場合は、脱走を防ぐために網フタをせねばなりませんので、どうしても光が遮られてしまいますので、工夫や植物の選択が必要です。
  • 陸性のカニは、雑食性なので、せっかく植物をキレイに植えても粉々にされてしまう場合があります。
  • 陸性のカニは、力が強く、いろいろなところに穴を掘るので、レイアウトがめちゃくちゃにされたり、水部に土が落ちて汚すなどになりやすいです。したがって、陸部に粒状の土は使えないので、岩や流木でしっかり組み、苔などでベースを作るしかないでしょう。
 これらを解決するには、かなり大きな(水族館並?)水槽が必要になるかもしれませんが、とても面白いので、余裕のある方は試されるのもいいかもしれません。
 アクアテラリウムには、いろいろなテクニックがあるので、興味のある方は、関連図書やその関係のサイトを参考にしてください。

特定の種類の飼育上の留意点

アシハラガニ  アシハラガニは、汽水で飼育した方がいいようです。また、汽水なのでろ過装置を設置(「理想の飼育環境」参照)してください。
 餌は動物質のものを好みます(植物質のものは、ほとんど食べません。)。

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