2014年12月記載、2019年11月ページのレイアウトを変更
植物育成灯にはlm(ルーメン)は関係ないというお話
 よく明るさ(光の強さ)を示す指標としてlm(ルーメン)がありますが、実はこの単位は、植物育成灯にはほとんど関係がないのです。そのお話をします。
 lm(ルーメン)は、人間から見てどれだけ明るく感じるかを数値化したものです。一方、光の強さとは何か、それは光源から出ている物理的な光エネルギーの量です。
 その二つは同じじゃないの?って思われるかもしれませんが、それは違います。人間の目が感じる波長の光は、可視光線と呼ばれ、下限はおおよそ380nm、上限はおおよそ780nmになります。その幅の中で、特に明るさを強く感じるのは波長555nm付近になり、その波長以下になればなるほど同じ光エネルギーが出ていたとしてもだんだん暗く見え、同様にその波長以上も同じ光エネルギーが出ていたとしてもだんだん暗く見えます。
 この波長による目の感覚を「視感度」と呼びます。それを曲線にしたものが右の「標準視感度曲線」です。
 例えば、同じ光エネルギーが出ていても、555nmでは「1」と感じても、450nmでは「0.1」以下にしか感じないことになります。
 ここで話は、人間の感覚による光の強さの単位lm(ルーメン)に戻ります。物理的な光エネルギーの量は「放射束(W)」で表されます。555nmの光エネルギー1Wが683lmになります。ところが、例えば600nmの光の場合は、標準視感度曲線から、555nmの光に比べて0.631しか感じないことになるので、同じ光エネルギー1Wなのにたった1.29lmになってしまうのです。(放射束のWと、電力のWとはイコールではないので勘違いしないでください。)
 照明器具のlmは、各波長の光エネルギーそれぞれにこの標準視感度曲線の係数を掛けて合算して求めているのです。
 ここで、植物育成灯について考えてみましょう。植物育成灯は、前述のとおり、640~690nm、400~470nmを強化してあります。けれど、その波長は、標準視感度曲線では、0.1以下なのです。一般照明用の電灯は、人間にとって明るい方がいいので555nm付近の光エネルギーが強くなっています。つまり、同じ光エネルギーが出ていても、一般照明用の電灯はlmが高くなり、植物育成灯はlmが低くなるのです。
 それがどうしたの?と言われるかもしれませんね。具体例を挙げてみましょう。
 ここに二つの植物育成灯があるとします。一方は、800lm、もう一方は220lm、どちらがいいですか?
 「そりゃ、光の強い800lmが良いに決まってる!」と考えた方は、あまり物事を深く考えない人です。なぜなら、その植物育成灯は、どうでもいい555nm付近の光エネルギーが多いのかもしれません。
 つまり、植物育成灯の光量の多さは、lmではほとんど分からなく、波長の分布(分光スペクトル)も考え合わせないといけないのです。
 人間さまの照明であるなら、lmはとてもいい指標です。消費電力とlmを考えれば、いい照明を選ぶことができます。ところが植物育成灯はそういう訳にはいきません。本来、植物育成灯の場合、波長の分布(分光スペクトル)と、lmでなく、物理的な光量子の量や光エネルギーの量を表す放射束や光量子束を商品に表示すべきなのです。ところがそんな商品はどこにもありません。植物育成灯の良し悪しを考える一番大きな問題がここにあるのです。