2020年1月記載
植物育成用LED灯の形状
 植物育成用LED灯を考えるとき、波長が気になるところではありますが、もうひとつ、考えておかなければならないことがあります。それは、LED灯の形状に関することです。LEDの光は、白熱灯や蛍光灯と比較すると、光の指向性が高く光源からの光が拡散しないという特徴があります。このために、植物育成用LED灯の(発光部分の)形状はかなり重要です。せっかく植物育成用LED灯を買ったものの、肝心な植物すべてに光が届かない(当らない)では、何をやっているか分かりません。

 現在、流通している植物育成用LEDは大きく分けて、以下の6つの形状があります。LED素子が多いほど消費電力が多く、光量があります。
蛍光管形
(G13口金)
 蛍光灯の灯具をそのまま利用して取り付けられるようにしたもので、形状は蛍光管そのものです。蛍光管に似せたG13口金の付いたユニットにLED素子が1列(又は複数列)に配列してあります。蛍光管同様、20形、40形等のサイズがあります。消費電力は20形10Wくらいから。
 グロースタート方式の蛍光灯の灯具に取り付けられるというのが売り文句ではありますが、蛍光灯に用いられる安定器を介すると問題が発生しやすいので、直結になるよう改造を加えた灯具か、蛍光管形LED専用の灯具(直結型で安定器のないタイプの)灯具を使用する必要があります。
*蛍光管形LED自体はPSE対象外。灯具とセットになっている場合や灯具自体はPSE対象。

写真は灯具に取り付けたもの。
棒形  蛍光管とだいたい同じサイズの棒形のユニットの一面にLED素子が1列(又は複数列)に配列してあります。
 電源は、本体にACコンセント(ACアダプタの場合もあるかも)が付属するので、家庭用電源に接続します。
 家庭用照明の場合このタイプが多いのですが、植物育成用ではあまり種類がありません。
*電源部がACアダプタ等で取り外せるようになっているものは、本体自体はPSE対象外。電源部が内蔵又は取り外せないものは対象。

チューブ形  人工樹脂性のやわらかいチューブの中にLED素子が1列に並べて封入されたものです。
 電源は、本体にACコンセント(ACアダプタの場合もあるかも)が付属するので、家庭用電源に接続します。
 一時販売されていましたが、最近ではこのタイプは見かけません。
*電源部がACアダプタ等で取り外せるようになっているものは、本体自体はPSE対象外。電源部が内蔵又は取り外せないものは対象。
電球形
(E26口金)
 白熱灯に用いられるE26口金を付けたもので、漏斗状のユニットにLED素子が「はちす」状に配列してあるものが多いのですが、棒形のものもあります。消費電力は10Wから60Wくらいまで。
 クリップ式、スタンド式、デスクスタンド式の白熱灯の灯具にそのまま取り付けられます。
*PSE対象

 写真のものは12Wで「GT-GR-12WPAR38-2」税込1,980円

パネル形
(方形)
 平たい方形のユニットにLED素子が複数列配列してあります。LED素子が多いので発熱量も多く、ユニットには冷却ファンが組み込まれているものもあります。消費電力は20Wくらいから数百Wまで様々。
 電源は、本体にACコンセントが付属するので、家庭用電源に接続します。
 LED素子も多く、家庭用照明としては使用されない形状なので、生産量が少なく高価です。
*電源部がACアダプタ等で取り外せるようになっているものは、本体自体はPSE対象外。電源部が内蔵又は取り外せないものは対象。

デスクライト形
 脚部(クリップである場合もある)と一体になっているもので、電源は、本体にACコンセント(ACアダプタの場合もあるかも)が付属するので、家庭用電源に接続します。
 小型でLED素子数も少ないものは小型テラリウム水槽など極小規模での利用に向き、LED素子数が多いものは光の広がりに応じて。
*電源部がACアダプタ等で取り外せるようになっているものは、本体自体はPSE対象外。電源部が内蔵又は取り外せないものは対象。

余談:PSE(電気用品安全法)について
 PSEの対象となるものは、技術基準に適合させ、自主検査を実施しPSEマークを表示しなければ、製品を販売又は販売目的で陳列することはできません。
 PSEの対象となるものは「電源内蔵でAC入力100V~300Vのもの」という基本的な条件があります。LED素子自体はDC電源のため、家庭用電源から変換する電源ユニットがどこかには存在します。対象になるには、この電源ユニットが内臓されていることが条件で、例えば取り外しができるACアダプタを使うものであった場合、内蔵しているとは言えずPSEの対象外になります。その場合、LED灯自体にはPSEマークは不要です(ACアダプタには必要)。
 蛍光管形LED、電球形LEDの場合は、「電源内蔵AC入力100V~300Vのもの」と言えるので、PSEマークが必要ですが、さらに条件があって、「一の口金で口金がE11、E12、E14、E17、E26、GX53、B22dのもの」であることが条件ですので、E26口金の電球形LEDは対象になりますが、G13口金が2つ付く蛍光管形LEDは対象になりません。蛍光管形LED灯自体は対象になりませんが、灯具はPSEの対象です。

 植物の本数が1本しかないということであれば、どの形状のLEDを使っても大差はありません。けれど、おそらくは、たくさんの植物を棚や机とかに並べて、それに照射したいと思っていることでしょう。
 前述のとおり、LEDは光の指向性が高く光源からの光が拡散しないという特徴があるため、電球形LED灯を使用すると、照射範囲がはっきりとした円形となるため、並べられたすべての植物に光が届かないという可能性があります(LED灯を離せば範囲は広がるのですが、光量は減ってしまいます。)。これを補うためには、電球形LED灯を多灯するしかありません。
 通常、植物は棚とか机にびっしりと方形に並べることが多いと思われるので(もちろん、円形に並べてもかまいませんが、そういう人はあまり見た事がありません。)、照射範囲が円形となる電球形LEDの光を均等に当てることは難しく、ある意味で不効率です。また、電球形LEDは灯具も合わせると高さがあるので、形状的にある程度上下スペースがないと設置は困難です。
 現在のところ、電球形LEDが主流なので、電球形LEDを購入するのであれば、以上のことを念頭において設置する必要があります。


電球形LEDの光は、照射範囲が円形となる


方形に並べられた植物にまんべんなく照射するためには多灯設置する


平置きで高さの違う植物が混在している場合や立体的な配置に向く

 一方、蛍光管形のLED灯/棒形のLED灯の場合は、高さがなく照射範囲が長方形となるので、上下スペースがない棚などに並べた植物に照射するなどの場合に向きます。ただし、蛍光管形のLED灯は多くの種類が流通していますが、棒形となると、育成用のものは種類が少なく選択枝があまりありません。
 パネル形も棒形同様、照射範囲が方形となるので、机上などに並べた植物に照射する場合に向きます。ただし、形状的にある程度上下スペースが必要で、価格も高価なのが欠点と言えます。


蛍光管形、棒形、パネル形のLED灯は、棚や机に方形に並べられた植物にまんべんなく光が当る


蛍光管形、棒形のLED灯は、上下スペースがそれほど必要ないので棚置きの植物に向く