ぱんさのマイナー植物園

植物育成灯・人工照明による植物育成について

 

植物の光合成に有効な波長

 植物の光合成を担う色素には、クロロフィル、カロチン、フィコビリン等があり、私たちが栽培する対象となる種子植物や、コケ、シダにおいては、クロロフィル(主にa、b)、カロチン(主にβ)が重要な役目をしています(フィコビリンには、フィコエリスリン、フィコシアニン等があり、藍藻、紅藻等の藻類が光合成に利用する色素のため本章には関係ありません。)。
 クロロフィルa、クロロフィルb、βカロチンが吸収し、光合成や成長に関係する波長は下図のとおりです(吸収する=光合成に利用される、ではありません)。
 クロロフィルaは反応中心色素と呼ばれ、光を吸収伝達する役割と光合成の実際の反応を担い、クロロフィルbは集光色素として光を吸収伝達する役割を担うとされています。光が弱いとき、クロロフィルbが増えより光を集めようとします。
 βカロチンは、従来クロロフィルbと同じような働きをするものと考えられていましたが、最近では逆に強い光を受けた時のエネルギーを消す役割があるということが分かってきています。
 

 
 光合成等に関する色素を取り出してその吸収率を見たものが前の図であり、640〜690nm(赤色波長)、400〜470nm(青色波長)の光が最も効率的に、(ほぼ100%)吸収されることが分かります。
 他の波長でもまったく光合成ができない訳ではありませんが、かなり効率が悪いといえます。葉の内部では、外から入った光が内部で反射して何度も光合成色素を通り、他の波長の光すらも少しずつ吸収しますが、吸収できず反射して外に漏れ出た光が、植物を緑色に見せるているということを考えるならば、そのロスは少なくないでしょう。つまり、人工照明を用いて植物を栽培しようと考えるなら、限られたエネルギーのなかで、わざわざ効率の悪い波長の光を当てるより、より効率が良い640〜690nm(赤色波長)、400〜470nm(青色波長)の波長の光を与える方がいいということです。
 一方、人間が明るく(モノを見やすく)感じるのは、555nmの波長を中心とした光になります。このため私たちが室内で使う蛍光灯は、人間の目に明るく物がどう見えるかを重点に開発されたものであり、光合成の点で効率の悪い550〜600nmの緑色、黄色波長の比率が高く、植物育成にはあまり相応しくありません。つまり、植物の光合成を効率的に行わせる波長が少ないので、これを植物育成に使用しても電気代の割に期待する効果は得られにくいということになります。
 よって、植物の育成のために人工照明を使うのであれば、効率が良い波長の光が出ているものを使うべきでしょう。
 一般的に赤色波長は光合成を促進し植物を成長させる効果があり、青い波長は植物の地上部の正常な形成、横への広がりをつくる効果、花芽の形成、ある種の色付きをもたらすトリガーとしての働きがあるとされています。

植物によって必要な光の量は違う

 地球には植物が満ちていて、極地から赤道直下、数千mの高地から低地や海の中、光を遮るもののない荒野から森林まで様々な植物が生きています。太陽の恩恵を受けているのは同じでも、太陽サンサンの陽光の下で育っている植物と薄暗い熱帯雨林の林床に生えている植物とでは、光の要求度が違うはずです。
 要求度が同じであったら、生存競争に負けて薄暗い林床に追い込まれた植物は絶滅してしまったはずだし、これほどの植物の種の多様性はなくなってしまったはずです。それぞれの生育場所で生き残れるようになれたからこそ、たくさんの植物に満ち溢れた地球になったのでしょう。

 右図は、高校生物の教科書にあるような「光・光合成曲線」です。縦軸に光合成速度、横軸に光の強さをとったものです。
 植物は、光合成を行い糖やでんぷん等のエネルギー源を蓄え、それを生命維持、成長や繁殖に消費します。「光合成」を、内部の複雑な働きを無視して単純に外から見たとき、二酸化炭素を吸収し酸素を放出しているように見えます。このため、二酸化炭素の吸収速度を見れば、光合成速度が分かります。逆に、蓄えたエネルギー源を消費するとき酸素を吸収し二酸化炭素を放出します。この酸素を吸収し二酸化炭素を放出することを「(暗)呼吸」と呼びます。
 植物は昼夜ともに暗呼吸を行いますが、太陽の光を受ける日中は「光合成」を行うので、暗呼吸により放出する二酸化炭素より、光合成により吸収する二酸化炭素が多くなります(消費するエネルギーより光合成で作られるエネルギーの方が多いため)。夜になると光合成は行われなくなり、エネルギーの消費を示す暗呼吸のみになり、酸素を吸収し二酸化炭素を放出します。(植物によってこの仕組みが異なることがあります。)
 さて、この図の「強い光を好む植物」を見ましょう。与えられた光が強くなればなるほど光合成は活発になります。それならば光を与えれば与えるだけどんどん光合成するのかというとそうではなく、あるところ(いわゆる光飽和点)までいくと光合成速度(光合成によるエネルギー源の生産)は横ばいになります。
 逆に光が弱くなると光合成速度は低下していき、あるところ(いわゆる光補償点)までいくと、光合成による二酸化炭素の吸収より暗呼吸による二酸化炭素の放出が多くなります。つまり、消費が生産を上回ることになります。この状態がずっと続くならば、いずれ植物は枯れてしまいます。
 一方「弱い光を好む植物」は、「強い光を好む植物」と比べて見かけ上、光補償点、光飽和点とも低くなります。これは、魔法のような力があって弱い光でも光合成がいっぱいできるということではなく、暗呼吸の量が少ない、つまり、エネルギー消費量がそもそも少ない「省エネ」型の植物として、その環境で生き抜くことができるようになったと言えます。
 陽光サンサンの元で生きている野菜や花卉、サボテンや多肉植物は「強い光を好む植物」であり、多くの観葉植物等森やジャングルの林床に生きている植物は「弱い光を好む植物」が多く、その光に対する要求度は違ってくるのです。この図はモデル化したものであって、実際の植物がきれいに2つのグループに分けられるわけではなく、中間型のものや、さらに光飽和点等の高いもの低いものがあるでしょう。
 例えば、シダの仲間は「弱い光を好む植物」の代表ですが、数多くあるシダの仲間にも、林床を好む種類もあれば、日当たりのよい場所にしか育たない種類もあります。
 植物により「省エネ」かどうかの違いはあったとしても、もし、世界が夜の闇に永遠に閉ざされたのなら、植物は光合成ができなくなるので、それまでに光合成で蓄えられたエネルギー源を消費して消費し尽していずれ枯れてしまいます。
 人工照明による植物育成を考えるとき、太陽から地上に注がれる光量とは格段に違うことを念頭において、自分の栽培したい植物の光の要求度を掴んでおかないと上手くいかないでしょう。「弱い光を好む植物」には充分な光量であっても、「強い光を好む植物」にすればお話しにならない光量かもしれないのです。

 先に植物の成長には、赤色波長、青色波長の光が重要と書きましたが、「弱い光を好む植物」は、そのうち青色波長の方が重要でないかと考えています。
 波長が短いほど、光は強く「散乱」します。つまり、赤色波長に比べるなら青色波長が「散乱」しやすいのです。空が青く見えるのもそのためであり、池や海など水深が深くなればなるほど青色の光しか届かなくなるのもそのためです。森の中でも同様で、光が直接射さない林床で生きる植物は、ほとんど青色波長(あるいは他の植物が反射した緑色波長)の光を受けているはずです。また、季節によって差し込む光が違うのであれば、波長の違いが季節的な成長に何らかの影響があるかもしれません。
 つまり、植物により、光の強さはもとより、本来の姿に機嫌よく育つ波長も違う可能性があるということです。

光が足りないと植物はどうなっていくのか

 動物の場合エサが足りなくなればエサの豊富な場所を探して移動することができますが、植物の場合は移動することができません。そのために自分の体をその状態に適応させてどうにか生きようとします。それでも対応しきれない場合は枯死が待っています。
 ここでは、光の量を段階的に減らしていくと植物がどうなっていくかをまとめます。もちろん植物の種類によって違いはあります。

■強光から身を守る色素が抜ける

 光を得るために、カロチン、キサントシアニンやアントシアニン等強光下で身を守るための色素が抜けていきます。このため、植物によっては、赤色、褐色、紫色等の色合いが薄くなり緑色に変わることがあります。園芸的にこうした「健康的な」色合いを鑑賞するものであれば、観賞価値が下がっていくと言えます。

■クロロフィルを葉表に移動させる、クロロフィルbを増やしてどうにか光を集めようとする

 葉の中でのクロロフィルの分布が変化し、少ない光を集めるためにクロロフィルを光の当たる葉表近くに集めたり、集光吸収伝達の役目のあるクロロフィルbを増やします。このため、植物は深い青みのある緑色から、緑色、あるいは黄緑色へ変化するかもしれません。

■「徒長」が起きる

 植物の茎が細くなり、ひょろひょろと茎節が間延びし始めます。葉はだらしなく広がったり細長く伸び、垂れ下がることがあります。これを「徒長」と呼びます。「徒長」は、光の方角に体を傾ける「屈性」と同様に、光の足りない悪環境から脱出しようとする(植物に意志はないでしょうから)生理的な反応といえるでしょう。弱光下では、植物ホルモンの「ジベレリン」が増えることが知られており、そういった植物ホルモンが、生長軸の方向への細胞伸長(細胞が増えるのではなくて、細胞が伸びる。)を促進しているのではないかと考えられます。
 「徒長」の段階ではほぼ観賞価値はなくなりますが、異常さに気付かずに「すごく成長してる!」と喜ぶ人もいるかもしれません。

みんなの徒長写真集
Twitterのフォロワーさんからいただいた画像です。
徒長の主原因は光の不足ですが、水分量、養分量過剰で更に助長します。






*スライドショウはクリックで停止し、再度クリックで再開します。


■クロロフィルが減少していく

 末期には、新しいクロロフィルを作り出すためのエネルギーが足りなくなります。たとえ足りたとしても、被子植物ではクロロフィル自体を作るために光が必要なため、老化したクロロフィルに代わる新しいものが作れなくなり、クロロフィル数は減少していきます。植物は白っぽくなり、いわば「もやし」状態となります。

■エネルギー源を使い果たし枯死する

 最終的には植物の中に蓄えられているエネルギー源を使い果たし枯死します。

ビオルックス(ビオルクス)等植物育成灯

 こうした光合成の特徴を踏まえて開発された植物育成用の蛍光管がビオルックスです。発売はかなり古いのですが、今もなお効果と経済性の高い植物育成用の蛍光灯として利用されています。
 私たち人間の目から見ると、ビオルックスの光は、その波長の特性から何やら薄紫色ぽく見え、植物に当たっても植物はあまりきれいに見えませんが、私たちの照明用ではありませんのでどうでもいいことです。
 現在では、HID(メタルハライドランプ)の活用もされています。HIDは、特定の波長というよりは、太陽と同様に幅広い波長を含み、高エネルギーのため植物育成にとても良いのですが、灯具だけで数万円、球が数千円と高価で、発熱量、消費電力も大きく一般的でありません(お金に余裕ある方なら活用するといいでしょう。)。
 私は、ビオルックスは、実生幼苗のようにあまり光を必要としない段階の植物の育成に積極的に利用しています。サボテン、多肉植物の成苗ではやはり、ビオルックス等人工照明では光量不足です。
 

 
 ビオルックス等植物育成灯は、NEC、ナショナルから8W程度から40Wまでいろいろな製品が出ています。

 
メーカー 商品名 説明 型番
NEC ビオルックス スタンダードなビオルックス
400〜500nm(青色波長)および600〜700nm(赤色波長)の放射に特別の考慮
FLxxBR
FLxxSBR
NEC ビオルックスA ビオルックスを改良しエマーソン効果を加えたもの
青色波長、赤色波長に加えて700〜800nm(近赤外線)を放射
FLxxBR-A
FLxxSBR-A
NEC ビオルックスHG ビオルックスに演色効果を加えたもの
(555nm付近の波長を加えたもの。)
FLxxBR-HG
FLxxSBR-HG
ナショナル 植物用蛍光灯 NECビオルックスとほぼ同等 FLxxS-BR
東芝 プラントルクス NECビオルックスとほぼ同等 FLxxSS-BRN
FLxxS-BRN
*エマーソン効果:青色波長、赤色波長に赤外線(700nm以上)を加えると光合成がさらに促進されるとされる。
*型番中xxはW数が入る。

植物育成灯の設置


 蛍光管だけでは点灯できないので(当たり前)、灯具(電灯器具)は一般民生用の吊り下げ用灯具を用意します。大きいホームセンター等なら売っています。当然蛍光管に合ったものが必要です。ビオルックスはスタータ(FL)型なので、スタータ型蛍光管が利用できる灯具かフリーランプのインバータ方式の灯具になります。
 写真のものは、20W蛍光管2灯用です。長さが61cm程で、普通の室内温室にはちょうどいいサイズです。ホームセンターでの販売価格、\4、980でした。
 普通、民生用灯具には一般照明用の蛍光管が付属しますが、それは使いませんので外してしまいます。その代わり、ビオルックス等植物育成灯を取りつけます。



 ビオルックス等植物育成灯を取り付けた状態です。写真はナショナルの「植物用蛍光灯」です。



 植物でも昼夜は必要なので、照明は10時間程度(植物によって適切な時間は異なる)点灯します。
 手作業でON/OFFすることは、年がら年中規則的な生活をしている人ならともかく、一般的には難しいと思われるので、24時間タイマーを接続して自動でON/OFFさせます。
 このタイマーは、ホームセンターでよく売っている、REVEX PT24、\600〜700くらいでしょうか。



 吊り灯具は鎖が付属するので、Sカンや針金で灯具を棚に吊るして終わりです。


留意点

■照明からの排熱に注意

 蛍光灯といえど照明はかなり発熱します。部屋などの広い空間であれば問題ありませんが、室内温室などの狭い閉鎖空間の場合は、不適切な温度にならないよう通気などに注意が必要です。

■使用環境に注意

 あくまで電化製品ですので、悪環境での使用、水かかりは危険です。良識的に使ってください。

植物育成灯にはlm(ルーメン)は関係ないというお話

 よく明るさ(光の強さ)を示す指標としてlm(ルーメン)がありますが、実はこの単位は、植物育成灯にはほとんど関係がないのです。そのお話をします。
 lm(ルーメン)は、人間から見てどれだけ明るく感じるかを数値化したものです。一方、光の強さとは何か、それは光源から出ている物理的な光エネルギーの量です。
 その二つは同じじゃないの?って思われるかもしれませんが、それは違います。人間の目が感じる波長の光は、可視光線と呼ばれ、下限はおおよそ380nm、上限はおおよそ780nmになります。その幅の中で、特に明るさを強く感じるのは波長555nm付近になり、その波長以下になればなるほど同じ光エネルギーが出ていたとしてもだんだん暗く見え、同様にその波長以上も同じ光エネルギーが出ていたとしてもだんだん暗く見えます。
 この波長による目の感覚を「視感度」と呼びます。それを曲線にしたものが右の「標準視感度曲線」です。
 例えば、同じ光エネルギーが出ていても、555nmでは「1」と感じても、450nmでは「0.1」以下にしか感じないことになります。
 ここで話は、人間の感覚による光の強さの単位lm(ルーメン)に戻ります。物理的な光エネルギーの量は「放射束(W)」で表されます。555nmの光エネルギー1Wが683lmになります。ところが、例えば600nmの光の場合は、標準視感度曲線から、555nmの光に比べて0.631しか感じないことになるので、同じ光エネルギー1Wなのにたった1.29lmになってしまうのです。(放射束のWと、電力のWとはイコールではないので勘違いしないでください。)
 照明器具のlmは、各波長の光エネルギーそれぞれにこの標準視感度曲線の係数を掛けて合算して求めているのです。
 ここで、植物育成灯について考えてみましょう。植物育成灯は、前述のとおり、640〜690nm、400〜470nmを強化してあります。けれど、その波長は、標準視感度曲線では、0.1以下なのです。一般照明用の電灯は、人間にとって明るい方がいいので555nm付近の光エネルギーが強くなっています。つまり、同じ光エネルギーが出ていても、一般照明用の電灯はlmが高くなり、植物育成灯はlmが低くなるのです。
 それがどうしたの?と言われるかもしれませんね。具体例を挙げてみましょう。
 ここに二つの植物育成灯があるとします。一方は、800lm、もう一方は220lm、どちらがいいですか?
 「そりゃ、光の強い800lmが良いに決まってる!」と考えた方は、あまり物事を深く考えない人です。なぜなら、その植物育成灯は、どうでもいい555nm付近の光エネルギーが多いのかもしれません。
 つまり、植物育成灯の光量の多さは、lmではほとんど分からなく、波長の分布(分光スペクトル)も考え合わせないといけないのです。
 人間さまの照明であるなら、lmはとてもいい指標です。消費電力とlmを考えれば、いい照明を選ぶことができます。ところが植物育成灯はそういう訳にはいきません。本来、植物育成灯の場合、波長の分布(分光スペクトル)と、lmでなく、物理的な光量子の量や光エネルギーの量を表す放射束や光量子束を商品に表示すべきなのです。ところがそんな商品はどこにもありません。植物育成灯の良し悪しを考える一番大きな問題がここにあるのです。

LED vs. 蛍光灯

 近年ではLED灯も植物育成灯としての選択肢の一つになっています。LED灯は、省エネ(省電力)、長寿命(つまり最初は高くても最終的に割安)がセールスポイントです。ここで、LED灯と蛍光灯について考えてみましょう。植物育成灯で、というと、データも適切なものがなく周波数等いろいろパラメータが増えますので、一般照明用のもので考えることとします。

【LED灯の方が省エネ(省電力)なのか?】

市販されているLED灯のスペックを見ると、確実に消費電力が少ないことが分かります。たとえば、20W形蛍光灯の消費電力は、当たり前ですが20Wです。一方、20W形蛍光灯形のLEDの消費電力は、10Wから12Wぐらいです。
 んー確かに消費電力が少ない・・・しかし、本当に消費電力が少ないといえるのかどうか?
 ここで「lm/W」で考えてみます。「lm/W」は、本当に、省エネ(省電力)なのかを見ます。光量(全光束)を消費電力で割ったもので、1W当りどれだけの光量を出せるのかになります。数値が高い方が省エネ(省電力)になります。光量が少ないのに消費電力が少ないのは当たり前です。
 右の図が、いろいろな照明器具の「lm/W」をまとめたものです。

 図中、もっとも発光効率の悪いものが白熱灯(いわゆる電球)で、15lm/W、電気は食うけどさほど明るくないということですね。現在では白熱灯はほとんど照明には使われなくなりました。
 最も発光効率が良いものは高圧ナトリウムランプで130lm/Wです。ただ、高圧ナトリウムランプは、構造上オレンジ色の光になるので、一般照明としては利用されず、高速道路のトンネルの照明とかに利用範囲が限定されてしまいます。
 それでは、蛍光灯と白色LEDを比較してみましょう。HF(インバータ方式等)直管形蛍光灯は100lm/W、白色LEDの最新の最も良いものでは100lm/W、廉価なものでは85lm/Wくらいです。
 実は、直管形蛍光灯の最新のものと現在の白色LEDとは発光効率はほとんど変わらないのです。同じ電力であれば同じ光量ぐらいです。つまり20W直管形蛍光灯は20Wなりの光量、10Wの白色LEDなら10Wなりの光量なのです。消費電力が少ないのは光量が少ないからだと言ってよいでしょう。
 「なんだ?LEDが省エネだなんて嘘じゃないか!」ってぷりぷりするのはまだ早いです。
 HF以外の直管形蛍光灯は60lm/Wですから、白色LEDには負けています。我らのビオルックスもHFではありません。つまり、HF以外の直管形蛍光灯と比べれば、今の白色LEDの方が発光効率が高いということです。
 発光効率という面で見ると以上ですが、同じサイズの照明(20W直管形蛍光灯)として見ると、LED灯はもともと消費電力が少ないので光量も直管形蛍光灯には負けます。LEDの発光素子をさらに高出力のものにするとかもっと増やせば光量は増えるのですが、発光素子自身のコスト、集積度や電源回路が複雑になり、価格が嵩増して、蛍光灯に太刀打ちできなくなります。値段的に消費者が我慢して買ってくれる程度が今の状況だと言えるでしょう。

 さて、一般照明用の場合は、以上のような感じですが、植物育成用を考えたらどうなるでしょう。前章で、植物育成用にはlm(ルーメン)は関係ないというお話をしています。つまり、「lm/W」では分からないということです。けれど、だいたい同じような傾向になるのではないかと推測できます。つまり、消費電力相応の光量になるのではないかと推測されるということです。
 ここまでくると、あまり差がないなということになるのですが、実はLEDには、非常に優れた特色があるのです。それは、特定の波長に限定した光を出力するものを作れるということなのです。たとえば、光合成に有意義な660nmと440nm付近だけを出すランプを作りたいとしたとき、LEDなら可能になります。つまり、光合成や植物の成長に有意義な波長だけが作り出せるのであれば、植物育成という面で最高の発光効率が得られる可能性があるということなのです。
 反対に欠点もあるので言っておきましょう。先の図にありますが、白色LEDの発光素子だけを見ると発光効率は150lm/Wに達します。これがLED灯になると100lm/Wに落ちるのは、電源回路によるロスの外、周囲の温度の影響を受けるためです。高温の環境で利用したり回路の発熱がうまく抜けないと発光効率が落ちてきます。LEDの最も発光効率が良いのは20℃以下の低温環境なのです。一般照明として室内で利用する、あるいは水槽の上において水槽の照明に利用するのであれば、ほとんど問題は少ないのですが、高温多湿の植物の栽培環境で利用するとなると・・・発光効率が低下する可能性があります。

【LED灯の方が長寿命なのか?】

 LED灯のパッケージを見ると寿命は判で押したように40,000時間と表示があります。一方、一般照明用の蛍光灯の寿命は10,000時間、ビオルクスは7,500時間、これは確実にLEDに軍配は上がりますね!長寿命だと何がいいのか、交換しなくてもいいからお金がかからない、交換の手間がいらない、ですね。
 ちょっと計算してみましょう。LED灯は一般蛍光灯の4倍も長い寿命があります。一般蛍光灯の価格を1,000円として4倍したら、4,000円・・・直管型LED灯の価格は4,000円くらいでしょうか・・あれれ?LED灯とそんなにかわらない・・・んー交換の手間を考えなければ、同じようなものですね・・
 ビオルックスで考えると、ビオルックスは1,000円くらいでしょう。その5.3倍も長い。ビオルックスの価格を5.3倍したら、5,300円。・・・植物育成用の直管型LED灯とこれもそんなに変わらない。
   LED灯は、発光素子部分はかなりの寿命があるそうです。60,000時間あるいはそれ以上と言われます。それがなぜ40,000時間なのかというと、実は足を引っ張っているところがあるのです。
 右図が、LED灯の簡単な回路図です。当然ながら、家庭用電源に直接繋いでも発光素子は動作しません。発光素子を駆動するためには、家庭用電源ACをDCに整流し、なおかつDCを定電流制御して、発光素子に供給しなければいけません。LED灯には、この電源回路が組み込まれています。この回路の寿命と発光素子を取り付けている基盤の寿命が、発光素子自体の寿命の足を引っ張って40,000時間になっています。
 廉価な某国製ノーブランドのLED灯は、発光素子は良いものを使っても、ここの回路のパーツにかなり品質の悪いものを使ってコストダウンをしていると言われます。この一部分が故障すると、LED灯自体の交換になってしまい、そういったものは、パッケージに40,000時間と印刷されていても。実際に40,000時間までいけるかどうかかなり怪しそうです。
 もっと重要なことがあります。実は、LED灯の寿命にかかわる重要な要素は温度と言われます。前述の電源回路や基盤自身も発熱しているためそれを上手く放熱できないとLED灯の寿命をかなり縮めます。また、多湿であると回路を劣化させ寿命を短くします。それは、一般家屋での利用であればさほど重要な問題ではありません。しかし、高温多湿の植物育成の環境の中で利用するのであれば無視できないどころか最も大きな課題なのです。
 光量を増やすためには、発光素子の数を増やすか高出力の発光素子にするかですが、そうすればさらに発熱が増えていき、課題がさらに重い課題になります。
 どうしたらいいのでしょう。植物育成環境とLED灯(あるいはその電源回路部分)を切り離せればいいでしょうね。あるいは、上手い具合に放熱するとか。実際できるかどうかは分かりませんが。

*実は蛍光灯であっても、高温多湿の環境を嫌います。蛍光灯管自体よりも灯具の蛍光灯を稼働させる安定器やインバーター回路が早くダメになる可能性があります。

【赤か青か】

 前述のように、植物育成のためには、660nm前後の赤色光と450nm前後の青色光を利用するのが効率的です。それならば、どちらの光を当てた方がいいのかを考えてみます。
 光の波長により含まれるエネルギーには違いがあります。光を光子としてとらえた時に、ひとつの光子のエネルギーは、短い波長の方が多く、波長が長くなるにつれて少なくなります。
 右図は、1モルの光子のエネルギー量を示します。400nmの波長と700nmの波長では、2倍近くエネルギー量が違います。エネルギー量が違うということは、違う波長の同じ光子の量を作るためには消費電力が違うということになります。ところが、光合成の量は光子の量によりますので、エネルギーが多いからといって光合成の量が違うかというと変わらないのです。
 つまり、450nmの波長の青い光を当てるより、660nm前後の赤い光をたくさん当てた方が光合成的にはより効率がいいということになります。
 それならば、660nm前後の赤い光だけを当てておけばいいのかというと、そうではないらしく、450nmの波長の青い光には、先に少し触れましたが光合成に加え重要な働きがあるようなのです。
 それでは、どのくらいの比率で、660nm前後の赤い光と450nmの波長の青い光が混在していればいいのかということになります。これは、野菜(レタス)での実験がされていて、だいたい5:1〜10:1くらいの光子の割合がいいと考えられています。
 植物育成用のLED灯のほとんどは、660nm前後の赤い発光素子と450nm前後の青い発光素子が使われており、これを混在させている場合がほとんどです。660nm前後の赤い発光素子の数がかなり多く、450nm前後の青い発光素子が多少混じっているような感じです。それは以上の理由からなのです。
 ただ、これは特定の植物による実験結果なので、あなたが育てている見た目を大切にする観賞用の植物を「美しく」育てるためにいいのかは、本当のところは分からないのです。光合成には直接かかわらなくても、その種類の植物の成長にとって重要な働きをする波長が別にあるかも知れません。先に、LEDの利点は、特定の波長を作り出せることと書きましたが、これは逆に特定の波長しか出せないということと表裏一体なのです。

【まとめ】

 LED灯の光量は消費電力に比例します。同じ消費電力で見た場合、LEDが桁違いに光を出すという魔法があるわけではありません。消費電力の多いものはそれなりの光量があり、消費電力の少ないものはそれなりです。
 蛍光灯より消費電力の少ないものを使う場合は、あまり光量を必要としない植物を育てる場合や、あるいは季節的な一時的なものと割り切って考えるといいでしょう。その場合、いいブランドのものを使って、初期経費が高くやや割高を我慢すれば、(光量のない分)省エネにはなるし、交換の手間が少ないよということになります。ただし、高温多湿の栽培環境で利用するような場合は、早く寿命が来る可能性もあるのでその場合はあきらめが必要です。
 人によって育てたいと思う植物はそれぞれ違います。すべての栽培植物が実験されて、必要な波長が分かってる訳ではありません。ビオルックスに比較して、光の波長は絞られていますので、植物によっては、何か成長がおかしい、色付きがおかしいということがあるかもしれません。これも実験してみるしかないでしょうね。
 現在、一般照明に用いる白色発光素子は量産あるいはさらに良いものの開発が進んでいますが、660nm前後の赤い発光素子は人間の生活で利用するには範囲がかなり限定されているため(信号、警告灯、電飾等)、量産あるいは開発が進むどころか、生産も少なくなっている傾向があります。このため、植物育成用LED灯の価格はなかなか下がらない(かえって高くなる?あるいは見えないところで低品質の部品でコストダウン?)とも言われています。

植物育成用LED灯を使ってみる

 ここまでくると、植物育成用LED灯を使ってみたくなります。

 探すといろいろな植物育成用LED灯がありますが、植物育成用となっているもので国内メーカー品はありません。大陸からの輸入品がほとんどです。きちっとした輸入元もあれば、右から左へ輸入して販売しているところもあります。
 私の栽培環境は、20W直管型蛍光灯が2灯使えるサイズなので、20W直管型蛍光灯型LED灯を2灯使ってみることにしました。モノは中国からの輸入品で、かなり怪し気でできるだけ廉価なものです。スペックは以下のとおりですが、細かいデータはありませんw

【使用LED灯のスペック】

メーカー 中国某メーカー
形状 20W直管型蛍光灯型LED灯、口金G13
電圧 85V〜250V、50−60Hz
消費電力 6W
ビオルックスに比べて1/3でかなり少ない。波長や光量が適切でこれで問題なく育つのであれば言うことないのだが・・・。
LED チップ(SMD)型LED(型名等分からず)
赤660nm:40個、青440nm:8個(LEDの数的には5:1)
分光スペクトルデータ なし

【直管型蛍光灯型LED灯の取り付け】

 蛍光灯に必要不可欠なスタータも安定器もインバータ回路も、LED灯には必要がありません。ですから、直管型蛍光灯型LED灯は、既存の直管型蛍光灯の灯具にそのままでは取り付けられません。
 グロースタート式灯具の場合グローを外して取り付ければいいのですが、そのままだと蛍光灯用の安定器を介するので、これがLED灯の不安定さを招く原因になります。このため、グロースタート式灯具を改造して、LED灯の両端子に家庭用電源100Vを直結するようにした方がいいでしょう。
 今回使用したのは、インバータ式の灯具ですので、インバータ回路を捨ててLED灯の両端子に家庭用電源100Vを直結するようにしました。
 通常、20W直管型蛍光灯は、管体部分は長さ57.5〜58cm位なのですが、このLED灯は59cmもあるため、G13ソケットがはさみ込み型の場合はサイズが合わなくて取り付けできません。幸い、灯具の筐体が柔いのでG13ソケットを広げて無理矢理押し込みましたww G13ソケットが差し込み形ならいいかもしれませんね。

【直管型蛍光灯型LED灯の点灯】

 点灯すると、強烈に赤いです。直視すると目が痛くなりますね。目視では、青440nmが弱い感じです。エネルギー量からいうと10:1くらいなのかもしれません。
 はてさて、どうなることやら。

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植物育成灯・人工照明による植物育成について(当ページ)
温室・ハウスと紫外線について
ソコトラの植物‐人工環境における栽培など‐

 
 
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