2010年12月記載、2014年12月改定、2019年11月ページのレイアウトを変更
植物の光合成に有効な波長
 植物の光合成を担う色素には、クロロフィル、カロチン、フィコビリン等があり、私たちが栽培する対象となる種子植物や、コケ、シダにおいては、クロロフィル(主にa、b)、カロチン(主にβ)が重要な役目をしています(フィコビリンには、フィコエリスリン、フィコシアニン等があり、藍藻、紅藻等の藻類が光合成に利用する色素のため本章には関係ありません。)。
 クロロフィルa、クロロフィルb、βカロチンが吸収し、光合成や成長に関係する波長は下図のとおりです(吸収する=光合成に利用される、ではありません)。
 クロロフィルaは反応中心色素と呼ばれ、光を吸収伝達する役割と光合成の実際の反応を担い、クロロフィルbは集光色素として光を吸収伝達する役割を担うとされています。光が弱いとき、クロロフィルbが増えより光を集めようとします。
 βカロチンは、従来クロロフィルbと同じような働きをするものと考えられていましたが、最近では逆に強い光を受けた時のエネルギーを消す役割があるということが分かってきています。
 

 
 光合成等に関する色素を取り出してその吸収率を見たものが前の図であり、640~690nm(赤色波長)、400~470nm(青色波長)の光が最も効率的に、(ほぼ100%)吸収されることが分かります。
 他の波長でもまったく光合成ができない訳ではありませんが、かなり効率が悪いといえます。葉の内部では、外から入った光が内部で反射して何度も光合成色素を通り、他の波長の光すらも少しずつ吸収しますが、吸収できず反射して外に漏れ出た光が、植物を緑色に見せるているということを考えるならば、そのロスは少なくないでしょう。つまり、人工照明を用いて植物を栽培しようと考えるなら、限られたエネルギーのなかで、わざわざ効率の悪い波長の光を当てるより、より効率が良い640~690nm(赤色波長)、400~470nm(青色波長)の波長の光を与える方がいいということです。
 一方、人間が明るく(モノを見やすく)感じるのは、555nmの波長を中心とした光になります。このため私たちが室内で使う蛍光灯は、人間の目に明るく物がどう見えるかを重点に開発されたものであり、光合成の点で効率の悪い550~600nmの緑色、黄色波長の比率が高く、植物育成にはあまり相応しくありません。つまり、植物の光合成を効率的に行わせる波長が少ないので、これを植物育成に使用しても電気代の割に期待する効果は得られにくいということになります。
 よって、植物の育成のために人工照明を使うのであれば、効率が良い波長の光が出ているものを使うべきでしょう。
 一般的に赤色波長は光合成を促進し植物を成長させる効果があり、青い波長は植物の地上部の正常な形成、横への広がりをつくる効果、花芽の形成、ある種の色付きをもたらすトリガーとしての働きがあるとされています。