露地植え向きアガベ Agaves for outdoor garden
 露地植えといえば、アガベが主役になると思う(ただし、アガベばかりでは、情景が単調になりすぎるきらいがある。)。
 アガベ類は、北米の広い範囲に分布し、低地から標高1000mを超える高地まで自生している。種類によって耐寒性にかなり違いがあり、耐寒性の高い高緯度、高地性の種類が露地植えに向く。ただ、高地性のものがすべて大丈夫かというとそうではなく、半面暑熱や過湿に弱いものがあり、それらは露地植えには向かない。
 植物のサイズは、直径1mを超える大型種から70cm以下のものがあり、大型種はスペースを考慮の上、植え付ける必要がある。
 なおアガベについては、アガベ属分類に従ってグループ化し記載した。アガベ属分類についてはこちら→アガベ属分類

 現在、記載のもの以外についても露地植え実験をしているが、信頼性の低い他のサイト/BLOGと異なり、当サイトでは、少なくとも3年あるいはそれ以上の栽培実績がないと「露地植えできる」と言うことができない。それらのものについては、時間をかけて検証していくとともに順次記載していくつもりである。(長期計画)

露地植え向き以外のアガベについては、「その他多肉植物」の「アガベ」を参照されたい。

アガベ亜属アメリカナ節 Subgenus Agave; Group Americanae
Agave scabra A
無防寒
アガベ・sp. ぱんさ系
Agave sp. ぱんさ系

 これは「スカブラ(scabra)」として導入されたものであるが、「スカブラ」ではない。なので便宜的に「sp. ぱんさ系」と呼んでいる。
 葉は、青味があり、うねうねうねる。野趣に溢れた本種は、株径は1m程度で、かなり面白いアガベ。

 当地での露地植え栽培実績はを超える。耐寒性は極めて高く、私のところでは、1、2位を争うレベル。防寒は不要。ただ、ひとつ欠点があって、春、暖かくなる時期に、中心の展開前の葉が枯れ込むことがある。株自身は枯れてしまうことはなく、その後枯れた葉を突き破って新しい葉が展開する。この現象は、比較的大株に見られる。理由ははっきりせず、急激な気温上昇に関係するかもしれない。

Agave scabra B
無防寒
アガベ・スカブラ
Agave scabra
合衆国テキサス州~メキシコ、標高500m~1500m

 これは、普通の「スカブラ(scabra)」で間違いないと思われる。
 葉は、青味があり内側に反る。株径は1m程度で、目を引くアガベ。露地植えの主役としても素晴らしい。

 当地での露地植え栽培実績はを超える。耐寒性は極めて高い。防寒は不要。

Agave asperrima
Agave asperrima
無防寒
アガベ・アスペリマ
Agave asperrima
合衆国テキサス州~メキシコ、標高500m~1500m

 「アスペリマ(asperrima)」は、実は「スカブラ(scabra)」のシノニムになっており、前述のものと同じと考えられるが、導入の経路が違い、姿も異なるので、別称とした。
 葉は、青味があり内側に反る。株径は1m程度(自生地では2m近く)で、目を引くアガベ。露地植えの主役としても素晴らしい。

 当地での露地植え栽培実績はを超える。耐寒性は極めて高く、私のところでは、1、2位を争うレベル。防寒は不要。

Agave americana 'Striata(Striped Variegation)' 縞斑
Agave americana 基本種(青の竜舌蘭)
隣に写っているのは成人男性(174cm)
Agave americana 'Marginata' 黄色覆輪斑(竜舌蘭)
無防寒
竜舌蘭(りゅうぜつらん)
アガベ・アメリカナ
Agave americana
合衆国テキサス州~メキシコ

 「竜舌蘭」は、合衆国南部からメキシコの原産であるが、世界各地で植栽されて帰化している。
 覆輪斑のものが最初に我が国に導入され「竜舌蘭」の名で呼ばれるようになったので、その後導入された斑入の無いものを「青の竜舌蘭」と呼ぶようになった。斑入りのバリエーションも、覆輪、中斑、縞斑、斑色も黄色の「黄斑」、白色の「白斑」等がある。大株では、葉は外側に曲がり垂れる。株径は2mを超え、かなり抑えないとスペース問題が発生する。
 余談であるが、植物には、クロロフィル(主に緑色)、カロチノイド(主に黄色)、その他の色素が存在する。クロロフィルが生成されなかった部分が斑入になる。その部分にカロチノイドがあれば「黄斑」、カロチノイドもなければ「白斑」となる。人間の色彩感覚には個人差がかなりあるが、「クリーム斑」はカロチノイドは少なめだが多少あるということ。

斑の状態 呼び名
斑入りのないもの 青の竜舌蘭
黄色覆輪斑 'Marginata'
竜舌蘭
白色覆輪斑 'Variegata'
縞斑 'Striata'
縞斑竜舌蘭
白色中斑 'Mediopicta Alba'
華厳
黄味がかかる白(クリーム色)中斑 'Mediopicta'
那智の輝
黄色中斑 'Mediopicta Aurea'
那智の滝

 当地での露地植え栽培実績はを超える。強健で環境適応力に優れるが、耐寒性はむちゃくちゃ強い訳でもない。強い寒さを受けると葉先に痛みが発生することがある。斑の割合が多いものは、斑の割合の少ないものに比べ耐寒性にやや劣る。防寒は不要。

アガベ亜属ディザーティコラ節 Subgenus Agave; Group Deserticolae
Agave deserti
無防寒
アガベ・ディザーティ
Agave deserti
合衆国カリフォルニア州南部~アリゾナ州西部~メキシコ・バハカリフォルニア州

 葉はパウダーホワイトで直線的。荒々しい雰囲気のトゲと葉色のバランスが好ましい。成長はかなり遅いが、成株になるにつれ葉幅が出てくる。アガベとしては小型種で株径は自生地でも1m未満。
 この写真の株はvar. simplexとして実生したものだが、子吹きはするにはする。

 当地での露地植え栽培実績はを超える。耐寒性は高い。防寒は不要。

アガベ亜属ディテパラ節 Subgenus Agave; Group Ditepalae
Agave palmeri
無防寒
アガベ・パルメリ
Agave palmeri
合衆国アリゾナ州~メキシコチワワ州

 葉は直線的、黒トゲが特徴の本種は、美しく強健。成株になるにつれ葉幅が出てきて貫禄十分。株径は1m程度(自生地では1mを少し超える。)。

 当地での露地植え栽培実績はを超える。耐寒性は極めて高く、暑熱にも強い。防寒は不要。

アガベ亜属パリヤナ節 Subgenus Agave; Group Parryanae
Agave parryi
Agave parryi
無防寒
アガベ・パリイ ぱんさ系
吉祥天(きっしょうてん)
Agave parryi ぱんさ系

 「パリイ(parryi)」は変異/個体差多く、分類もかなり緩い。本種がそのいずれであるのかは明確ではないため、便宜上「ぱんさ系」と呼ぶ。葉は幅広く蓮華の様に重なる姿は人気がある。株径は70cm程度。露地植え庭園には1本は欲しいアガベ。

【アガベ・パリイ系分類図】
アガベ・パリイ系分類図
 余談であるが、「吉祥天」と何と読むか?であるが、「吉祥(きちじょう)」と「天(てん)」をわざわざ分けて考えるなら、「きちじょう・てん」であるが、仏教天部の一柱である「吉祥天」と考えるなら「きっしょうてん」になる。

 当地での露地植え栽培実績はを超える。耐寒性は極めて高く、暑熱にも強い。防寒は不要。

Agave parryi var. truncata
Agave parryi var. truncata
【比較用】Agave parryi ぱんさ系
無防寒
アガベ・パリイ・トランカータ
Agave parryi var. truncata
Agave parryi subsp. parryi

 「アガベ・パリイ・トランカータ(Agave parryi var. truncata)」は、基本種「アガベ・パリイ(Agave parryi subsp. parryi)」のシノニムに整理されているが、園芸的には区別されている。
 一般的な「Agave parryi」と比較した葉形の違いは下記。

 

 当地での露地植え栽培実績はを超える。耐寒性は高いが、まだ株が小さいため簡易防寒している。

Agave havardiana
アガベ・ハバルディアナ
Agave havardiana
合衆国テキサス州~メキシコチワワ州コアウィラ州、標高1200-2000m

 「ハバルディアナ(havardiana)」の成株は、「パリイ(parry)」のような幅広の葉、鞠形になる美種であるが、極めて成長遅い。写真のものは、私の実生による苗を露地植えして5年程度、まだ本来の姿は出ていない。おそらく10年は必要。自生地の成株の株径は1mを超える。

 当地での露地植え栽培実績は程度。ただ、若苗のため冬季は簡易防寒をしてきたので、2019年冬季から無防寒の試みをするつもりである。

アガベ亜属ヒエミフロラ節 Subgenus Agave; Group Hiemiflorae
Agave 吉祥冠
防寒要
吉祥冠(きちじょうかん)
Agave '吉祥冠'
園芸品種

 「吉祥冠」は名前に「吉祥」が付いているものの、「吉祥天(parry)」とは縁遠く、「ポタトルム(potatorum)」系の一品種である。このため、parryのような耐寒性は期待できない。株径は30cm程度。
 余談であるが、「吉祥冠」と何と読むか?であるが、「吉祥冠」という言葉はそもそもなく、「吉祥(きちじょう)」と「冠(かんむり)」の合成語なので「きちじょう・かん」。

 当地での露地植え栽培実績はを超える。耐寒性はあまり高くなく、冬季には簡易防寒が必要。斑のくっきりしたものになるほど耐寒性は欠ける。

リッタエ亜属マルギナタ節 Subgenus Littaea; Group Marginatae
Agave aff. difformis
Agave aff. difformis
無防寒
アガベ・aff. ディフォルミス
Agave aff. difformis

 「ディフォルミス(difformis)」は、北部中央メキシコのヒダルゴ、サン・ルイス・ポトシの標高1500m-2000mに自生するアガベで、近縁種には「レチュギュラ(Agave lechuguilla)」がある。この2つは外見上ほとんど区別が付きにくいので、本種がどちらかは不明である。というより、我が国で一般的にレチュギュラとされているものが、本当にそうなのかも分からない。このため、本種は「ディフォルミス類似種(Agave aff. difformis)」とした。
 葉は幅狭く長く、中肋あたりが白っぽい。葉裏には斑点がある。やや葉はうねる。株径は1m程度。

 当地での露地植え栽培実績はを超える。耐寒性は極めて高く、私のところでは、1、2位を争うレベル。防寒は不要。土壌湿度や暑熱にも耐えるので、露地植え以外では考えられないアガベと言ってよい。ただし、葉は鋭いので、それなりのスペースを確保できる露地植えガーデンが向く。

リッタエ亜属フィリフェラ節 Subgenus Littaea; Group filiferae
Agave filifera
Agave filifera
無防寒
アガベ・フィリフェラ
Agave filifera
メキシコ中央高地

 葉は直線的、細く白い条紋(俗に言うペンキ)、葉縁にフィラメントを付ける。株径は50cm程度。青物が多いアガベの添え役として素晴らしい。

 当地での露地植え栽培実績はを超える。耐寒性は極めて高く、暑熱にも強い。防寒は不要。

Agave Leopoldii
無防寒
滝の白糸(たきのしらいと)
アガベ・レオポルディ
Agave 'Leopoldii'

 葉は直線的、細く白い条紋(俗に言うペンキ)、葉縁にカールしたフィラメントを付ける。株径は30cm程度。青物が多いアガベの添え役として素晴らしい。

 当地での露地植え栽培実績は。耐寒性は中程度。防寒は不要。寒さが強い場合は、葉に傷みが生じるが、枯れてしまうことはない。露地植えで直射日光が当りすぎる等荒い環境の場合、白い条紋やフィラメントが退化しやすいので、植える場所に考慮が必要(例えば樹下とか、東向き庭園とか。)。

リッタエ亜属ストリアタ節 Subgenus Littaea; Group striata
Agave striata
無防寒
耐寒吹上(たいかんふきあげ)
アガベ・ストリアタ
Agave striata
メキシコ中央高地、標高670~2100m

 葉は幅狭く直線的。「吹上(Agave stricta ストリクタ)」に似る。株径は1mを超えるか超えないか。「耐寒吹上」は当方での呼び名。

 当地での露地植え栽培実績はを超える。耐寒性、耐暑性に優れ、防寒は不要。

マンフレダ亜属 Subgenus Manfreda
Manfreda maculosa
Manfreda maculosa冬季の休眠状態
無防寒
アガベ・マクラタ
マンフレダ・マクロサ
Agave maculata
=Manfreda maculosa
合衆国テキサス州~メキシコ北部

 古くはマンフレダ属、現在ではアガベ属に吸収された。葉に紫色の斑点模様が入るのが特徴。地中には球根をもつ。球根性アガベ。冬季には地上部は枯れて球根で越冬する。アガベというよりは球根性の多年草と考えるとよい。
 旧アガベ属との間にたくさんの交配種が作られている。

 当地での露地植え栽培実績はを超える。耐寒性、耐暑性に優れ、防寒は不要。