ぱんさのサボテンランド

オルトラン水和剤と液剤の適用害虫はなぜ違うか?


オルトランいろいろ

 オルトランは、浸透移行性殺虫剤として非常に有名な農薬であり、植物の栽培家でオルトランを知らない人は皆無であろうと思う。
 このオルトランには、

○オルトラン粒剤
○オルトラン水和剤
○オルトラン液剤
○オルトランC
○オルトランDX粒剤

等があるが、その違いはご存知だろうか?
 「オルトランC」、「オルトランDX粒剤」は、オルトランの基本的な有効成分であるアセフェートに、前者はMEPとトリホリン、後者はクロチアニジンを加えたもので、適用範囲が広くなっていたり、Cについては容器がエアゾール型で撒きやすくなっていたりする。
 「オルトラン粒剤」と「オルトラン水和剤/オルトラン液剤」は薬剤の形状の違いで、粒剤は顆粒状で、そのままパラパラと散布できる。散布対象が少量であれば手間がかからなくて家庭園芸向き。一方で「オルトラン水和剤/オルトラン液剤」は希釈し噴霧器等で散布する。散布対象が多ければそちらの方が効率的である。
 それなら、「オルトラン水和剤」と「オルトラン液剤」の違いはなんだろうか?水和剤は粉状で、液剤は液状なだけ?

 ところが、この2つの薬剤の適用害虫を見ると、かなり違っている。これはなぜか?これはオルトランを利用している人が感じる疑問だろう。

オルトラン水和剤 オルトラン液剤
○アザミウマ(アザミウマ類、カキクダアザミウマ、チャノキイロアザミウマ、ネギアザミウマ、ミカンキイロアザミウマ)
●アブラムシ類
○エカキムシ(ネギコガ、マメハモグリバエ、ヨメナスジハモグリバエ)
○カイガラムシ(カイガラムシ類、ツノロウムシ、ヤノネカイガラムシ(第一世代)、ルビーロウムシ)
○カキノヘタムシガ
●ツツジグンバイ
●ケムシ・アオムシ(アオムシ、アメリカシロヒトリ、カブラハバチ、コナガ、ジャガイモガ、モンクロシャチホコ、タマナギンウワバ)
○コガネムシ(ケシキスイ類、コアオハナムグリ、シバオサゾウムシ成虫、テントウムシダマシ幼虫)
○コナジラミ(タバココナジラミ、ミカントゲコナジラミ)
○オオタバコガ
●チャドクガ
○ネキリムシ(タマナヤガ)
○シバツトガ
○ハマキムシ(ハマキムシ類、コカクモンハマキ)
○アカフツヅリガ
○メイガ(ハイマダラメイガ、アワノメイガ、ダイコンシンクイムシ)
○ヨトウムシ(スジキリヨトウ、ハスモンヨトウ、ヨトウムシ)
○カキノヒメヨコバイ
○ケラ
○フタテンヒメヨコバイ
○ゴボウノミドリヒメヨコバイ
●アブラムシ類
●ツツジグンバイ
●ケムシ・アオムシ(アメリカシロヒトリ、オオスカシバ、チュウレンジハバチ、ベニモンアオリンガ、ミノウスバ)
○サンゴジュハムシ
●チャドクガ

 さて、あなたに問題。「オルトラン水和剤」と「オルトラン液剤」の適用害虫が違うのはなぜか?以下から選びましょう。
 A1 有効成分が違うから。
 A2 含有量が違うから。
 A3 その他。

有効成分と含有量

 オルトラン水和剤とオルトラン液剤の有効成分は、どちらもアセフェート(O,S−ジメチル−N−アセチルホスホロアミドチオエート)である。したがって有効成分が違うわけではない。
 それなら含有量が違うのであろうか?

●オルトラン水和剤のアセフェートの含有量は50%
●オルトラン液剤のアセフェートの含有量は15%
(農薬登録情報システム(農林水産消費安全技術センター)より)

おおっ!含有量が違うから、適用害虫が違うのか!・・・と思うのはまだ早い。なぜなら、農薬は原液をそのまま使うわけではない。
 オルトラン水和剤の希釈率は1000倍〜2000倍、オルトラン液剤の希釈率は250倍〜500倍、希釈後から考えると、含有量は変わらない。
 それならなぜ?

農薬取締法と農薬の登録

 わが国では、農薬メーカーが新しい農薬を作ったからといって、自由気ままに製造し販売することはできない。農薬取締法に基づき農林水産大臣の登録を受けなければならない(第二条)。
 この登録のためには、農薬の薬効、薬害、毒性及び残留性に関する書類等をメーカが作成しなければならない(第二条)。薬効では、害虫に対する試験成績も必要になる。その試験成績の結果が、農薬に表示される「適用害虫」となる。

 それなら、世の中にいるありとあらゆる病害虫に対して(それも作物ごとに)メーカーは試験をするのだろうか?作物の種類、植物の病害虫は数限りないので、それはまず無理。どの作物のどの病害虫にその農薬が効くかを調べるには、かなりの時間とコストが必要だからだ。
 また、当然にして、農薬の品目ごとに登録が必要なので、「オルトラン水和剤」と「オルトラン液剤」は有効成分が同じだから省略しよう・・という訳にはいかない。
 それならメーカーはどうするのだろうか?同じような農薬が2種類ある・・・メーカーとして力を入れている売れ筋農薬は、コストをかけても有効範囲を徹底的に調べるだろうし、一方、そうでない農薬は・・・どうしても試験の範囲は狭くなる。

 つまり、「オルトラン水和剤」と「オルトラン液剤」の適用害虫の違いは、実際に効くか効かないかということではない。有効成分の違いでもないし、含有量の違いからくるものでもない。ただ単純にメーカーがその農薬について適用害虫の試験をして、その成績を、農薬の登録申請時に提出したかどうかの違いだけなのである。
 適用害虫の多い農薬は、よく効く農薬というよりも、その農薬をメーカの戦略上、力を入れて販売したいので、コストをかけて試験を一生懸命やったからだと言ってもいい。
 したがって、先のクイズ『「オルトラン水和剤」と「オルトラン液剤」の適用害虫が違うのはなぜか?』の答えは、A3の「その他」になる。「オルトラン水和剤」と「オルトラン液剤」の適用害虫が違うのは、「オルトラン水和剤」の方を、メーカがより力をいれて試験したからだ・・・と言えるのだ。


 
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