ウチワサボテン「大丸盆」について
 大丸盆は、かなり古くからあるウチワサボテンですが、その実、正体がはっきりしておらず、直径30cmを超える丸い茎節を持つものであれば、なんでも大丸盆とされてきました。
 ところが、サイズというものは栽培環境により差がありますし、丸い茎節を持つものはウチワサボテンにはいくらでもあります。
 少なくとも学名がはっきりしていれば、正体がつかめるものの、学名もはっきりしておらず、文献ごとにバラバラです。

 昭和41年刊のサボテン和名学名対照便覧では、大丸盆の対照学名は、Opuntia grangetray?、類似種の巨人団扇はOpuntia grandisOpuntia undulata、大王団扇はOpuntia robusta、天人団扇はOpuntia engelmanii、となっています。
 昭和47年刊の原色サボテン・多肉植物大図鑑では、大丸盆の対照学名は、Opuntia engelmanii?で、天人団扇と同種、類似種の巨人団扇はOpuntia undulata、大王団扇はOpuntia robusta、という感じです。
 2000年刊の原色サボテン事典では、大丸盆の対照学名は、Opuntia grandis "major"?で、類似種の巨人団扇はOpuntia grandis、大王団扇は収録なくOpuntia robustaはロブスタとして記載、天人団扇はOpuntia engelmanii、となっています。
 最近の書籍では、Opuntia robustaに対照される場合もあります。

【各文献に現れる「大丸盆」の対象学名】
文献/資料O.grandis
=O.stenopetala
O.undulataO.robustaO.engelmaniiO.grangetrayO.phaeacantha
var. major
サボテン和名学名対照便覧
日本カクタス専門家連盟
巨人団扇巨人団扇大王団扇天人団扇大丸盆(記載なし)
原色サボテン・多肉植物大図鑑
誠文堂新光社
(記載なし)巨人団扇大王団扇大丸盆(記載なし)(記載なし)
原色サボテン事典
日本カクタス企画社
巨人団扇
大丸盆
(記載なし)ロブスタ天人団扇(記載なし)(記載なし)
サボテン多肉植物の育て方
誠文堂新光社
(記載なし)巨人団扇御鏡
大丸盆
(記載なし)(記載なし)(記載なし)
サボテンの本
同朋舎出版
(記載なし)(記載なし)大丸盆(記載なし)(記載なし)(記載なし)
太田氏分類サイト
CACTUS2000
ステノペタラウンデュラタ大王団扇
御鏡
天人団扇(記載なし)大丸盆
巨人団扇
大王団扇

 こうなってくると、「大丸盆」と命名された基準株があるわけでもないので、何をもって大丸盆というべきかは計りようがなく、「大丸盆みたいな」ウチワサボテンは、何でも大丸盆と言ってしまってもしかたありません。自分の持ってるものが『本家』大丸盆だー!とか、『元祖』大丸盆だー!とか考えればいいでしょう(笑)。こだわっても、真の大丸盆を判断する基準がないのです。

 ウチワサボテン類は強健で分布も広く、古くから人間とのつながりも深く、世界中で栽培されたり又は帰化しています。「大丸盆」は、何かのウチワサボテンのひとつのタイプあるいは雑種(交配種)なのかもしれません。
 何が大丸盆なのかこだわっても仕方がない、と言いつつ、一応、各書籍の図版にある大丸盆の特徴な部分を以下に挙げておきます。

○茎節の直径が30cmを超える。
○茎節は真円に近い丸型。
○目立つ刺は、ないか、1本でまばら。
○茎節は1~2cm程度の厚みがある。
○肌は粉を吹き青みがある。


「大丸盆」風ウチワサボテンwこれも大丸盆なのかそうでないのか
分からないもののひとつ

佐藤氏系「大丸盆」。
写真提供:フォル氏