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柱サボテン 
 このページは、ぱんさの栽培する柱サボテンをまとめています。
 ここまでお見えになった方は、かなりのマイナー植物マニアとみました。

はじめに
 柱サボテン(Columnar Cactus)の魅力は、野性味、壮大さ、強健さにあると言えます。自生地にある柱サボテンの林立や叢生を見て感動しない人はいないでしょう。
 戦後、多くの柱サボテンがわが国に導入されましたが、こじんまりとした種類がもてはやされることから、普及種を除いて入手が難しくなってしまいました。嘆かわしいことに、名無しや誤名で流通していることが多くあり、すでに名前が分からなくなってしまったものも多く、サボテン専門ショップでも、大型の柱サボテンは数種類程度扱っていればいい方でしょう。
 このページでは、ぱんさのところにある少しばかりの栽培種を紹介します。
 なお、柱サボテンは、耐寒性があるように思われていますが、それは一部であって、メキシコ~中米原産の柱サボテンはそんなに寒さに強いわけではなく、一般的なサボテン並みです。耐寒性があるのは、南米ペルー等の山岳地帯やチリ、アルゼンチンを原産とする一部の種類と考えてもらっていいでしょう。
 柱サボテンの魅力はガッチリとした体躯にありますので、栽培のポイントは徒長させないことに尽きます。新しく成長した部分が、それまでよりもひょろひょろと細くなってしまったのでは失敗作以外の何物でもありません。成長期には、十分すぎるくらいに日光に当て、灌水や追肥も十分に与え育てる必要があります。

柱サボテンとは
 「柱サボテン」とは、サボテン科の植物のうち、柱状になる雑多なサボテンをまとめた、あくまで園芸的な、かなりいい加減な総称です。分類系統的な位置づけとは関係がありません。玉サボテンとよばれるサボテンでも背が高くなるものもありますが、柱サボテンにされなかったりと、しっかりした定義があるわけでもありません。
 柱サボテンの分類的な位置付けについては、以下を参照してください。

柱サボテンの分類(サボテン科の分類における柱サボテンの位置付け)

 同様に「紐サボテン」という名称も分類学的にてんでバラバラのサボテンを細い紐、細い柱状になるという形状でまとめた、あくまで園芸的な、かなりいい加減な総称です。分類系統的な位置づけとは関係がありません。

 なお、柱状のトウダイグサ科ユーフォルビアを柱サボテンとして無知な園芸店が売ることもあって、初心者がよく間違えて検索することがありますが、大雲閣(Euphorbia acrurensis)、紅彩閣(Euphorbia enopla)、キリン冠(Euphorbia grandicornis)、ラン嶽(Euphorbia abyssinica)、沖天閣/インゲン柱(Euphorbia ingens)、白角キリン(Euphorbia resinifera)などは、柱サボテンではありません。サボテンですらありません。

柱サボテンは花咲くの?

柱サボテンには「比較的」早く咲くものも「一部」にある。
 よく「柱サボテンは花咲くのか?」と聞く人がいます。サボテン科の植物は「顕花植物」ですので、当然、花は咲きます。大きさも色も形も色々です。多分こういうことを聞く方は、ちょっと育てればカワイイお花が咲くと期待しているのだと思います。
 彼らは本来「柱サボテンはどのくらいになったら花は咲くのか?」と質問するべきでしょう。それならば、本当に聞きたい答えを得ることができます。回答は・・・種類によって色々ですが、大型の種類では「大温室で地植えして十数年~数十年を経て5mくらいになったら咲くでしょう。」と答えることになります。ただし、植物園等の大温室においても人工栽培下では、花を見たという記録がない種類もあります。
 開花済みの成株から挿木した株は、成熟しているので、条件がそろえば比較的早く咲きます、が、それでも簡単に咲くようなものではありません。比較的花が咲きやすいものは、クレイストカクツス属、ハリシア属、ケレウス属、森林性紐サボテンの各属でしょう。栽培家の寿命が尽きる前に花を見ることができる可能性があります。
 よく花の写真を見たいがために、「(そのサボテンの和名) 花」とGoogle検索している人がいますが、上記のことから、日本ではいい写真はみつからないでしょう。花の写真が見たいのであれば、「(そのサボテンの学名) flower」で画像検索すれば、自生地における花の写真が見つかります。
 なお、成長点が著しく乱れている石化種は、ほぼ花は絶望的です。まあ、咲かないと考えた方が早いでしょうね。稜乱れ石化種は、基本種と同じです。
 

柱サボテンの栽培(育て方)
 柱サボテンとは、前述のとおり分類学的にてんでバラバラのサボテンを「柱っぽくなる」ということで、まとめた園芸上の呼び名です。このため、原産地も違えば、当然育っている環境も違います。「柱サボテン 育て方」とかでよく検索する人がいますが、一般的な普及種ならともかく十分な解答は得られないでしょう。
 柱サボテンの栽培の以前に、ふつーのサボテンの栽培が理解できてるか、あるいは植物の栽培というものが理解できているかが大前提です。少なくとも、ふつーのサボテンが栽培できていれば、柱サボテンは栽培できます。
 一般のサボテンでも同じなのですが、サボテンの栽培管理上で最も重要なのは、「いつが成長期か?」ということです。これが把握できればかなり上手く作ることができます。「柱サボテン」としてくくられているサボテンの中には、かなりの高温期を好むものもあれば、冷涼さを好み高温期を非常に嫌うものがあります。それを同じように栽培していたら、どちらかが枯れてしまうでしょう。
 大体において、成長期は属のくくりで判断することができます。好む成長期を把握することは、サボテンの生死にかかわりますので、もっとも基本の事項なのです。それが分かっているということが大前提で、どの程度潅水すれば、あるいはどの程度肥培すれば、よりよく作れるのかの段階に行くのです。
 前述のように「紐サボテン」も分類学的にてんでバラバラのサボテンまとめた園芸上の呼び名なので、まず統一的な栽培方法はありません。
 セレニケレウス属、ヒロケレウス属、ディソカクツス属は森林性紐サボテンと呼ばれることがありますが、そのくくりでも栽培は大きく違います。セレニケレウス属、ヒロケレウス属は、温暖な時期を好み、高温にも成長旺盛です。ところがディソカクツス属になると、高温や蒸れをとても嫌いますので同じ扱いはできません。ましてや、森林性でないクレイストカクツス属の一部、アルトロケレウス属、アロハドア属、ペニオケレウス属、ウィルコキシア属は住む世界がまったく違います。

柱サボテンの徒長
 柱サボテンがうまく育てられているかどうかは、簡単に見分けがつきます。それは、太さを見ればいいのです。根元からみて、先が途中から細くなっているのであれば、完全な失敗作です。
 売られている柱サボテンでもこういう状態のものが見られますが、条件の悪い売り場に長く置かれていたために起きたのです。ネットオークションなどで、そういう状態になったものを堂々と写真を上げて出品されているのを見ると、「ああ。長く売れ残りになっているのを処分するんだなあ」と思ってしまいます。
 柱サボテンを入手しても、自分のところで栽培すると、新しく成長した部分が細くなってしまったら、栽培に問題があるということです。
 細くひょろひょろになることを「徒長」といいます。徒長の最大原因は、日照不足です。植物が日照不足になると、横方向に伸びるエネルギーを縦方向に使い、日照不足悪環境からの脱出を図ろうとします。そのため、細くひょろひょろに伸びていきます。野菜のモヤシがいい例でしょう。
 よくショップが、売りたいがために「サボテンをインテリアに」と書いたりしていますが、多くのサボテンは十分な日照が必要で、室内で栽培すれば、ひょろひょろ徒長した醜い植物になっていきます。この徒長というものをよく分かっていない初心者さんが、ひょろひょろに徒長したサボテンの写真を挙げて、「成長してます!」なんて平気でいっているのには驚きです。一度徒長させると、その細い部分は、その他の部分と同じように太くはなりません。
 徒長させないようにするにはどうしたらよいか・・・
 それは簡単で、十分な日照を与えて育てることです。1年中室内に置いているのなら、あきらめるしかありません。たまに日光浴してもムリです、絶対的に足りません。
 成長期には屋外で十分な日照を与えてがっしりとした姿に育てましょう。一方、低温期にはどうするべきか・・それは休眠させて成長させないようにします。低温期は、もともと日照が弱く、ましてや冬季保護のため室内で管理するとなると日照が足りません。その場合は、いさぎよく休眠させます。室内は暖かいからといって、ダラダラと潅水を続けると少ない日照で成長し続け醜い徒長サボテンになります。
 そのほか、日照が十分あっても、根詰まりをしたり、肥料不足状態で成長させても、がっちりとした組織をつくれず徒長します。その場合は、植替えを適宜行っていく必要があります。おおよそ、初心者さんが「サボテン 徒長」で検索してこのページにくる場合は、こちらによる徒長よりも前者による日光不足による徒長でしょう。
 よく徒長の原因は、「水のやりすぎ」とか「肥料のやりすぎ」とか言う人もいますが、これは違います。「日照不足」が前提としてあって、それなのに「水のやりすぎ」「肥料のやりすぎ」をするので激しく徒長するのです。「水のやりすぎ」「肥料のやりすぎ」は「徒長を助長させる」のであって、そもそもの主因は「日照不足」なのです。十分な水分や養分が供給され、十分な日光を得ることができる露地植えでは徒長どころか、驚くほどのがっちりした姿になります。

サボテンのモンスト種(石化種)
 柱サボテンに限らず、サボテンにはいろいろなモンスト種(モンストロサス、monstrosus)がみられます。このモンストロサスという言葉はかなり意味の幅が広い言葉です。元々の意味は「異常発育の」「奇形の」といった意味です。サボテンに見られるモンスト種には、いろいろなタイプがあり、基本種より形が著しく変わっていれば「モンスト種」と言ってもいいでしょう。日本語で「石化種」といった場合は、こうしたモンスト種の中の一部の形状のものを指す場合が多いと言えます。
 だいたい以下のような形状のものがモンスト種となります。

○成長点の乱れたもの(狭義の「石化」といえる)。成長点の帯状になったもの(綴化(cristata)と呼ぶ)。
○仔吹きの著しく旺盛なもの。「仔吹き○○」と呼ばれることが多い(カエスピトサス(caespitosus)と呼ぶ)
○稜が乱れる又は凸凹なもの。線状であるべき稜が粒状になったもの。稜が消失したもの。
○稜が螺旋を描くもの(スピラリス(spiralis)と呼ぶ)。
○刺座が消失したもの。(稜が消失しかつ刺座が消失したものをオバリス(卵円状)モンストロサス(ovalis-monstrosus)と呼ぶことがある)
○1種に2種の細胞が混じって、ごちゃごちゃ、あるいは乱れた斑が入るもの(キメラ(chimera)と呼ぶ)。(次項参照)

 たとえば、
「岩石獅子」は、「鬼面角」の成長点が乱れ、稜が乱れるもの
「金獅子」は、基本種がはっきりしませんが、成長点に乱れがあり、分頭・仔吹きが著しく旺盛、稜が乱れるもの
「フェアリーキャッスル」は、基本種がはっきりしませんが、仔吹きの著しく旺盛なもの
「仔吹き烏羽玉」は、「烏羽玉」の仔吹きの著しく旺盛なもの
「福禄寿」は、「上帝閣」の成長点は正常だが、稜が乱れ、刺座が消失したもの
「珍宝閣」は、「天守閣」又は「マクロゴヌス」の稜と刺座が消失したもの、成長点も消失することがあります。
「福禄竜神木」は、「竜神木」の成長点は正常だが、稜が乱れるというか凸凹なもの
です。


 右の写真は、モンストのタイプの違いです。この3つは同じ種類です。同じ種類でありながらモンストのタイプによりこれだけの違いがあります。
左:正常なもの
中:稜に乱れが生じるモンスト
右:さらに成長点に乱れがあるモンスト


サボテンのキメラ(Chimera)
 1種に2種の細胞が混じって、ごちゃごちゃ、あるいは乱れた斑が入るものをキメラ(chimera)と呼びます。三角柱と緋牡丹のキメラがよく流通しています。三角柱に近い形状になったり、緋牡丹に近い形状になったりでたらめ感があって面白いものです。
 このキメラ(chimera)は、「接木キメラ(Graft-chimaera)」です。前述のとおり、1種に2種の細胞が混じっているもので、これは、半分人工的に、半分偶然にできます。接木されたサボテンは、融合面においてキメラ状態にあります。東南アジアで大量に作られている緋牡丹の三角柱接ぎを、融合面で僅かに細胞を残して切断すると、偶然にしてキメラが発生します。この部分を育苗したものです。

毛柱サボテン?
 「柱サボテン」という言葉自体かなり曖昧な言葉ですが、よく聞く「毛柱サボテン」というのも漠然とした言葉です。そういった分類学上のグループがあるわけではなく、毛が生えているように見える分類学的にはバラバラな所属の柱サボテンの総称です。
 主に「毛柱サボテン」つまり毛が生えているように見える柱サボテンには、以下のものがあります。

エスポストア属の大部分 毛柱サボテンとしてイメージするものは、おそらくこの属です。一部、毛というよりは細い刺を密生するものがあります。
クレイストカクツス属の一部 毛というよりは細い鋭い刺が密生します。遠目で見れば毛に見えますが、安易に触らないほうがいいでしょう。折れて皮膚に残ることがあります。
オレオケレウス属の大部分 鋭い強刺の根元から羊毛が発生します。鋭い刺とホワホワとした毛が対照的でとても魅力的です。
ピロソケレウス属の一部 刺座に刺とは別に羊毛を発生するものがあります。「偽花座」といって花が着く場所に多くの毛を密生するものがあります。
ユーリキニア属の一部 鋭い刺とは別に刺座から短い羊毛が発生します。刺座がフェルト状のボンボンになってとても魅力的です。
ケファロケレウス属 すべての刺がゴワゴワとした羊毛状で体を被います。普通のサボテンは刺とは別に羊毛が発生するのですが、本種のように刺が毛状になってしまったサボテンは他にあまりありません。

 一部「白毛柱」という名称で流通する柱サボテンがあるようですが、旧来「白毛柱」という和名はありません。おそらく、エスポストア属の不明種に誰にでも分かるように簡単な名前を付けたものだと思われます。

柱サボテン成木のシルエット
 私たちが目にする「柱サボテン」は幼木なので、どれも同じような形状に見えますが、一口に「柱サボテン」といってもいろいろな種類を包括した総称なので、自生地の成木にはその種類によりさまざまな形状があります。
 実際にこの形状にまでなるには、とても長い時間が必要になります。


【形状1】
基本的に単幹で、高い位置で分岐する。

例)
カルネギエア属 弁慶柱
ネオブスクバウミア属 大鳳竜
【形状2】
基本的に単幹で、分岐は無いか少ない。

例)
ケファロケレウス属 翁丸
【形状3】
根元で叢生したり、幹の途中で分岐する。多くの柱サボテンがこの形状となる。

例)
ケレウス属 鬼面閣
トリコケレウス属 青緑柱

【形状4】
基本的に単幹で、分岐をし大きな樹冠を作る。

例)
パキケレウス属 武衛柱

【形状5】
根元で叢生し立ち上がる。

例)
エスポストア属
クレイストカクツス属

【形状6】
根元で叢生し群生をつくる。形状5との違いは高さ。ある程度の高さになると倒れて先が立ち上がるのも含む。
一般に玉サボテンで群生するものもこの形状になるので、実際は玉サボテンとの違いはあまりない。

例)
トリコケレウス属 猛槍竜
ハアゲオケレウス属
エキノケレウス属(エビサボテン類)

【形状7】
一時的に頭をもたげることはあるが、基本的に地面を這う。

例)
ステノケレウス属 入鹿
トリコケレウス属 黒鳳
クレイストカクツス属 黄金紐

【形状8】
基本的に単幹、枝は細く枝の途中で分岐し、お互いに支えあったり、近くに茂みや岩、樹木等があればそれにもたれたり垂れ下がったり這ったりする。

例)
ペニオケレウス属
ハリシア属

【形状9】
枝は細く叢生または枝の途中で分岐し、岩や樹木等によじ登ったり垂れ下がったり、気根で着生する。

例)
セレニケレウス属
ヒロケレウス属
ディソカクツス属


柱サボテンの入手
 柱サボテンは、たまに園芸店で大鉢ものが出るほか、サボテン・多肉植物専門店でも取り扱いが少ないのが普通です。名無しや誤名もかなりあります。
 柱サボテンの入手は「【イベント出店専門】ぱんさのサボテンランド直営店」にて。