ネコに関する疑問に答えます
〈11〉ネコのルーツと種類
A: 猫と一口にいっても、三毛ネコ、ぶちネコ、黒ネコ、白ネコ、あるいはペルシャネコ、シャムネコと多種多様です。毛色や模様による分け方や猫の種類による分け方など呼び名はいろいろありますが、これら私たちの身のまわりにいる猫はすべて、正式には「イエネコ」と言います。
イエネコとは、ネコ科の小型哺乳類のなかで人間によって家畜化されたものを指します。それ以外の野生のネコ科の小型哺乳類は「ヤマネコ」と呼ばれ、世界に40種類近くいます。飼い主のいない野ネコ(いわゆるノラネコ)は野生に近い暮らしをしていますが、ヤマネコとは違います。野ネコもイエネコと同じ特徴を持つれっきとしたイエネコです。飼い主を失ったイエネコが野生化したものが野ネコです。
さて、イエネコの祖先ですが、紀元前600〜200年のものと考えられているエジプトのピラミッドから、190体もの猫のミイラが発掘され、このうち、3体を除いたすべてがリビアネコだと鑑定されました。このことから、イエネコの祖先はリビアネコというヤマネコだといわれています。
リビアネコはアフガニスタン、アラビア半島、北アフリカなどに分布するヤマネコで、体格はイエネコとほぼ同じです。古代エジプト文明の発達とともに、リビアネコの住める区域が狭くなり、自分の縄張りを持てない弱くて若い猫が人の生活区域近くにあらわれるようになったことが、家畜化の始まりだろうと考えられます。ときに「ニャーオ」と人に甘える猫がいれば、人はかわいいと思うはずですし、ネズミを捕獲する高い能力が穀物の保護に役立ったことも、家畜化の理由だったと思われます。
A:イエネコの祖先はリビアネコですが、さらにぐんぐん時代を遡っていくと、「ミアキス」という動物にたどりつきます。ミアキスは、恐竜絶滅後まもない約6500万〜4800万年前に生息してた肉食の哺乳動物です。ふだんは木の上に暮らし、小動物をとって食べていたと考えられています。脳はそれほど発達しておらず、体長20p程度のテンやイタチに似た体型だったと想像されます。この動物で特筆すべきは、爪と牙で獲物を攻撃するという新しい技をあみだしたことです。この方法によれば、頑丈な顎をつかって素早く殺せるので、相手の反撃にあうことが少なく、より確実に獲物をしとめることができます。
やがて、ミアキスから枝分かれして、多くの動物が誕生してきましたが、そのなかには犬もいます。身近な動物の代表である犬と猫は、タイプのまったく異なる動物のように思えますが、実はルーツは向じということになります。ネコ類はミアキスと何じように、その住みかを隠れ場所の多い森林に求めました。森林のような環境では、単独で行動し、相手にしのびよって獲物をとるほうが効率がよかったため、現在のように単独で生活し、狩りをおこなうようになりました。一方、見通しのよい平原に住みかを求めのが犬です。平原では、獲物を全速力で追いかけてとる方法が有利なため、走る能力がどんどん発達しました。また、単独では大きな獲物を追いかけて捕獲するのはむずかしいため、群れをつくって集団で生活し、狩りをするようになったのです。
A:イエネコは8世紀の遣唐使時代に、仏典と一緒に中国から日本にやってきたとされますが、はっきりとはわかっていません。
かつてイエネコは、中国からきたので「唐猫」と呼ぱれていました。唐猫とわざわざいうのであれば、在来の猫もいたのではないかと考える人もいます。文献に初めてイエネコが登場するのは、平安初期に書かれた『宇多天皇御記』。天皇が中国からきた黒猫をとても可愛がっていたことが記されています。そして文献に現れる初めての猫の名前は、「命婦のおもと」なる麗々しいもので、10世紀末に、一条天皇が宮中で生まれた子猫につけた名前です。
いわゆる日本猫や和猫といわれるのは、シッポが短くて胴も短く太いタイプです。このような猫が定着したのは、江戸時代の中期といわれます。長いシッポだとふたつに割れて化け猫になるからと、シッポの短い猫が愛されるようになったのですが、各地に猫股という化け猫伝説が伝わっているにもかかわらず、ヨーロッパと違い日本では、猫を嫌って大量に殺すという騒ぎは起こっていません。
中国から渡来して以来、終始かわらず愛玩動物として、また優秀なネズミとりとして大切に扱われてきたようです。
A:犬の場合、鳥や小動物の狩猟、牧畜の番犬など、いろいろな分野の仕事があり、その目的にあったタイプが必要だったため、古くから人為的に純血種がつくられてきました。しかし主な仕事がネズミとりだった猫に、格別な種類をつくる必要はありませんでした。また、純血種をつくるには、勝手に交配しないよう管理する必要がありますが、自由に出歩きたがる猫にそれを強要するのはむずかしかったのです。
猫の純血種がつくられるようになったのは、ここ1世紀くらいのことです。地域別に見られる容姿の特徴をもとに理想の容姿を規定して、それにあった猫を選択的に交配してきました。各猫種によって気質にも特徴はありますが、犬ほどはっきりしたものではありません。
A:ペルシャ猫やチンチラ猫のような、丸顔で長毛の猫は、どちらかというと気質が温和で、態度もおっとりしています。また、白い猫もおとなしい傾向があります。実は白という色は、野生の動物にはほとんど見られません。氷や雪の世界で暮らす動物は別として、体が白いと目立ってしまい、野生では長く生きられないのです。白ライオンや白カラスなど、ときどきあらわれる白い野生動物は、突然変異で生まれた、アルビノと呼ばれる色素を持たないものです。白い猫も最初は突然変異で生まれました。本来ならこんな目立つ色では生きていけませんが、人に飼われているぶんには問題ありません。珍しい色であることと、もともと弱い種だったため、おとなしく、飼いやすいことから、多くの人にもてはやされたため、急速に増えていったと考えられます。
○主な長毛種の基本性格
・従順で穏やかなペルシャ
色の種類が豊富で、長毛種の半分近くを占めます。丸くたいらな顔、豊かな被毛。従順で温和、動きもゆったりとして優雅。他にヒマラヤンなども
・明るく外交的なソマリ
短毛のアビシニアンから生まれ、1960年代に品種として確立。細めの顔で筋肉質。活発で外交的な性格
・独立心旺盛のメインクーン
18世紀後半、アメリカで誕生。V字型の顔で、オスは約8sと大きめ。もともとはネズミとりのために船に乗せられて仕事をしていたためか、独立心旺盛
A:猫の多くは短毛ですが、長毛猫と比べると、とても活発に動きまわる傾向があります。特にシャム猫をはじめとしたアジア系の猫や、アビシニアンのような顔がほっそりしたタイプは、筋肉質でひきしまった体をしており、疲れを知らずに遊びまわります。家のなかでのいたずらも多いといえるかもしれません。
短毛種はよりひとなつこい傾向もあります。人に甘えたり、かまってもらいたがる気持ちが強いのです。それだけに飼い主に向ける愛情がストレートに伝わりますが、長時間ひとりにしておくと、ストレスがたまっていたずらに走ることもあります。
○主な短毛種の基本性格
・利発なアビシニアン
イギリスで誕生。古代エジプトの猫と外見が似ているため、子孫だといわれている。ひとなつこく頭がいい
・穏やかなスコティッシュ・フォールド
1951年、イギリス・スコットランドで偶然生まれた耳の折れた猫から繁殖がはじまる。丸顔で、ひとなつこく、穏やかな性格
・従順なロシアン・ブルー
ロシア生まれでイギリス育ち。活発だが、穏やかで、飼い主に対して愛情深く従順
・独立心旺盛なアメリカン・ショートヘア
船の上でネズミとりの仕事をしていた。首が太く、がっちりした体型。ひとなつこいが、独立心も旺盛で、活発
A:犬は純血種が主流ですが、猫の主流はなんといっても、“純雑種”です。雑種は性格も千差万別なら、体の模様も実に様々ですね。何代も前からの遺伝子が混ざりあって、同じものはないというほど多種多様な被毛の色や模様が出てきます。飼い主なら体の模様を一瞬見ただけで「うちの猫だ」とわかってしまうほどです。
ところで、猫の古典的な模様は、祖先であるリビア猫に見られる「タビー」と呼ばれる縞模様です。なかでもクラシックなタイプは、両腹のあたりが大きな渦を巻いたような模様で、シッポにも輪状の縞が入っています。このタビー模様は、草むらなどで白分の身をカムフラージュするのに、とても役立つといわれています。
A:白、黒、茶の三色の毛色を持っている猫を三毛ネコといいます。三毛ネコはほとんどがメスしかいません。これは遺伝子との関係によります。遺伝子は細胞のなかにある染色体の上にのっていて、猫は38本の染色体を持っています。性別を決めるのはそのなかの2本で、性染色体と呼ばれます。メスはXXという同じ形の、オスはXYという異なる形の染色体を持っています。
毛色を決定する黒や茶といった有色の遺伝子はこの性染色体Xの上にのっています。Yの上にはありません。三毛ネコのように黒と茶の2色の毛色を持つ猫は、性染色体がX(=黒)とX(=茶)の組み合わせになり、必然的にメスになるのです。
ところが実際には、まれに三毛ネコのオスが生まれることがあり、たいへん貴重がられています。遺伝子にかかわる何らかの変化が原因と考えられますが、何しろ研究対象の三毛のオスがごくわずかなので、いまだはっきりとした理由はわかっていません。
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