ネコに関する疑問に答えます
〈6〉ネコの心理と表情
A:立てたり、股に巻き込んだり、パタパタ振ったり、体に巻いたり、猫の尻尾は自由自在に動きます。尻尾には尾椎という骨が並んでおり、長い尻尾の猫では18個あります。それぞれの尾椎は間隔が広いため、ギクシャクせず、しなやかに曲がります。尾骨の周囲には、前後左右に動かすための4本の筋肉と、微妙な動き方をするための8本の筋肉があり、猫はこれらの筋肉をつかって尻尾を自在に動かしています。
しなやかに揺れ動く猫の尻尾は、体のバランスをとるための舵取りの役目を果たしています。ジャンプしたり着地するときに、長い尻尾をうまくつかってバランスをとっているのです。
猫の尻尾の形は、長いものだけでなく、短いものやカギ型にまがったものなど、いろいろあります。猫も家畜化されてからは、狩りをする必要がなくなり、バランス感覚もそれほど必要ではないのかもしれません。尻尾が長くなくてもほとんど問題なくなってきたのでしょう。
Q:ネコが不機嫌なときシッポを左右に振りますが、シッポの動きで気持ちを表しているのですか?
A:言葉こそ話さないものの、猫は尻尾の動きで、言葉と同じくらい明確にそのときの気持ちをあらわしています。
尻尾をピンと立てて飼い主の足元に近寄ってくるときは甘えモードです。なでたり遊んだりして、相手をしてもらいたがっています。「お腹がすいた〜」などと、何かを催促するために甘えている場合もあります。逆に、甘えモードでないのに人になでまわされると、猫としてもあまり気分がよくないものです。なでたりかまったりしているときに、尻尾を左右にパタパタ振っているときは、猫が不機嫌モードに入っている証拠ですから、そっとしておいてやったほうがいいかもしれません。
また、眠っているときなどに名前を呼ぶと、尻尾をパタパタと小さく動かすこともあります。これは猫の返事です。呼ばれたけど起きるのも面倒なので、「ちゃんと聞こえてますよ」と尻尾で答えているのです。
ところで、他の猫や犬などに出会ったとき、強気でいるのか弱気でいるのかも、尻尾を見れば一目瞭然です。いきなり出会って、まずはびっくりすると、尻尾が急に大きくふくらみます。尻尾だけでなく、全身の毛が逆立つのは、自分を大きく見せて、自分の立場を有利にしようとするから。さらに尻尾が逆U字型になれば、これはもう強気そのものです。「やってやろうじゃないか」と、攻撃的な気分になっています。
反対に、ボス猫や犬などに出くわし、「怖い」と脅えたときは、さっさと尻尾を股にはさんでしまいます。体もうずくまって小さくなり、「私は弱いんだから、攻撃しないで」と相手にアピールするのです。
A:戸外から「ニャオーン」と、鋭くカン高い猫の声が聞こえてくると、「やっと春になってきたなあ」と感慨深くなる反面、いくら猫好きでも正直、ちょっとうるさいと感じますね。恋人を求める猫の鳴き声は、春の風物詩としてよく知られていますが、普段の生活でも、猫は鳴き声でいろいろなことを語っています。短く「ニャッ」と鳴くのは、「やあ」という猫のあいさつ言葉。もう少し長く強く鳴くときは、「早くご飯にしてー」「ドア開けてー」などと要求していることが多いようです。
強い猫や犬などに恐怖を感じたり、威嚇しようとするときは、「ギャー」という鋭くカン高い声、あるいは喉の奥から出るような「シュー」という声を出します。猫の鳴き声には、どんなものにもそのときの気分や感情が表現されているのです。
しかし、猫は鳴き声で多くを語るといっても、表現方法には限りがあります。そのため、同じような鳴き声でも、そのとき猫が置かれた状況によって、伝えたい気持ちが違っていることもあります。
たとえば、喉をゴロゴロ鳴らして「ニャー」という場合、リラックスしているときもあれば、甘えモードに入っていて、あなたの注意を引きたいと思っているときもあります。鳴き声に加えて、そのときに置かれた猫の状況や、顔の表情など他のシグナルも考えあわせながら、猫が今どのような気持ちなのか、あなたがよく汲みとってあげることが大切でしょう。
A:猫の顔にはあまり表情がなく、よそよそしいと感じている人も多いようですが、猫を飼っている人なら、その表情の豊かさをよく知っているはずです。リラックスしているとき、怒っているとき、おびえているとき、猫はさまざまな表情を見せてくれます。
顔の表情は、もともと仲間同士で気持ちを伝えあうコミュニケーション手段です。社会生活を営み、仲間とやりとりをするからこそ、表情が生まれてきます。猫はもともと単独生活で、テリトリー(縄張り)は個々に違っていますが、時と場合に応じて社会を形成します。ちなみに顔に表情を持つのは、人間以外では、サル類と犬科、そして猫科くらいのものだといわれています。
猫の表情をつくる重要な小道具は目と耳です。なかでも耳を器用に動かすのは、犬にはあまり見られない手法です。
猫の表情をおおざっぱに整理すると、「自信あるぞ」という強気な表情と、「できたら逃げよう」という弱気な表情に分けられます。強気でいるときの猫は、耳がきちんと前を向き、瞳孔が細くなって目が鋭く光っています。ところが相手におびえて弱気になっていると、目の瞳孔が開き、耳が後ろにたおれます。おびえすぎると相手を威嚇するようになり、瞳孔が大きく開き、耳のたおれ方も極端になっていきます。
以上はあくまで基本的な表情で、猫はもっとバラエティに富んだ顔つきをする動物です。片方の耳が前を向き、もう片方はたおれているなど、猫の複雑な心境を物語る表情をしていることもよくあります。
A:しなやかに動く猫の体は、気持ちをあらわすのにうってつけといえます。そのときの気持ちと連動して、やわらかな体がさまざまに動きます。
仲間ではない猫などに出会ったとき、こちらが優位な立場にいて「なんなら攻撃してやろうか」という気分でいると、まっすぐ相手を見つめ、腰を高めにあげます。しっかりと地面に立った威風堂々たる姿勢を見せて、相手を圧倒しようというわけです。「こりゃ、かないそうもないこわい相手だ」と脅え、身を守ろうとするときは、どうしても腰が引けて位置が低くなります。脅えがひどくなるにつれ、前半身も低くして、最後はほとんどうずくまってしまいます。そうやって、自分が相手よりも劣位にいることを示し、相手が攻撃をやめて立ち去ったら、すぐに逃げ出そうとしているのです。
脅えたときの猫はたいてい、顔だけ相手に向けて、体を横向きにします。横向きになると、錯覚で体が大きく見えるからです。内心は怖いのに、「自分は大きくて強いんだから、攻撃するな」と強がっています。
猫の気持ちは、強気か弱気かだけに分けられるような単純なものではありません。強気に見えても、多少なりと恐怖心を感じているものです。たいていは、攻撃心と恐怖心がないまぜになっているといえます。そのため、攻撃と逃走の気分が五分五分くらいになると、どちらともいえない奇妙な動きになってしまいます。たとえば前半身は身を守ろうと低めの姿勢になり、後半身は攻撃しようと高めの位置を守ったりすることもあるわけです。前足は恐怖にすくんで動けないのに、後ろ足は攻撃しようとして動くので、カニのような横歩き状態になってしまうのです。
A:飼い主の命令をよくきき、多くの芸ができる犬は知能が高く、人間のいうことなどきかず、芸もほとんどしない猫は知能が低いと考える人もいます。しかし芸をするかしないかという違いは、群れで暮らす犬はリーダーに従おうとし、単独生活の猫は自分の意思だけで行動するという、動物それぞれの習性によるもので、知能の高低とは無関係です。実際猫は、人間の行動をよく見ていて、その行動を真似て人間をびっくりさせることがあります。ドアのノブをまわして開ける、電気缶切りのスイッチをおす、テレビのリモコンを押してスイッチを入れる……。猫には、毎日の観察を通して、行動とその結果を学習する能力があるのです。
猫の脳も人間の脳も、構造的にはほとんど同じです。違う点をあげるとすれば、人間の脳は大脳新皮質がずば抜けて発達していることです。そのために人間は、創造する力や言語を使ってのコミュニケーション能力が非常に高いのです。
人間を例外とすれば、犬も猫も他の哺乳類も、大脳新皮質の発達の程度にそれほどの差はありません。猫や犬は、頭で考えるというより、視覚や匂いや口でものを認識しています。これは人間でいうと1歳半程度のレベルなので、おとなの猫や犬はヒトの1歳半くらいの知能レベルといえるでしょう。
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