ネコに関する疑問に答えます
〈5〉ネコのからだと感覚
A:人間の100万倍はあるといわれる犬の嗅覚には劣るものの、猫の嗅覚も人間の数万〜数十万倍はあるといわれます。 猫はこの優れた嗅覚をつかって、いろいろなものを判断しています。もちろん食事は嗅覚が頼りです。食べ物かどうかを匂いで判断しているため、鼻の病気などで匂いをかぎ分けられなくなると、いくら餌の皿を鼻先につきだしても、食べ物とわからずに口をつけません。そのため鼻が利かなくなることは、猫には命にかかわる一大事なのです。
飼い主や他の猫も匂いで判断しています。猫は、飼い主や身のまわりのものに、いつも体をスリスリこすりつけて、自分の匂いをつけています。人間にはかぎ分けることができませんが、この自分の匂いをかげば、猫はとても安心します。他の猫に出会ったときも、お互いにスリスリ。これも自分の匂いをつけて、仲間と認めるためです。次に会ったときに匂いをかいで、自分の匂いがすれば友だちだとわかるのです。
A:「うちの猫が笑ってるっ!」と思ったことはありませんか?猫はときに、唇を引いて口を半開きにした“笑顔”を見せることがあります。これは「フレーメン反応」と呼ばれるもので、メスが分泌する性フェロモンをかいで、恍惚状態になってるのです。猫の鼻にはヤコブソン器官と呼ばれる、人間ではほとんど機能しないといわれる嗅覚組織があります。これは性フェロモンや、マタタビなどのドラッグ系の匂いをかぐためのものです。ヤコブソン器官を十分に働かせて、魅惑的な性フェロモンを思いきりかごうとすると、ついこんな“笑顔”になってしまうのです。
A:猫の目は、暗がりではできるだけたくさんの光を取り入れるために瞳孔が広がり、明るいところでは、光が入り過ぎないように瞳孔が細くなるようにできています。また、縦に細くなるのは草の間から獲物を見るためだといわれています。
このように、猫の夜目が利くのは、わずかな光をできるだけとりいれようと、瞳孔をめいっぱい開くことも関係していますが、瞳孔が開くのは、暗いときだけとはかぎりません。びっくりしたりこわいと思うと、それをよく見ようとして、明るいところでも瞳孔がまんまるに開きます。反対に「攻撃してやるぞ」と強気な姿勢のときは、瞳孔が細くなります。猫の瞳孔の大きさは、猫の気持ちのあらわれでもあるのです。
A:暗視カメラのような猫の視力を生みだしているのは、目の網膜の下にあるタペータムという組織です。網膜はカメラでいうフィルムにあたり、瞳孔から入ってきた光が網膜に焦点を結んで、像をうつしだします。この網膜の下にあるタペータムは、反射板のような役割をしていて、一度網膜を通り過ぎた光を、もう一度網膜に送りかえします。わずかな光を反射板によって二度利用できるので、猫は暗くてもよく見えるわけです。暗闇で猫の目がピカッと光るのも、何かの光がタペータムで反射されるからです。
A:猫の大きな目は何でも見通せそうな気がしますが、残念ながら視力の点では人間より劣ります。動かないものだと、よく見えるのはせいぜい10〜20m先くらいまです。道で自分の飼い猫に会って知らん顔をされることがよくありますが、猫からしてみれば飼い主を無視したわけではなく、見えなかっただけなのかもしれません。
そんなに目が悪くて、よく外を歩きまわれるものだと思いますが、視力がよくないぶんは聴覚や嗅覚でおぎなっています。ただし、近くのものに関しては、まず目で確認しようとします。近くで物音がするとそちらに顔を向けるのは、目で見ようとする証拠といえます。
さらに、20m以上離れたところにあるものになると、猫はぼんやりとしか形がわかりません。しかし、動くものには非常に敏感で、50m先のものでも動きさえすれば暗くても反応します。獲物や敵である可能性があれば、より早く追ったり、逃げたりするにこしたことはないのです。
A:かつて猫や犬は、色を識別できないといわれていましたが、最近では、赤と緑はうっすらとですが区別できることがわかってきました。とはいえ、人間のようなフルカラーということはなく、限りなくモノトーンに近い世界にいるようです。色を区別しにくいのは目の構造によります。網膜の下には、光を感じる細胞(桿状体)と、色を感じる細胞(錐状体)がありますが、猫や犬では、光をできるだけ感じるように桿状体の数が多く、そのぶん色を感じる錐状体が少ないのです。
A:猫は視力は人間の10分の1くらいしかなく、10〜20m以内のものしかしっかりとは判別できません。そのかわり猫の目は、視野の範囲内で動くものに対しては敏感にキャッチできる構造になっています。
正面を向いて、左右どの範囲まで見えるかを全体視野といいますが、人間の場合は210度くらいなのに比べ、猫では280度もあり、斜め後方にいる獲物もしっかり見えます。また、猫のような肉食動物の目は顔の前面についているので、左右の視野が重なる部分の角度(両眼視野)が広く、ものを立体的に見る力、つまりは距離感をつかむ能力がたいへん優れています。こうした猫の目の構造により、たとえ50m先でも、動いているものがあれば、きちんと捉えることができるのです。
A:猫は目が印象的なことから、視覚にだけ頼って生活しているように思われがちですが、実は猫の五感で一番優れているのは聴覚です。周波数が500ヘルツくらいの低い音なら、人間も猫も犬も聞きとり能力にそれほど差はありませんが、高音を聞き分ける能力は人間の比ではありません。猫の耳は、獲物であるネズミなどが出す高音(超音波)をとらえやすいようにセットされているのです。人間が聞こえる範囲は一般的に2万ヘルツ以内なのに対し、猫の場合は6万ヘルツまで聞き分けられます。これは犬の聴力の約1.5倍です。この鋭い聴覚で、20m先にいるネズミの足音までわかるといわれます。人間には何も聞こえないのに、いちはやく家人の帰宅する足音を聞きつけ、猫が玄関の前に出迎えることがよくあります。人間はびっくりするかもしれませんが、こんなことは猫にとってお手のものなのです。
また、人間にはちょっとまねできない猫の特技が、両耳を別々に動かせることです。音が聞こえると、その方向の耳だけをピピッと動かして周囲を探査し、音源をさがします。この音源さがしも、猫の得意中の得意です。人間でも犬でも、両耳に入ってくる音の時問的な差や強さの差を利用して音源をつきとめていますが、どんなに耳がよくても多少の誤差が出ます。人間の場合は音源と4.2度ほどずれが出るのですが、猫の場合はわずか0.5度。今聞こえる音が、どこから出ているのか、猫は正確にとらえることができるのです。猫はこの鋭い聴覚で、獲物の動く音や獲物同士の交信のための超音波を聞き分け、目には見えないその存在をみごとにキャッチしています。
A:猫の耳は周波数の高い音に敏感です。ある研究によると、第4オクターブの「ミ」の音を聞くと、猫は性的にとても興奮するともいわれています。猫の求愛の鳴き声は、この「ミ」の音なのかもしれませんね。同じように人間の声に対しても、猫は男性の低い声より女性の高い声によく反応します。女性のやわらかい高い声は、母猫の鳴き声を思わせるともいわれています。そのためか、男性の歌には無反応なのに、ソプラノ歌手の歌はじっと聴き入る猫もいます。あなたの猫がどんな音楽に興味を示すか、試してみると面白いかもしれません。
A:猫は匂いで食べ物を判断していますが、おいしそうな匂いがすれば何でもいいというものではなさそうです。猫の舌にも、人間と同じように味蕾という味を感じる細胞があります。この味蕾で、苦さ、すっぱさ、塩辛さ、甘さを感じています。
猫は特にすっぱさを敏感に感じ、塩辛さはあまり感じないといわれています。甘さは、肉の甘味を感じる程度のものだろうと考えられています。しかし最近は人間の食べ物を口にする機会が多くなったせいか、砂糖の甘さに敏感な猫も増えているようです。
猫にも味覚はあるとはいえ、味蕾があるのは舌の周囲にかぎられ、中央のザラザラした部分にはほとんどありません。本来肉食の猫にとって味覚は、おいしい肉か、まずい肉か、くさった肉かを見分けるのが第一目的で、それ以外のさまざまな味を区別する必要はないのでしょう。
A:ちゃんと飲み水を用意してあるのに、それを避けて池の水を飲んだり、風呂場の洗い桶にたまった水を飲むということが、猫にはよくあるものです。猫の舌は苦さやすっぱさなどの味覚だけでなく、水の味を感じることができるといわれています。猫にとって、水道水はカルキ臭のするまずい水という評価なのかもしれません。それよりも、カルキ臭のない池の水や汲み置きの水のほうが美味というわけなのでしょう。汲み置きしておけばカルキ臭がなくなるからといっても、古くなって細菌が繁殖したような水は、もちろん断固拒否します。猫は常に新鮮でおいしい水を求めているのです。
A:猫に欠かせない特徴のひとつは、左右に生えている長いヒゲです。触ってみると、全身をおおう猫っ毛と違い、とても固くてしっかりとしています。猫や犬のヒゲは人間のヒゲとは異なり、「触毛」と呼ばれるとても敏感な毛。顔まわりだけでなく、全身にも、1〜4平方センチメートルに1本くらいの割合で生えています。猫や犬では、ふつうの毛の毛根部にも神経は通っているので、毛に何かあたれば感じとれます。しかし、なかでも触毛の根元には特別たくさんの神経細胞が集まっているので、ほんのわずかな刺激でも、非常に敏感に感じとることができます。
猫の場合、この敏感なヒゲをひとつには障害物との距離をチェックするために利用しています。狩りのときに物音をたてずに獲物にしのびよるためには、周囲の障害物との距離をきちんとつかんでおかなくてはなりません。また狭いところを通ろうとするとき、自分が通り抜けられる大きさかどうかを判断するためにも、左右に伸びたヒゲが使われています。
一方、猫のヒゲは、そのときの気分もよくあらわしています。猫じゃらしなどで遊んでいるとき、猫のヒゲは前を向いているはずです。これは遊びに熱中している証拠。興奮したり緊張したり、あるいは不安な気持ちがあると、人間でも口周囲の筋肉が緊張して、自然に唇がすぼみます。猫の場合唇をすぼめると、ヒゲが前に向いてあがります。
リラックスしているときはヒゲは下向きになります。全身の筋肉がゆるみ、唇もゆるむので、ヒゲは頬にそって下向きになるというわけです。一方で、体調がわるいときも、筋肉のはりがなくなってヒゲが垂れ下がるので要注意です。
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