■モーツァルト作品解説■    [HOME]   [年代別目次]

教会ソナタ(全17曲)

総説

 モーツァルトの教会ソナタは全部で17曲を数える。以前はさらにこれに2つの断片(K124AとKAnhC16・01)がモーツァルトの作と考えられていたが、プラートやレームの研究によって、この断片はモーツァルトのものでないという見方が一般的になっている。
 モーツァルトがマルティーニ師へ宛てた手紙にザルツブルクの教会音楽について述べたものがあるが、そこでは(1)本来のミサ構成部分のほかに「ソナタ・アレピストラ−書簡朗読の前に演奏される17、8世紀の器楽曲」が含まれること、(2)荘厳なミサが行われるときには、全体で45分以上続いてはならないこと、(3)あらゆる楽器、たとえば軍隊用トランペット、ティンパニ等を伴うミサ曲であること等が特徴としてあげられる。こうしたことから、モーツァルトの「教会ソナタ」が「ソナタ・アレピストラ」であることはまちがいないが、モーツァルト自身は「教会ソナタ」、「ソナタ・アレピストラ」の名称は使わずに、「ソナタ」と10曲に示しているだけである。
 18世紀の初めにフォン・フィルミアン大司教によって大聖堂両翼の合唱隊は交誦的に歌うことを禁じられたが、その代りに、モーツァルトの教会ソナタのような器楽曲が多く生み出されたのは想像に難くない。とはいえ、モーツァルト以外にこの種の作品はほとんどなく(ミヒャエル・ハイドンにある可能性も皆無ではない)、ザルツブルクの教会音楽のなかでの位置づけということになれば、今後の資料研究に期待が寄せられる。
作曲の経過 1766年末か1767年初めに最初期の3曲が作曲され、第4番、5番は1772年、第6番は1775年、第7番から12番までは1776年、第13、14番は1777年、第15、16番は1779年、第17番は1780年と、最初期の3曲を除いては、1770−80年のほぼ10年間に集中して書かれている。
初演 はっきりとした資料があるわけではないが、こうした機会音楽の性格上、作曲されてから比較的すぐに演奏されたと考えるのが妥当だろう。
基本資料の所在 自筆譜は個人所有のものもあるが、ベルリン国立図書館、レニングラード公立図書館等に分散されている。筆写譜はベルリン国立図書館、ウィーンの楽友協会に残されている。
出版 〔初版〕第17番K336(336d)のみ1780年にオッフエンバッハのアンドレ社より「オルガン、またはピアノのためのソナタ」として出版された。〔全集〕新モーツァルト全集第6篇、第16作品群。
演奏時間 第1番より順に。(1)13分29秒(2)4分6秒(3)3分58秒(4)4分48秒(5)約5分半(6)4分38秒(7)6分23秒(8)6分8秒(9)3分58秒(10)5分19秒(11)5分33秒(12)5分17秒(13)5分4秒(14)3分56秒(15)7分(16)4分30秒(17)4分43秒。(5)を除いてフィリップス(X-7577-8)による。
楽器編成 第12、14、15番を除いてヴァイオリン1、2、バス、オルガン。
ただし、第4、第5番ではバスまたはオルガンとなっている。第12番はこれに2つのトランペットが加わり、第14番では2つのトランペット、2つのオーボエ、ティンパニ、また弦にさらにチェロが加わる。第15番では第14番の編成の上にさらに2つのホルンが加わる。

 まず全体的な特徴からあげると、すべて1楽章制であり、第1番(アンダンテ)と第5番(表記なし)を除いてアレグロのソナタ楽章である。また全体は4つのグループにわけられる((1)第1番−第5番(2)第6番−第11番(3)第12番−第14番(4)第15番−第17番)。(1)のグループでは第1番はアンダンテ楽章で反復記号をもたない。しかし、これ以後はアレグロ楽章となり、ソナタ形式の展開部でもいろいろな工夫がみられる。短調が効果をあげる第4番、トレモロが印象的な第5番などが、そのよい例である。また、この時期の主題には交響曲との関連も認められる。また、第4、5番は数字付の低音をもっている。(2)のグループでは経過部分が独立したこと、展開部分が充実したこと等が形式的特徴としてあげられるが、さらにオルガンの役割が増したことも大きな特徴である。第10、11番ではオルガンのパートが完全に書かれるようにもなる。(3)と(4)のグループでは第22番を除いて、すべてハ長調で書かれている。(3)と(4)との間にはマンハイム・パリ旅行というモーツァルトの音楽上の大きな体験がはさまるが、このジャンルに関する限り、様式の転換はそれほど顕著でない。(3)のグループでは楽器編成の充実した第14番がシンフォニックな効果をあげるばかりでなく、主題間の対照、大ぎくなった展開部、冒頭主題の素材を使用したコーダ等、形式の面でもきわだっている。(4)のグループでは第16、17番はふたたび小さな楽器編成にもどっているが、第17番には特筆すべき新しい面がある。オルガン協奏曲のよう次様式で書かれていることである。形式も主題も、ピアノ協奏曲ときわめて近い関係をもつことは、K365(316a)の「2台のピアノのための協奏曲」のロンドにおけるピアノの主題とよく似ていることからも明らかである。