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フルート四重奏曲 ハ長調

KAnh171(285b)

 このハ長調の四重奏曲も、ト長調の作品に劣らぬほど多くの問題をはらんでいる。ド・ジャンのための3つのフルート四重奏曲の1つであるとするのが通説であるとはいえ、これを裏づける論拠は、資料のうえからは見当らないのである。この作品の成り立ちを知る手がかりとしては、まず、第2楽章の変奏曲が「13管楽器のセレナーデ」K361(1784年)の第6楽章とほぼ同一のものであることがあげられよう。ケッヒェルの初版においてはこのセレナーデのほうがオリジナル作品とされ、四重奏曲には編曲としてAnhV171の番号が与えられた。しかし両者を比較すると、セレナーデ稿にいっそうの円熟がみとめられる。そこでアインシュタイン以降は四重奏曲をオリジナルとみるようになり、これがK285bとして、「ド・ジャン四重奏曲」の1つに位置づけられたのである。だがそうみた場合、2つの作品の関係があまりにも遠くなってしまううえ、第1楽章の自筆のスケッチ10小節分が、1782年の「後宮からの誘拐」K384のスケッチと同じ用紙に書かれているという事実の説明がむずかしくなる。したがって今日では、モーツァルトが未完のまま放置したトルソを他者が補筆と編曲によって完成したとするR・リーヴィスの主張をふまえて、第2楽章はセレナーデ稿の他者による編曲であるとする見方が優勢になった。少なくとも、第1楽章の晴れやかな明るさには、「後宮」および「ハフナー交響曲」の時代の作とみるにふさわしいものがあるといえよう。
作曲の時期 通説によれば、1777年12月25日から1778年2月4日までの間(K285a参照)。新説をとれば第1楽章は1781−82年、第2楽章の編曲と両曲の結合は、1784年から88年の間。
基本資料の所在 ベルリン国立図書館(第1楽章 第149−158小節の自筆のスケッチ)。
出版 〔初版〕シュパイヤー、H・P・ボスラー社、1788年。〔全集〕新モーツァルト全集第8篇、第20作品群、第2巻。
演奏時間  約15分半(ベネット独奏のフィリップス盤による)。
楽器編成  フルート、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ。

第1楽章 アレグロ ハ長調 4分の3拍子。ソナタ形式。
第2楽章 アンダンティーノ ハ長調 4分の2拍子。主題と6つの変奏。