■モーツァルト作品解説■    [HOME]   [年代別目次]

モテト「アヴェ・ヴェルム・コルプス」

K618

 死に半年先立つ1791年夏、当時バーデンで療養中の妻コンスタンツェを、何くれとなく世話してくれた合唱指揮者のアントン・シュトル(1748-1805)のために書かれたもの。このシュトルとモーツァルトが親密な関係にあったことは、1791年7月12日付のモーツァルトの書簡からもうかがわれる。法王インノケンティウス4世(在位1352−62年)の作ともいわれるラテン語のテクストは14世紀以降の諸聖歌本にみられ、聖変化のための歌としてフランス、ドイツ、イタリアの各国で愛唱されている。
作曲の時期 1791年6月17日(自作品目録では6月18日)、バーデン。
基本資料の所在 〔自筆譜〕ウィーン国立図書館。〔全集〕新モーツァルト全集第1篇、第3巻。
演奏時間 4分弱。
編成 4歌唱声部。ヴァイオリン2部、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、オルガン。

 ニ長調 アダージョソット・ヴォーチェ。弦楽4部とオルガンの伴奏による4部合唱曲。全曲わずか46小節の小品ながら、短くさりげない前奏から静かに歌い出されるその響きは澄み切って、じつに美しい。声のコロラトゥーラも、楽器の協奏的な走句もいっさい排した規則的な4分音符の歩み、中音域のみに限られた穏やかな音調、そして転調と半音階の細やかな陰影などに、モーツァルト最晩年の様式特徴がよく映し出されている。伝統の制約とか注文主の好みなどに煩わされることなく、のびのびと心の奥底の宗教感情を吐露した結果、作曲者はここで、質朴なたたずまいによって敬神の念を高めるという、ア・カペラ様式本来の理想の境地に達したのだといえよう。
〔歌詞大意〕めでたし、まことの御体、十字架上に犠牲となられ、われらのために血を流し給う。