■モーツァルト作品解説■    [HOME]   [年代別目次]

4つのドイツ舞曲

K602

 総計13曲の、K611を除くドイツ舞曲は、現存する筆写譜にはいずれもケッヒェル番号の順序通りまとめて書かれているところから、これらの舞曲は同一の機会のために作曲されたのであろうと推定されている。作曲の日付こそ違え、すべて1791年、舞踏会の季節である2月ころ生まれている。当時こうした庶民的な舞曲に標題的な性格をもたせたり、流行歌を引用したりすることがよく行われていたが、これらドイツ舞曲にも標題付舞曲がみられる。まずK600の第5番は「カナリア」という題がつけられたトリオを含み、そこではあの愛らしい鳥のさえずりがそのまま聞こえてくる。またK602の第3番のトリオではライエル(手まわしオルガン)の響きと旋律が当時街の辻々で演奏していたであろうライエルひきを彷彿させる。それからK605の第3番のトリオ「橇(そり)すべり」では、鈴やポスト・ホルンが楽しく響き、ウィーンの城郭外の森や野で行われていた橇遊びのさまが想像されるのである。
 ところでK611「ライエルひき」はK602の第3番とまったく同一のものである。モーツァルトは自作品目録にK602を601と一緒にして第127番として記載し、その中からこの曲だけを別に取り出して第222番の2「ライエルひき−ライエルひきのトリオを含むドイツ舞曲」と書き入れている。
 なおK605は現存する筆写譜には3曲含まれているのであるが、モーツァルトの自作品目録には2曲だけで、第3番は記入されていない。
作曲年代 K600−1791年1月29日。K602−12月5日。K605−2月12日。K611−3月6日(とされている)。いずれもウィーンにて。
基本資料の所在 自筆譜、不明。筆写譜はウィーン楽友協会、ベルリン国立図書館(プロイセン文化財)。
演奏時間 K600−約13分。K602−約8分。K605−約7分。K611−2分。
楽器編成 フルート(ピッコロ)2、オーボエ(クラリネット)2、ファゴット2、ホルン2、トランペット2、ティンパニ、ヴァイオリン2部、チェロ、コントラバス。その他、K602およびK611にライエル、K605にポスト・ホルン、鈴5が加わる。

 全曲とも3拍子で、主として16小節の主舞曲と16小節のトリオ、ダ・カーポという形式をとっている。調の移動、モティーフの連関など全体の統一への配慮が随所にしのばれる。
第1曲 変ロ長調 4分の3拍子。上行する華々しい開始舞曲。
第2曲 へ長調 4分の3拍子。ヴァイオリンの鋭い前打音装飾が特徴。
第3曲 ハ長調 4分の3拍子。分散和音のかたい動き、管による3度、6度の平行進行、愛らしい前打音音形のやりとり、こういったものが何か野外での楽しい集まりを思わせる。
第4曲 イ長調 4分の3拍子。流麗な主題で始まる。
 第1曲から第3曲までは属調関係で進んでくるが、第4曲はメディアンテをとる。