■モーツァルト作品解説■    [HOME]   [年代別目次]

歌曲「春への憧れ」

K596

作曲年代 1791年1月14日、ウィーン。
演奏時間 約3分。

 モーツァルトの最後の年にも、歌曲の傑作が生まれた。今日では半ばドイツ民謡と化している「春への憧れ」である。作曲の動機は不明だが、1月14日には、K597、598とともに「3つのドイツ歌曲」が作曲された。いずれの詩も、カンペが編纂した「子供のための小叢書」第2版(1782年)に含まれていたものである。
 「春への憧れ」の作詞者はオーヴァーベック(1755-1821)で、本来のタイトルは「5月のフリッツ君」であったが、カンペの版ですでに「春への憧れ」となっている。
 曲はへ長調、8分の6拍子で、発想記号として「楽しげに」とある。冒頭の主題は、まぎれもなくその直前の1月5日に作曲されたピアノ協奏曲K595の第3楽章と一致する。原詩は10節あるが、モーツァルトは2節ずつまとめて5節の有節歌曲とし、各節は典型的な二部形式となっている。旋律はきわめて簡素で洗練され、最も澄みきった音調をきかせてくれる。
〔歌詞大意〕おいで、5月よ、樹々をふたたび緑にしておくれ。ぼくのためにすみれを咲かせておくれ。ぼくはすみれを見たいのだ。ああ、5月、早く散歩にいきたい。冬の日だって楽しいことはある。雪遊びに力ード遊び、そして櫨のりがある。でも小鳥たちが歌い、ぼくも芝草の上で楽しく遊べるたら、それは別なこと。でも今は庭はぬかるみ、出ていくことはできない。かわいそうなロッテは思いに沈んでいる。そうでなければぼくは彼女を遊びに誘うのに。ああ、外が暖かくなるとよい。ぼくたち子供はそれを待っている。カッコウも一緒に来ておくれ。