■モーツァルト作品解説■    [HOME]   [年代別目次]

アダージョとフーガ ハ短調

K546

 この曲は、自作品目録に、「以前に2台のクラヴィーアのために書いたフーガへの、ヴァイオリン2、ヴィオラ、低音弦のための短いアダージョ」とあるように1783年12月29日に書かれた「2台のクラヴィーアのためのフーガ」K426を弦楽合奏用に編曲し、新たに52小節からなるアダージョの序奏を書き加えた作品である。モーツァルトの対位法技法による作品のなかで、とくに力強く男性的な厳しさとエネルギッシュな力をもち、形式・内容においても優れたものである。
 どのような事情でこの曲が書かれたかは不明であるが、1788年6月26日にウィーンで、「フーガ」の編曲と、「アダージョ」の作曲がなされた。この日には、三大交響曲の1つ、「変ホ長調」K543も完成されている。
基本資料の所在 自筆楽譜は、フーガのみロンドン大英博物館、筆写譜はベルリン国立図書館所蔵。
出版 〔初版〕1778年にウィーンのホフマイスターより出版番号159番として出版された。〔全集〕旧モーツァルト全集第14篇、第27番。
演奏時間 約9分。
楽器編成 ヴァイオリン2、ヴィオラ、チェロ、バス。フーガの終り110−115小節ではチェロとコントラバスのパートが書き分けられているため、弦楽オーケストラのために作曲されたことは確実だが、弦楽四重奏による演奏もよく行われる。

「アダージョ」はハ短調、4分の3拍子。付点音符と複付点音符の連続する荘重な感じの前奏である。アインシュタインは、フーガそのものと同様の重みと大きさをもつ前奏曲であると述べている。
「フーガ」はアレグロ、ハ短調、4分の4拍子。フーガの主題に関して、R・エルヴァースは、主題法はすべてバッハの息吹きを感じさせ、この主題はバッハの〈主要主題(テーマ・レギウム)〉に由来するものであると述べている。