■モーツァルト作品解説■    [HOME]   [年代別目次]

歌曲「夕べの想い」

K523

作曲年代 1787年6月24日、ウィーン。
演奏時間 5分。

 1787年6月24日には、モーツァルトの最も代表的な歌曲2曲が生まれた。「タベの想い」と「クローエに」であり、ともに1789年にアルターリア社から出版された。作詞者としてはカンペ(1746-1818)の名があがっているが、新全集では不明となっている。しかし、詩の出典は明らかで、1781年に出た「詩人手稿集」第1集に含まれている。人生の終末を歌ったきわめてメランコリックな内容の詩だが、この曲より2ヵ月半前に父の病気の報せを受けてしたためた書簡(4月4日、父への最後の書簡)に「死は、ぼくたちの生の真の最終目的でありますから、ぼくは、この人間の真実で最良の友と、数年来、非常に親しくなっています」とあり、このころのモーツァルトが死をめぐる想念にとりつかれていたことを物語っている。
 詩は6節からなるが、モーツァルトはそれを通作形式でまとめている。歌唱声部の穏やかで甘美な旋律に対して、伴奏部にはほとんどいつもたゆとう波のような分散和音形がみられ、深い哀愁の情が表現されている。最終節は第1節を想起させる音形に戻っている。旧全集ではアンダンテ、へ長調、4分の4拍子となっているが、新全集では初版にならい、2分の2拍子をとっている。
〔歌詞大意〕夕べがきた。太陽は沈み、月が銀光を放つ。そして人生の美しいときが過ぎ去っていく。友の涙が私たちの墓の上に注がれる。私は人生の旅を終え、やすらぎの国へ飛んでゆくが、あなた方が私の墓に涙を流すとき、あなた方を天国へ吹き送ってあげよう。私に涙を送り、やさしい眼差しをなげかけてくれれば、涙は私の王冠のなかの真珠となろう。