■モーツァルト作品解説■    [HOME]   [年代別目次]

歌曲「老婆」

K517

作曲年代 1787年5月18日、ウィーン。
演奏時間 約4分。

 1787年にモーツァルトは9曲の歌曲を作曲するが、その歌曲の年は「老婆」で特異な始まりをみせる。詩は、アナクレオン派の詩人ハーゲドルン(1708-1754)によるもので、モーツァルトは、1779年にウィーンで出版された「ドイツ・リート集」第2巻に含まれているシュテファン(1726-1797)の作曲を通してこの詩を知ったのではないかと考えられている。詩の内容は、古きよき時代をたたえ、現在を嘆く老婆の愚痴だが、モーツァルトはすでに古くさくなった通奏低音書法をとり、いっそうその気分を盛り上げている。さらに、「ほんの少し鼻にかけて」という歌唱法の指示があるが、それによっても滑稽味を出している。ホ短調、4分の2拍子、4節。
〔歌詞大意〕私の時代には正義や公平が行われ、品行方正な娘たちが花嫁になった。若者は裏切らず、娘たちは遅めに結婚して、母親たちの妬みをかきたてることはなかった。ああ、いい時代だった(第1節)。私の時代には夫婦仲はまだよかった。今は男たちは私たちに命令し、反対し、見張っている。国中こんなにも変ってしまい、夫婦の仲にも呪いがかかり、慧星(不吉な星)が私たちを脅かしている。ああ、いやな時代だ(第4節)。