■モーツァルト作品解説■    [HOME]   [年代別目次]

演奏会用アリア「娘よ、おまえと離れている間に」

K513

 モーツァルトのウィーン時代、親しく交際していた友人にゴットフリート・フォン・ジャカン(1763-1792)という人物がいた。彼は素人ながら、かなりの音楽的素養がありなかなか優れたバスの歌い手であった。この人やその妹のためにモーツァルトはいくつかの作品を書き残している。ここで取りあげられた題材は「ダリウス帝の敗退」というオペラのなかの1アリアである。同名のオペラはすでに1756年、パスクアーレ・カファーロ(1715-1789)なる作曲家がナポリで上演しているが、ここでのテクストはパイジェッロ(1777年)やトラエッタ(1778年)が作曲したサンタンジョーリ・モルビッリ公爵の手になるもので、その第2幕第9場、アレクサンダー大王との決戦で敗れたダリウス帝が、大王と父帝との板ばさみの愛に若しむ娘に語りかけるところである。
作曲年代 1787年3月。
基本資料の所在 自筆楽譜はベルリン国立図書館。
出版 旧モーツァルト全集第6篇、第36番。新モーツァルト全集第2篇、第7作品群、第4巻。
演奏時間 約5分。

 フルート、クラリネット、ファゴット、ホルンに弦の編成の管弦楽で、まずラルゲット、変ホ長調、4分の2拍子に始まる。19小節にもおよぶ前奏のあと、娘と別れることの父の心の苦しみを語る部分では、話しかけるようにゆっくりとした流れが中心であるが、「私は立ち去ろう、おまえは泣いているのか……」ではいったんアリオーソ風になり、「私はおまえに尋ねている」からアレグロ、2分の2拍子に転ずる。ここでテクストの冒頭にかえり、力強い調子で、娘を1人残して立ち去りがたい親の情を描き、ピウ・アレグロで終る。