■モーツァルト作品解説■    [HOME]   [年代別目次]

ピアノ協奏曲 第24番 ハ短調

K491

 この協奏曲は、「フィガロの結婚」K492の創作の間をぬって、1786年の予約音楽会のために作曲されたもので、特異な情調をもつことで知られている曲である。ここでモーツァルトは再び短調の世界へもどっている。これは、1785年2月11日の第1回予約演奏会で演奏された「ニ短調」K466に対応するもので、たった2曲の短調の協奏曲の1曲である。
 管弦楽は木管全部がそろった大規模な編成であり、とくに木管楽器の独立性という点では、内容的にももうそれ以上凌駕することのないモーツァルトの協奏曲創作活動の高みに達している。この点に関して、アインシュタインは次のように述べている。この「ハ短調協奏曲」も、べートーヴェンが感嘆し、自分の「ハ短調協奏曲」作品37の中で2、3の貢物を捧げているほどに、かなり〈べートーヴェン的〉である。この曲は対話的ではなく、シンフォニー的である。およそモーツァルトが協奏曲の中で使ったオーケストラ編成のうちの最も豊かなもの、つまりオーボエとクラリネットの両方を加えた編成を活動させていること、管楽器の独奏者たちをかつてなかったほど強く前面にだしていることなどは、この曲がシンフォニー的であることを示している。
 また、楽曲構成に関してみれば、減7度の跳躍音程を含む悲愴感に満ちた第1楽章の第1主題の部分動機が、さまざまな形で随所に用いられており、全体をまとめあげるのに役立っている。この減7度の跳躍音程は、第3楽章の主題にまでも影響をおよぼしており、これらがこの協奏曲の緊密な構成を作りだすものになっている。
 ところで、モーツァルトのもっとも重要な作品に属し、またもっとも緊密な構成への配慮がみとめられるこの「ハ短調協奏曲」においては、むしろ即興演奏を意図して構想された協奏曲の範晴に入ると、ヘルマン・ベックは主張している。すなわち、入念に仕上げられたピアノ・パートが示されている「イ長調協奏曲」K488とは対照的に、この「ハ短調協奏曲」のピアノ・パートの音形は、ときおり何回も書き直され、いくつもの稿が生じたり、ヴァリアンテが薄い筆跡でスケッチ風に付け加えられている。これらは、モーツァルトの協奏曲を技巧的に高められた演奏で響かせる、豊かな即興演奏技法のためのよりどころである。したがってこの協奏曲の独奏パートは、常に生成過程にあり、おそらくモーツァルト自身の演奏のもとで初めて決定的なものとなったと思われる。第1楽章のためのカデンツァも、また第2、第3楽章のためのアインガングも書きつけていないことも、このことを示していると考えられる。
作曲の時期 モーツァルトの自筆の「全自作品目録」の記載によれば、1786年3月24日にウィーンで完成されたことになっている。
初演 この協奏曲は、K482、488とともに、1786年の四旬節の予約音楽会のために作曲されたものである。O・E・ドイッチュは、1786年4月8日付のウィーン新聞の記事に基づき、K491の初演を1786年4月7日のウィーンのブルク劇場における予約音楽会においている。
基本資料の所在 自筆楽譜は、ロンドンの大英図書館が保管する王立音楽大学所有のもの(Ms.402)、筆写譜はベルリン国立図書館(Mus.Ms.15487,15487/1,15487/2)に総譜で、クロムイジェル城古文書館にパート譜で保存されている。
出版 〔初版〕オッフェンバッハのJ・アンドレ、1800年。〔全集〕旧モーツァルト全集第16篇、第24番。新モーツァルト全集第5篇、第15作品群、第7番。
演奏時間 30分。
楽器編成 独奏ピアノ、フルート、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン2、トランペット2、ティンパニ、弦5部。

第1楽章 アレグロ ハ短調 4分の3拍子。協奏風ソナタ形式。
第2楽章 ラルゲット 変ホ長調 2分の2拍子、ロンド形式。
第3楽章 アレグレット ハ短調 2分の2拍子。変奏曲形式。第2楽章でロンド形式を使用したため、第3楽章は変奏曲形式でまとめられている。