■モーツァルト作品解説■    [HOME]   [年代別目次]

幻想曲 ハ短調

K475

 幻想曲のジャンルが、バロック・前古典派の強い影響の後、完全にモーツァルト様式になった傑作である。バッハの「半音階的幻想曲」、べートーヴェンの「幻想曲」と並んで幻想曲の分野で最も独創的な作品といわれる。そして中でもこの曲は構築性において優れている。
 この曲は「ピアノのためのファンタジー」と題されて、独立した作品になっている。しかしモーツァルト自身によってK457のハ短調のソナタと組み合せて、その導入部として出版された。この楽譜は書籍印刷出版者のJ・Th・フォン・トラットナーの夫人で、モーツァルトの弟子であったテレーゼ(1758-1793)に献呈された。
 幻想曲とソナタを組み合せることに関して、適当でないと主張する人がいる。それでブライトコプフ・ウント・ヘルテル社では分けて印刷している。
 この曲はハ短調といわれているが、元来調号を持っていない。ケッヒェル目録では便宜上フラットが3つ付けられているが、即興性が強く絶えず転調し、臨時記号による記譜の方がよい。
作曲年代 1785年5月20日。
出版 ウィーン、アルタリア社、1785年。〔全集〕旧全集20(21)。

 全体は5部分からなっている。ハ短調の主和音で始まり、同和音で終止するのでハ短調といわれるが、無調号である。