■モーツァルト作品解説■    [HOME]   [年代別目次]

弦楽四重奏曲 第19番 ハ長調 「不協和音」

K465

 前作のわずか4日後の1月14日に完成された。自宅にハイドンを招いて催した試演会の前日である。モーツァルトの後期10曲のなかで、序奏をもつのはこの1曲だけであるが、この序奏が、冒頭から対斜や解決されない不協和音を響かせるという大胆な、というよりも理論的には間違った和声法に特徴づけられているところから、「不協和音(ディソナンツ)」あるいは「対斜(クヴェールシュタント)」四重奏曲と呼ばれている。この和声法は、ロマン派の時代にとっても謎であり、フェティス(1784-1871)、ウリビシェフ(1794-1858)といった19世紀の研究者は、耳を傷つける堅い響きを理論に則って改善しようとさえ試みている。こうした事実ほど、モーツァルトを「確信に満ちた楽天主義者」としかみなかった19世紀のモーツァルト理解の限界を示す事例はないであろう。アーベルトも指摘するように、調性感の確立すら危うい渾沌とした響きを通って、堅固な構成にロマン的な憧れを秘めたアレグロに到達するという過程は、古典的な調和にいたるまでのモーツァルトの内面の葛藤と努力の象徴的表現に他ならないのである。一連の四重奏曲を通じて和声表現の全領域を探究してきたモーツァルトは、ここで、調性概念自体を表出的な意図に従えているといえるだろう。
作曲年代 1785年1月14日、ウィーンにて(「自作品目録」への記入)。
基本資料の所在 自筆譜はロンドンの大英図書館所蔵。
出版 〔初版〕1785年、ウィーンのアルタリア社より「作品10の6」として。〔全集〕旧モーツァルト全集第14篇、第19番。新モーツァルト全集第8篇、第20作品群、第1部門、第2巻。
演奏時間 約31分。

第1楽章 〔序奏〕アダージョ 4分の3拍子。〔主部〕アレグロ ハ長調 4分の4拍子。ソナタ形式。
第2楽章 アンダンテ・カンタービレ ヘ長調 4分の3拍子。展開部を省いたソナタ形式。
第3楽章 メヌエット アレグロ ハ長調 4分の3拍子。
第4楽章 アレグロ・モルト ハ長調 4分の2拍子。ソナタ形式。