■モーツァルト作品解説■    [HOME]   [年代別目次]

ピアノ協奏曲 第19番 へ長調

K459

 この協奏曲は、「第2戴冠式」という名でよばれることがある。それは、初版のピアノ・パートに、「この協奏曲は、皇帝レオポルト2世の戴冠式のおりに、フランクフルト・アム・マインで、作曲者自身によって演奏された」という注記があることに由来する。たしかに、1790年10月15日(戴冠式自体は9日)に市立大劇場で開かれた音楽会では、「ニ長調」K537のいわゆる「戴冠式」協奏曲のほかに、もう1曲のコンチェルトが演奏されたことがわかっている。それがこの「へ長調」の協奏曲であることは、まず確実とみなしてよいだろう。祝典的な機会での演奏に選ばれただけに、この作品はなかなか堂々たる偉容を備えており、作曲技法の緻密さと楽想の晴朗さは、のちの「ジュピター交響曲」を思わせるものすらある。モーツァルトは、1784年をもっばら器楽曲の創作にささげ、その成果として、K449から続く6曲のピアノ協奏曲を生み出した。「へ長調」協奏曲は、幸福と充実の時期であったこの年の諸作品の最後に位置し、それらにおけるとりわけての高峰として、「戴冠」を受けるにふさわしい作品なのである。
作曲の経過 ウィーンにおける人気ピアノ奏者として多忙をきわめていた1784年の末、12月11日に、モーツァルト自身が演奏するために完成された。
初演 記録上では1790年のフランクフルトでの音楽会を初演とみなさざるを得ないが、それ以前、おそらく1784年末から85年はじめのころモーツァルト自身によって演奏されていたことは、確実であろう。なお、1786年8月8日に、モーツァルトは、この協奏曲の筆写譜を(K451453456488の諸曲とともに)ドーナウエッシンゲンのフュルステンベルク侯爵に送付し、謝礼を得ている。
基本資料の所在 ベルリン国立図書館(自筆譜)。
出版〔初版〕オッフェンバッハのJ・アンドレ、1794年。〔全集〕新モーツァルト全集第5篇、第15作品群、第5巻。
演奏時間 約28分半(ポリー二独奏のグラモフォン盤による)。
楽器編成 独奏ピアノ、フルート、オーボエ2、ファゴット2、ホルン2、弦5部(自作品目録の楽器編成には、自筆譜にないトランペット2とティンパニのパートが含まれている。これらのパートがかつて存在し、失われてしまったのか、あるいはモーツァルトが目録への記載を誤ったのかはわからない。新全集編者のE・バドゥーラ=スコダは、へ長調の作品にトランペットを用いている例がモーツァルトにはひとつもないところから、後者の立場をとっている)。

第1楽章 アレグロ ヘ長調 2分の2拍子。協奏風ソナタ形式。
第2楽章 アレグレット ハ長調 8分の6拍子。早目のテンポによる中間楽章。
第3楽章 アレグロ・アッサイ ヘ長調 4分の2拍子。ロンド形式。