■モーツァルト作品解説■    [HOME]   [年代別目次]

ヴァイオリン・ソナタ 変ロ長調

K454

 1784年春のモーツァルトの演奏会活動は、目を見張るほど活発だった。たとえばディミトリー・ミハイロヴィッチ・ガリツィン公、ヨハン・エステルハージ伯、カルル・ツィヒー伯、レオポルト・パールフィ伯らの私邸で開かれる演奏会のほかにも、ブルク・テアータやトラットナー邸で開かれる予約演奏会等、ほとんど1日おきに演奏会に出演するほど多忙だった。自分の作品を演奏するピアニスト、モーツァルトの活動を反映して、ピアノ協奏曲K450K451K459も、たて続けに作曲されている。しかし、こうした演奏会では優れた演奏家と共演することも多く、このヴァイオリン・ソナタもそうした折に書かれたものである。
 このソナタもK379(373a)同様、序奏をもつが、もう少し規模が小さくなっている。しかし、冒頭からヴァイオリンの重音が出て、一瞬、驚かせる。また、第1楽章のソナタ形式でも、第2楽章のソナタ形式でも展開部では、主題の動機が展開されず、別の素材が用いられる。ヴァイオリンのパートは全楽章を通じていっそう充実してきているが、全体の規模そのものも大きくなっている。
作曲の経過 1784年4月24日付の父レオポルトに宛てた手紙で、モーツァルトは次のように述べている。「今、当地にマントヴァの有名な女流ヴァイオリニスト、ストリナザッキ(1764-1839)が来ています。彼女は名ヴァイオリニストで、その演奏は非常に趣味がよく、感受性が豊かです。ちょうど、今、木曜日に彼女の演奏会で一緒に弾くソナタを作曲しているところです」。つまり、1784年の4月24日には着手していたこのソナタは、次の木曜(4月29日)にはできていたわけである。ただし、モーツァルトは当日、ようやくヴァイオリンのパートを書き上げて、自分のパートを書く暇がなかったため、覚書程度にメモをした楽譜を見で、リハーサルなしで彼女と演奏したが、大喝采を博した。なお、このソナタが作曲された日付は、モーツァルト自身の手で「1784年4月21日、ウィーン」と書きこまれている。
初演 1784年4月29日にケルントナトーア・テアータで、皇帝ヨーゼフ2世を迎えて演奏された。ヴァイオリンはストリナザッキ、ピアノはモーツァルト。
基本資料の所在 自筆譜はストックホルムのStiftelesen Musik-kulturens Framjande(R.Nydahl)所蔵。
出版 〔初版〕ウィーンのトリチェッラ(ウィーンの楽譜商)より「クラヴサンのための3つのソナタ。ヴァイオリンの伴奏による」の最後のソナタとして1784年に出版された。〔全集〕新モーツァルト全集第8篇、第23作品群、第2巻。
演奏時間 21分39秒(フィリップス PC-1528)。
楽器編成 ヴァイオリン、ピアノ。

第1楽章 〔序奏〕ラルゴ 変ロ長調 4分の4拍子。〔主部〕アレグロ 変ロ長調 4分の4拍子。ソナタ形式。
第2楽章 アンダンテ 変ホ長調 4分の3拍子。ソナタ形式。
第3楽章 アレグレット 変ロ長調 2分の2拍子。ロンド形式。