■モーツァルト作品解説■    [HOME]   [年代別目次]

ピアノ協奏曲 第17番 ト長調

K453

 この協奏曲は、「変ホ長調」K449と同じく、弟子のバルバラ・フォン・プロイヤー嬢(K449の項参照)のために書かれたものである。この年の一連の協奏曲のうちでも、モーツァルトの天衣無縫な霊感が発揮されているという点においては、この作品に第1に指を屈するべきであろう。ここには濾過されぬナマな音符はひとつもなく、すべてが玲瓏たる優雅な様式のうちに昇華されて、モーツァルトの内面の言葉を含蓄深く語っている。虹のような色調の変化に身をゆだねてゆくうちに、われわれは、モーツァルトの「やさしさ」が、いつしか心いっばいにしみ渡っているのに気づく。この協奏曲の終楽章には、「魔笛」のパパゲーノのアリアを思わせる素朴な旋律が現れるが、モーツァルトはこの旋律を、一家の成員として新たに加わったムク鳥の歌声のなかに聴きとった−彼が1784年につけはじめた現金出納帳の5月27日の欄には、「ムク鳥、34クローネ、すてきだった!」という注記とならんで、その旋律が記入されているのである。(この鳥はモーツァルトのもとで3年ほど生き、1787年6月に死んで、1篇の追悼詩がささげられた。)「ト長調」協奏曲の性格を物語るものとして、これにまさるエピソードはないように思われる。
 モーツァルトがこの協奏曲に抱いていた愛着、および前2作との比較については、K449450の項参照。父宛ての5月25日の書簡には、「変ホ長調とト長調の協奏曲は、ぼくと、曲を書いてあげたプロイヤー嬢以外には、だれも所有していません」とある。なお、ガードルストーンは、この協奏曲がべートーヴェンの「ト長調」協奏曲作品58の模範になったと述べている。
作曲の経過 1784年4月はじめに完成された。4月10日の父宛ての書簡には「ところで、ぼくは今日もまた、プロイヤー嬢のために新しい協奏曲を完成しました」と書かれている。しかし自作品目録に記載されたのは4月12日になってからで、自筆譜の日付も、4月12日になっている。
初演 6月13日、デープリングのプロイヤー邸で、バルバラによって演奏されたのが記録上の初演であるが、おそらく作曲後まもない時期に、モーツァルト自身の手で初演されていたものと推測される。
基本資料の所在 ベルリン国立図書館(自筆譜)。
出版 〔初版〕シュパイヤーのボスラー。1787年。〔全集〕新モーツァルト全集第5篇、第15作品群、第5巻。
演奏時間 約29分半(ブレンデル独奏のフィリップス盤による)。
楽器編成 独奏ピアノ、フルート、オーボエ2、ファゴット2、ホルン2、弦5部。

第1楽章 アレグロ ト長調 4分の4拍子。協奏風ソナタ形式。
第2楽章 アンダンテ ハ長調 4分の3拍子。自由な変奏曲。
第3楽章 アレグレット ト長調 2分の2拍子。鳥のように軽快な主題による変奏曲形式。