■モーツァルト作品解説■    [HOME]   [年代別目次]

ピアノ協奏曲 第15番 変ロ長調

K450

 「変ホ長調」K449で新たな道に踏み出したモーツァルトは、自作品目録の第2番にあたるこの協奏曲で、さらに大きな前進をなしとげた。サロン的性格を踏みこえ、交響的な充実を加えた円熟期のピアノ協奏曲群の出発点をなすものは、むしろこの協奏曲である。モーツァルト自身は、K450、451453の3曲を「大協奏曲」と呼んでK449から区別しているが、これらの作品においては、独奏ピアノに新しい技術上、表現上の試みがみられるほか、管弦楽編成がいちだんと充実され、管楽器群に、独立したオブリガート的役割が与えられている。モーツァルトの交響管弦楽曲においてわれわれをあんなにも魅了する管楽器の絶妙な用法に、この「変ロ長調」協奏曲においても出会うことができるのは嬉しい。
 3つの「大協奏曲」は、モーツァルトにとって甲乙つけがたい自信作であった。それらが人にどう比較されるかに、モーツァルトはたいへん興味をもっていたらしい。たとえば、父レオポルトに宛てた5月26日付の書簡には、こう書かれている。「リヒター氏がお姉さんに讃辞を送った協奏曲は、変ロ長調のものです。これは、ぼくが作ったうちの最初の方で、彼はできあがった当時からとても賞めてくれていました。これらの2つの協奏曲(K450と451)のうち、1曲を選ぶわけにはゆきません。どちらも、汗びっしょりになる協奏曲だと思います。でも、むずかしさという点からいえば、ニ長調の曲よりも変ロ長調の曲のほうが上です。ところで、変ロ長調、ニ長調、ト長調(K453)の3つの協奏曲のうち、お父さんとお姉さんにはどれが一等お気に召すか、ぼくは興味津々です。」また、7月21日に姉ナンネルに宛てた書簡でも、同じ問いが繰り返されている。「お姉さんが3つの大協奏曲をお聴きになっているのでしたら、どれが一等気に入っているかを、ぜひお尋ねしたく思います。」
作曲の経過 モーツァルトが人気ピアニストとして多忙な活動を続けていた1784年(K449参照)、自らの演奏レパートリーを増やすために作曲された。完成は3月15日。自筆譜には多くの訂正がみられ、第2楽章の主題がかなり書き変えられたほか、フィナーレの一部(第295−301小節)が追加されている。
初演 トラットナーホーフにおける予約制の私設演奏会(K449の項参照)の第2回、1784年3月24日に行われた。ピアノ独奏はモーツァルト自身。
基本資料の所在 ワイマール州立図書館(自筆譜)。
出版 〔初版〕ウィーンのアルタリア、1798年。〔全集〕新モーツァルト全集第5編、第15作品群、第4巻。
演奏時間 約25分半(ヘブラー独奏のフィリップス盤による)。
楽器編成 独奏ピアノ、フルート(終楽章のみ)、オーボエ2、ファゴット2、ホルン2、弦5部。

第1楽章 アレグロ 変ロ長調 4分の4拍子。協奏風ソナタ形式。
第2楽章 アンダンテ 変ホ長調 8分の3拍子。協奏曲の緩徐楽章への変奏曲形式の導入として注目される楽章である。
第3楽章 アレグロ 変ロ長調 8分の6拍子。ロンド形式。ホルン協奏曲を思わせる、野趣に富んだフィナーレ。