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ディヴェルティメント付「行進曲」 ニ長調

K445(320c)

 マンハイム・パリ旅行から帰郷後に書かれたこの作品は、2曲の「ロードゥロン・セレナーデ」と同じ構想で書かれており、モーツァルトのディヴェルティメントの最後の大作となっている。1782年5月8日と29日付の父宛の手紙で「ロービニヒの音楽」と呼んでいる作品と考えられるので、ロービニヒ家の家庭的な祝事のために作曲されたと推測されている。ロービニヒ家はザルツブルクの名門貴族。主人のゲオルクは1760年に没していたが、モーツァルト一家は、ヴィクトリア夫人、長女エリーザベト、次女ルイゼ、長男ジークムントと親しく交際していた。どのような機会のために作曲されたのかは不明であるが、1780年7月にジークムント(1760-1809年)がザルツブルク大学を卒業しているので、その祝事のために書かれたものと推測されている。しかし、自筆譜が失われているためこれはあくまでも推測であって、作曲年代は1779年から1780年の幅で考えられている。
 基本的な特徴は前2作と共通しているが、極めて優美に洗練されており、これはパリ様式の内面化を示す要素に他ならない。以前と同様、第1ヴァイオリンに主導的な役割が与えられているとはいえ、室内楽と協奏曲の要素は見事に融合されており、他の弦楽器にも緻密な表現が要求されている。また、アーベルトが指摘するように、なごやかな両端楽章に対して中間楽章、特に第2、第5楽章には、聲りの多い内面的な表現の託されていることも見逃せない。ディヴェルティメント音楽の極致を示すとともに、来たるべきウィーン時代を予見させる傑作といえよう(K247の概説も参照)。
作曲年代 おそらく、1779年から1780年にかけて。
基本資料の所在 自筆譜は消息不明。
初演 作曲後間もなくザルツブルクで。
出版 〔初版〕1799年、アウクスブルクのコンバルト社。〔全集〕旧モーツァルト全集第9篇、第31番。新モーツァルト全集第7篇、第18作品群。
演奏時間 約45分。
楽器編成 ホルン2、弦5部(重奏あるいは合奏)。

行進曲 自筆譜には「行進曲」とあるだけで作曲年代は記入されていないが、編成と調性からみて、K334に付随する行進曲として演奏されたと推定されている。