■モーツァルト作品解説■    [HOME]   [年代別目次]

パイジェッロの『哲学者気取り』の「主よ、幸いあれ」による6つの変奏曲 ヘ長調

K398(416e)

 モーツァルトはウィーン移住1ヵ月後の1781年6月に、グレトリーのオペラからの合唱曲に基づく8つの変奏曲「ヘ長調」K352(374c)を書いているが、これは一連のパリ変奏曲の残像のような、なおフランス趣味の濃いものであった。その後2年を経た1783年年3月23日に、ウィーンで皇帝ヨゼフ2世の臨席を得て行われた自らの音楽会でモーツァルトは2つの変奏曲を演奏した。そのひとつがパイジェッロのオペラから主題をとった6つの変奏曲「ヘ長調」K398(416e)で、もうひとつは同じくこの演奏会に列席したグルックに敬意を表して彼のジングシュピールからのアリエッタに基づいた10の変奏曲「ト長調」K455であり、いずれもその場で即興的に仕上げられ、翌年になって楽譜に書き記されたものである。
 パイジェッロのオペラ『哲学者気取り』は1751年にウィーンでドイツ語により上演されたのだが、この第1幕第8番のジュリノによって歌われるアリア「主よ、幸いあれ」を、変ホ長調からヘ長調に移してモーツァルトはこの変奏主題とした。各変奏は複縦線で区切られているだけで終止感に乏しく、いかにも即興的に弾き連ねられたものという印象を与える。
作曲の時期 1783年年3月、ウィーンにて。
基本資料の所在 〔自筆楽譜〕不明。
出版 〔初版〕1786年、ウィーン、アルタリア社。〔全集〕新モーツァルト全集第9篇、第26作品群。〔実用楽譜〕ヘンレ版、ウィーン原典版「ピアノのための変奏曲」2、音楽之友社。
演奏時間 約6分半。

主題は、ヘ長調、4分の3拍子。