■モーツァルト作品解説■    [HOME]   [年代別目次]

幻想曲 ハ短調

K396(385f)

 この曲は元来クラヴィーアとヴァイオリンのための作品である。自筆楽譜の断片が1930年ハース(音楽学者 1886-1960)によって見出された。すなわちクラヴィーア部27小節、ヴァイオリン部は23−27小節。この発見までは、1830年ウィーンのカッピ社から出版された「クラヴサンあるいはピアノフォルテのためのファンタジー、コンスタンツェ・モーツァルトに捧ぐ」と題されたものが、真作品と思われていた。自筆譜の発見によってこれは、シュタートラー師(オーストリアのオルガニスト・作曲家 1748-1833)によって完成されたもので、ヴァイオリンを省略し、ファンタジーと題して出版されたものであること、冒頭に速度標語アダージョが付加され、6拍を数える第13小節の最後の2拍を次々にずらし、第15小節の最後に2拍の休止を加え、小節を整理したということが明らかになった。モーツァルトはもともと何のジャンルのために作曲しようとしていたのか不明である。自由なファンタジーではないか(そうすれば第13小節の不規則な拍数も納得できる)、あるいはフーガの序曲ではないか、自筆譜の最後の繰返し記号はソナタの呈示部であることを示しているのではないか。ドゥ・サン=フォアは展開部まではモーツァルトの自作で、再現部のみが、長調への転調というモーツァルトらしくない作法であるのでシュタートラーによって補完されたものであろうといっている。
 この曲もエマヌエル・バッハの影響のみられるもので、特に彼の1787年の嬰ハ短調のファンタジーとの類似がいわれている。それでモーツァルトの作曲年代は、それ以後ではないかと推察される。
基本資料の所在 自筆楽譜は、クラヴィーア部27小節、ヴァイオリン部23−27小節。ワイマール、ゲーテ=シラー文庫。
出版 ウィーン、ジャン・カッピ、1802年。〔全集〕旧全集20(19)、新全集8 23/2。

アダージョ(シュタートラーによる)、ハ短調、4分の4拍子。複重線と繰返し記号によってこれはソナタ形式の呈示部と解釈されることが多い。全体はラプソディ風な動きをもち、ファンタジーともとれるが、速度標語の変化もなく調構成からみてもソナタ形式が妥当ではなかろうか。