■モーツァルト作品解説■    [HOME]   [年代別目次]

ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調

K380(374f)

 1781年の11月に、ウィーンの楽譜出版社アルタリアから、作品2と称するモーツァルトの6曲の「ヴァイオリンの伴奏をもったクラヴサンまたはビアノフォルテのためのソナタ」が出版された。これは、モーツァルト自身、同年5月19日付の父レオポルト宛の書簡その他でふれている新作のソナタの予約出版であったが、当時のモーツァルトは、ジングシュピール「後宮からの誘拐」の作曲にふけっていたばかりでなく、いろいろなことで多忙であったため、新しく6曲のソナタを全部書きおろす余裕(当時の習慣として、作曲は、6曲で1組という単位になるのが普通であった)をもたず、結局4曲を書くにとどまった。そのため、あとの2曲は、旧作(1778年作、ハ長調K296、および1779年作、変ロ長調K378=K317d)を用だてることになったが、とにかく6曲をまとめることはできたのである。第1番はへ長調K376=K374d、第2番は旧作ハ長調K296、第3番はへ長調K377=K374e、第4番は旧作変ロ長調K378=K317d、第5番はト長調K379=K373a、そして第6番が本曲変ホ長調K380=K374fという順序であった。これは旧作をのぞいたにしても、作曲順の配列ではない。この変ホ長調の作品にしても、ケッヒェル=アインシュタインでは最後においているが、ド・サン=フォアは、自筆草稿にみられる第1ソナタ(Sonata Prima)という記載から推して、この曲を4曲の最初にかかげ、へ長調(K376=K374d)、ト長調(K379=K373a)、へ長調(K377=K374e)の順序にしている。
 他の3曲と同様、この曲においても、以前の作品に比べてかなりの前進がみられるが、とくに両パートの間の関係は、より密接となり、まさに純粋な意味での古典ソナタを創造しているものといえよう。
作曲の時期 1781年夏と推定されいるが、ド・サン=フォアは、これを4月から7月の間としている。場所はもちろんウィーンである。
基本資料の所在 自筆譜は個人蔵。
演奏時間 約15分。

第1楽章 アレグロ 変ホ長調 4分の4拍子。
第2楽章 アンダンテ・コン・モート ト短調 4分の3拍子。短調で書かれた美しい緩徐楽章のひとつとして印象的である。
第3楽章 ロンドー 変ホ長調 8分の6拍子。フランス風にロンドー(Rondeau)と記されたこのフィナーレはアレグロをとっている。