■モーツァルト作品解説■    [HOME]   [年代別目次]

オーボエ四重奏曲 へ長調

K370(368b)

 モーツァルト唯一のこの「オーボエ四重奏曲」は、1780年暮から1781年3月12日まで滞在したミュンヘンで、名オーボエ奏者フリードリヒ・ラム(1744-1811)のために作曲された。モーツァルトはラムと1777年のマンハイム滞在中から親しく交際しており、1778年2月14日のマンハイムからの父宛の書簡には、モーツァルトが1777年にザルツブルクの宮廷に仕えていたベルガモ出身のオーボエ奏者ジュゼッペ・フェルレンディスのために作曲した協奏曲ハ長調K314(285d)をラムが演奏し、大喝采を博したことが伝えられている。また1778年の変ホ長調の「協奏交響曲」KAnh9において、オーボエのパートをラムのために作曲している。ラムの演奏は、ゲルバーの「音楽家事典」第2巻(1772年)では「現存する一流のオーボエ奏者の一人であり、美しい、丸みのある、柔らかい、真実なオーボエの音をもち、その演奏は人を魅了する繊細さ、軽やかさ、表情がある」と褒め称えているが、ラムの高い技巧と音楽性は、この四重奏曲からも十分推測できる。
 この「オーボエ四重奏曲」は、「フルート四重奏曲」ニ長調K285に対応する作品であるが、芸術と精神のいっそう高い段階に立つものである。オーボエを協奏的な役割をになう独奏楽器として扱い、アダージョには小さなカデンツァの機会が与えられている。また、ロンド・フィナーレには珍しい工夫が示され、弦楽器が8分の6拍子で進行している間、オーボエは4分の4拍子のカンティレーネと装飾音を受けもち、やがて自然に再び通常の合奏にもどる。アインシュタインは、コンチェルタントな精神と室内楽的精神の結合という点で、この作品に比較しうるものは、晩年の「クラリネット五重奏曲」K581だけであると述べている。
作曲の経過 「イドメネオ」上演のために滞在中のミュンヘンで1781年の初めに宮廷楽団のオーボエ奏者フリードリヒ・ラムのために作曲された。自筆譜のタイトルには第三者の手により、1781年ミュンヘンにてと記されているが、アンドレ自筆の作品目録には、より詳しく1781年1月作曲とある。しかしこれはなんら具体的な根拠に基づくものではない。
基本資料の所在 自筆楽譜はパリ国立図書館、筆写譜はベルリン国立図書館所蔵。
出版 〔初版〕1802年にオッフェンバッハのJ・アンドレから作品101として出版された。〔全集〕旧モーツァルト全集第14篇、第30番。新モーツァルト全集第8篇、第20作品群、第2巻。
演奏時間 約14分。
楽器編成 オーボエ、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ。低弦はバッソとあるが、コントラバスによる重複が意図された可能性は少ない。

第1楽章 アレグロ ヘ長調 4分の4拍子。ソナタ形式。
第2楽章 アダージョ ニ短調 4分の3拍子。37小節できわめて短いが、ニュアンスに富んだ装飾をもつオーボエのための抒情楽章である。
第3楽章 ロンド アレグロ ヘ長調 8分の6拍子、明るくのびやかな主要主題による協奏曲風の典型的なロンド形式で書かれている。