■モーツァルト作品解説■    [HOME]   [年代別目次]

演奏会用アリア「話したのは私ではない」

K369

 1781年モーツァルト最後のミュンヘン旅行の折、この地で世話を受けたパウムガルテン(作曲者はバウムガルテンと綴っでいる)伯爵夫人のために1曲のシェーナを作曲した。彼女はバイエルン選帝侯カール・テーオドールのお気に入りで旧姓をフォン・レルヒェンフェルトといい、モーツァルトも書簡中で彼女の心地よいもてなしにふれている。彼女もこの時代の貴族の女性の常として音楽に深い関心を抱き、自身なかなかの歌い手であった。
 このシェーナはメタスタージォの書いた「エッィオ」の第3幕第12場からとられている。「エツィオ」は1728年、まだメタスタージオがウィーンの宮廷詩人になる以前に作られた台本でレオナルド・ヴィンチが作曲し、ローマで初演されている。のちにヘンデル、ハッセ、グルック等も同じ台本で作曲している。ローマ皇帝ヴァレンティニアーヌス3世治下の時代、皇帝の軍の隊長エツィオ、ローマの貴族マッシモ、それに娘のフルヴィアらを中心とする恋と陰謀の物語である。この場はフルヴィアの悲しみを吐露するモノローグとなっている。
作曲年代 1781年3月。
基本資料の所在 自筆楽譜はミュンヘンのバイエルン国立図書館。
出版 旧モーツァルト全集第6篇、第21番、新モーツァルト全集第2篇、第7作品群、第2巻。
演奏時間 約10分。

 まずアンダンテ・ソステヌートの管弦楽伴奏付レチタティーヴォでは「憐れた私よ、ここはどこなの」から、自らのおかれた惨めた状況が語り出される。アリアは4行のものが2節という典型的なテクストで7・7・7・6音節をとる。第1節はアンダンテ・ソステヌート、変ホ長調、4分の3拍子をとる。罰を与えぬ天を恨む第2節ではアレグロ、4分の4拍子に転じ、苦しみの音節の長い引きのばしや、雷の言葉の反復使用に伝統的なテクスト解釈がみられる。