■モーツァルト作品解説■    [HOME]   [年代別目次]

歌劇「イドメネオ」

K366

 これはモーツァルトの作曲したオペラ・セリアの代表作だ。しかしこれは、当時のイタリアのオペラ作曲家たちの作曲したオペラ・セリアに較べて、レチタティーヴォ・アッコンパニャートの多いのが、特徴的だ。そのことによって、劇的緊迫感を高めていることは注目される。フランス・オペラの、あるいはイタリア・オペラの影響がうかがえるとしても、ここには、モーツァルトの、まぎれもない天才の証しを認めることができる。この作品を、18世紀後半に生みだされた最もすぐれたオペラ・セリアという音楽家も少なくない。
作曲の経過 1780年の夏、モーツァルトはミュンヘンの選帝侯カルル・テオドールからオペラ作曲の依頼を受けた。当時ザルツブルクにいたモーツァルトは、さっそく作曲にとりかかり、12月5日にミュンヘンに向けて旅だった時には、すでにオペラのかなりの部分は作曲されていた。
初演 1781年1月29日、つまりモーツァルトの25歳の誕生日の2日後に、ミュンヘンで初演された。イドメネオをテノールのラーフ(1714-1797この歌手は当時66歳に達していて、歌手としての盛りをすでに過ぎていた)、イダマンテをカストラートのデル・プラート(1756-1828この歌手はこれが初舞台でありモーツァルトはすべてにわたって教えこまなければならなかった)、イリアをソプラノのドロテア・ヴェントリンク(1727-1811)エレットラをドロテアの義妹にあたるソプラノのエリーザベト・ヴェントリンク(1746-1786)がうけもった。イドメネオとイダマンテが拙劣であったため、さらにこの作品が当時の聴衆にとって耳新しすぎたために、初演後しばらくしてまったくかえりみられなくたった。だが1931年にスイスのバーゼルで蘇演されて以後、ふたたび人びとの関心がこのオペラに集まり、上演の機会にもめぐまれるようになった。このオペラにはさまざまな改訂版があり、改訂版の主なものには以下のようなものがある。エルンスト・レオポルト・シュタールのドイツ語の台本によるヴォルフ=フェラーリ版(1913年ミュンヘン初演)、ロータル・ヴァラシュタインのドイツ語の台本によるリヒャルト・シュトラウス版(1913年ウィーン初演)などがある。
基本資料の所在 〔自筆楽譜〕ベルリン国立図書館。〔初演時の筆写譜〕ミュンヘン国立図書館。ベルリン国立図書館。
出版 ジムロック、1805年。
演奏時間 第1幕約56分、第2幕約45分、第3幕約67分、合計約2時間50分。
楽器編成 ピッコロ、フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット2、トロンボーン3、ティンパニ、弦。
台本 イタリア語。カンプラ(1660-1744)が1712年に作曲したIdomenee(1712年パリ初演)の台本をもとに、当時ザルツブルクの宮廷付司祭をつとめていたヴァレスコ(1736?-1805)がモーツァルトのために書いた。なおカンプラの「イドメネー」は、5幕からなる悲劇的オペラであり、台本はダンシェ(1671-1748)の手になるものであった。
登場人物 イドメネオ〔クレタの王〕(T)、イダマンテ〔イドメネオの息子〕(カストラートのソプラノ、今日ではTで歌われることが多い)、イリア〔トロイア王の娘〕(S)、エレットラ〔アガメムノン王の娘〕(ドラマティックS)、アルバーチェ〔イドメネオの親友〕(TまたはBr)、高僧(T)、海神の声(B)、クレタ島の人びと、トロイの捕虜、水夫、兵士、僧侶たち(合唱、S・S・A・A・T・B。S・A・T・Bの独唱が含まれている)。
時と所 トロイ戦争の直後、紀元前1200年頃。クレタ島のシドン港。