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ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲 変ホ長調

K364(K320d)

 モーツァルトの「協奏交響曲」の第2作として、マンハイム・パリ旅行から帰郷して半年ほどたった1779年の夏頃に作曲された。4つの管楽器を独奏楽器としてパリで作曲した第1作は、ル・グロの不誠実のために演奏されずに終り、モーツァルトは大いに憤慨したのだったが、このジャンルヘの関心は消えなかったようである。帰郷の途中、1778年11月に立ちよったマンハイムでは、「ヴァイオリンとピアノのための協奏交響曲」ニ長調KAnh56(K315f)、1779年の秋にはこの変ホ長調の作品の姉妹作というべき「ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロのための協奏交響曲」イ長調KAnh104(K320e)の筆を起しているからである。しかしこれらは、かなり書き進んだところで放棄されてしまった。残された断片が優れた作品を予想させるだけに惜しまれるが、その中でただ1曲だけ完成されたこの作品は、そうした損失を補って余りある充実した作品となっている。
 協奏交響曲というジャンルの特性からも、この作品にはマンハイム=パリ様式の影響が強くみられる。第1楽章の冒頭主題はカルル・シュターミツに類例があるし、長大なクレッシェンドも用いられる。しかし、旅行で学んだ様々な要素は、ここではモーツァルトの語法に完全に同化されて現れている。ヴァイオリンとヴィオラは浮き立たせられているが、外面的な華やかさをまき散してはいないし、管弦楽も単に伴奏としては扱われていない。管楽器は積極的に活用され、ヴィオラは分奏されている。また、とくに最初の2楽章では、モーツァルトの人間的な成長を裏づけるような表現の深さが支配している。そこには、協奏曲が従来担っていた社交的な軽さ、官能性といった面がみられない。すべてが交響的統一体に向かっているといえよう。こうした点で、この作品は、モーツァルトのこれまでの協奏的作品の頂点に立つ作品に他ならない。
 なお、独奏ヴィオラのパートはニ長調で記譜されている。これは、半音高く調弦して、明るい響を得るためである。
作曲の時期 1779年の夏あるいは初秋に作曲されたと推定される。
初演 記録はないが、作曲後ザルツブルクで演奏されたであろう。2人の独奏者名など具体的なことは不明である。
基本資料の所在 自筆譜は消息不明、スケッチの一部がパリの個人所有となっている。
出版 〔初版〕1802年、オッフェンバッハ、J・アンドレ社。〔全集〕旧モーツァルト全集第12篇、第1番。新モーツアルト全集第5篇、第14作品群、第2巻。
演奏時間 約30分。
楽器編成 独奏楽器(ヴァイオリン、ヴィオラ)、管弦楽(オーボエ2、ホルン2)、弦5部。

第1楽章 アレグロ・マエストーソ 変ホ長調 4分の4拍子。協奏風ソナタ形式。
第2楽章 アンダンテ ハ短調 4分の3拍子。ソナタ形式。
第3楽章 プレスト 変ホ長調 4分の2拍子。ロンド形式。