■モーツァルト作品解説■    [HOME]   [年代別目次]

交響曲 第32番 ト長調

K318

 モーツァルトは、1779年から1780年にかけて3曲の交響曲(K318、319338)を作曲している。これらの曲はメヌエット楽章をもっていない。H・アーベルトによれば、それはザルツブルクの趣味にあわせたものである。また第1楽章に反復記号が付けられていない点でも共通している。
 この「ト長調交響曲」は、3楽章構成、管弦楽編成、および音楽上の手法に関して、前作の「パリ交響曲」と密接な関係があるとしても、形式的には、楽章が切れ目なしに続いている点で、1773年に作曲された交響曲K184(K161a)の形に近いものである。ここでは、祝祭的なイタリア序曲の形が支配的であるが、H・アーベルトは、展開部と(短縮された)再現部の間にゆっくりな楽章を挿入した形であり、モーツァルトが、パリのオペラ・コミックで、とくにグレトリー(1741-1813)などのオペラの序曲で習得した方法と同じであると述べている。この交響曲では、ピアニッシモからフォルティッシモに至るクレッシェンドが盛んに用いられているが、これはマンハイム楽派の影響といえよう。ランドンは、「K318はザルツブルクのコンチェルタンテの要素(軽くて鈍重さがない管楽器の独奏)、マンハイム楽派の豊かな管弦楽語法、それにハイドンの形式原理が溶け合っている」と述べている。
 この交響曲は序曲形式であり、また楽器編成も充実しているため、特定の機会のために、何らかのオペラの序曲として書かれたのであろうとする見解が、O・ヤーン(1813-1869)以来しばしば主張されてきた。ヘルマン・ダイタース(1833-1907)は、英雄劇「エジプト王タモス」K345(K336a)への序曲とみなしたが、この説はアーベルトにより否定されている。アインシュタインは、「ツァイーデ」K344(K336b)への序曲と考え、登場人物と結びつけた音楽内容の象徴的解釈を行っている。また、「新モーツァルト全集」の編者フリードリヒ・シュナップは、この作品は1779年にザルツブルクで上演されたJ・H.・べームの劇団の「喜劇」か「オペレッタ」の序曲として書かれた可能性が強いと述べている。しかし、この交響曲がのちにF・ビアンキのオペラ・ブッファ「誘拐された村娘」(1783年)の序曲として演奏されるようになったことは、確実である。
作曲の経過 1779年1月にモーツァルトは、マンハイム、パリ旅行を終えて、故郷ザルツブルクに戻ってきた。この年に彼は2つ、翌年に1つ、合計3曲の交響曲(K318、319、338)を作曲しているが、この「ト長調交響曲」はその最初のもので、1779年4月26日に完成された。この少し前の3月23日には、ザルツブルク時代の最も重要な教会音楽である「戴冠式ミサ」K317が作曲されている。その後1781年に、モーツァルトはザルツブルク大司教と対立し、宮廷音楽家としての束縛をたち切り、ウィーンに飛び出してしまうことになる。そのためにモーツァルトとザルツブルクの関係は、完全に断ち切られてしまう。
初演 おそらく作曲後まもなく、ザルツブルクで演奏されたと考えられる。
基本資料の所在 自筆楽譜はニューヨーク市立図書館所蔵。その総譜の筆写譜はベルリン国立図書館(Mus.Ms.15299,15299/1)およびグラーツのH・フェーダーホーファー博士の個人蔵。
出版 〔初版〕 パリ、アンボー、1792年頃。〔全集〕旧モーツァルト全集第13篇、第32番。新モーツァルト全集第4篇、第2作品群、第6巻。
演奏時間 8分。
楽器編成 フルート2、オーボエ2、ファゴット2、ホルン4、トラソベット2、ティンパニ、ヴァイオリン2部、ヴィオラ、チェロ、コントラバス。

 全体がト長調であり、3つの楽章が連続した序曲形式で書かれている。
第1楽章 アレグロ・スピリトーソ 4分の4拍子。
第2楽章 ただちにアンダンテ、8分の3拍子のこの楽章へと続く。
第3楽章 ここは第1楽章の続きの部分、すなわち再現部分とも考えられる。