■モーツァルト作品解説■    [HOME]   [年代別目次]

歌曲「さびしく暗い森で」

K308(295b)

作曲年代 おそらく1778年2月末か3月初め、マンハイムにて。
演奏時間 約3分。

 K307(284d)と対をなす作品で(同解説参照)、同じくマンハイムのアウグステ・ヴェンドリング(グストゥル嬢)のために書かれた。1778年2月28日の書簡では「彼女(グストゥル嬢)にぼくはなおフランス語のアリエットを2、3曲約束し、今日その1つを書き始めました」と記しているが、それがこの曲であることはほぼまちがいない。歌詞はアントワーヌ・ウダール・ドゥ・ラ・モット(1672-1731)によるもので、5節からなる。初版は1779年にブライトコプフ・ウント・ヘルテル社より出された。
 曲は変イ長調、4分の2拍子のアリエットで、通作構成をとる歌詞の展開に応じて旋律や調性やテンポが激しく変化するいわばバラード風な作品だが、最終節では冒頭の穏やかた旋律が復帰する。ピアノ伴奏には表情豊かな和音が連なり、フランス語の響きを生かした歌唱声部とあいまって、きわめて繊細た表現をなしている。
〔歌詞大意〕さびしく暗い森で先日私が散歩をしていると、木蔭で愛の神(キューピッド)たる子供が1人眠っていた。近づくと私はその美しさに引き込まれたが、それは、忘れようと誓った不実な女の目鼻だちそのものだったのだ。彼は赤い唇をし、彼女のようなきれいた顔をしていた。私がため息をもらすと、わけもないのに彼は目覚め、すぐに翼を広げると、復讐の弓をつかんで飛び立ちながら、私の胸を傷つけた。「お行き、もう一度身をこがしにシルビィアのもとへ行くがよい。おまえは一生彼女を愛するのだよ。ぼくを目覚めさせてしまったから」。