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フルート四重奏曲 イ長調

K298

 このイ長調の四重奏曲は、フルート四重奏曲4曲のうちではもっとも遅く、ウィーン時代の円熟期に書かれたとみることができるが、同時にまた、際立った娯楽的性格をも示している。基本となる主題はいずれも当時親しまれていた既存の旋律を借用したものであり、それがモーツァルトの手によって素朴ながら優美に扱われて、いっばしの室内楽曲を構成しているのである(これは〈Quatuors d'airs dialogues〉と呼ばれるジャンルに属し、当時パリを中心に流行していたものであった)。おそらくこの作品は友人のジャカン邸での社交のさい演奏され、集まった人々を打ち興じさせたのにちがいない。
作曲の経過 従来この作品は、「ド・ジャン四重奏曲」の後まもなく、1778年にパリで作曲されたと考えられていた。自筆楽譜の余白に、後の人(I.F.v.Mosel)の手でそう記入されているからである。しかし自筆楽譜の書体は明らかにウィーン時代のものであり、第3楽章の主題には、1786年9月1日にウィーン初演されたパイジェッロのオペラ「勇敢なる競演」(初演は同年春、ナポリ)の一節が用いられている。このため、新全集に指摘されているとおり、作曲は1786年の秋から冬にかけてのころに行われたとみるのが妥当であろう。
基本資料の所在 ウィーン国立図書館(自筆楽譜)。
出版 〔初版〕ウィーン、J・トレーク社、1808年。〔全集〕新モーツァルト全集第8篇、第20作品群、第2巻。
演奏時間 約11分(ベネット独奏のフィリップス盤にょる)。
楽器編成 フルート、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ。

第1楽章 アンダンテ イ長調 2分の2拍子。主題と4つの変奏。
第2楽章 メヌエット ニ長調 4分の3拍子。16小節ずつの主部とトリオからなる、典雅なかわいらしいメヌエット。
第3楽章 ロンドー イ長調 4分の2拍子。パイジェッロのオペラから、アリエッタ「優しい人はどこに」の旋律を主題としたロンドー。