■モーツァルト作品解説■    [HOME]   [年代別目次]

フルート四重奏曲 ト長調

K285a

 1882年に旧モーツァルト全集の楽譜が出版されるまで、この四重奏曲はニ長調K285の第2、第3楽章として世に知られていた。この2つの楽章がK285の自筆楽譜にある2つの楽章となぜ入れ替ってしまったかの理由は判然としないが、それが独立曲としてド・ジャンのための第2の四重奏曲とみなされるようになったのは、1936年にド・サン=フォアの学説が出て以来である。しかし、この作品には初期の版およびそこからの筆写譜という間接的な資料しか残されていないため、それが「ド・ジャン四重奏曲」の本来の姿を伝えているかどうかは明確でなく、モーツァルトの真作かどうかということさえ、確信をもって判断するわけにはゆかない。しかし曲はセレナーデ風ののびやかな筆致で綴られ、特にその第1楽章は、なかなか彫りの深いテクスチュアをもっている。
作曲の経過 1777年末、ド・ジャンの求めに応じて、まずニ長調の四重奏曲を完成してから、モーツァルトの筆は容易にはかどらなかった。旅先での多忙に加えて、フルート作品に対する気乗りの薄さが遅れに拍車をかけたのである。経済状態を気づかった父にも督励されて、モーツァルトは、78年の2月4日に、ようやく「2つの協奏曲と3つの四重奏曲」の完成を父に通知することができた。ド・ジャンがパリヘ旅立つ前日のことであった。したがって、この作品が「ド・ジャン四重奏曲」の1つであるとする推測が正しいかぎり、それは、1777年12月25日から翌年2月4日までの間に書かれたことになる。
出版 〔初版〕ウィーン、アルタリア社、1792年(K285の第2、第3楽章として)。〔全集〕新モーツァルト全集第8篇、第20作品群、第2巻。
演奏時間 約9分半(ベネット独奏のフィリップス盤による)。
楽器編成 フルート、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ。

第1楽章 アンダンテ ト長調 4分の3拍子。ソナタ形式。
第2楽章 テンポ・ディ・メヌエット ト長調 8分の3拍子。ギャラント様式の作品によくみられる、メヌエットのテンポによる終曲。