■モーツァルト作品解説■    [HOME]   [年代別目次]

「ああ、お母さん、あなたに申しましょう」による12の変奏曲 ハ長調

K265(300e)

 12の変奏曲変ホ長調K354(299a)で触れたように、パリ滞在中に書かれた一連の変奏曲の第2作。主題にとられたフランス語シャンソン「ああ、お母さん、あなたに申しましょう」は、若い娘が想うひとのことを母に打ち明けようとする恋の歌だったが、日本では「キラキラ星」という名の童謡として広く愛唱されているのは周知の通り。この作者不詳のシャンソンは1770年からパリでかなり流行していたらしく、当時のいくつもの歌集に収録されているという。モーツァルトの作曲は演奏会用ではなく、主題の単純な形からしても、当地パリでのピアノの弟子に与えることを意図してのものと考えられているが、根底に対位法的発想があり、また終りに向かうほどかなり技巧的になるので、一概に初心者向けとはいえないようにも思う。もっともこうした譜面上のやさしさと、実際に音として響かせる上での難しさが折り合ず共存しているのは、モーツァルトのピアノ作品全てに共通する基本的特徴でもあろう。
作曲の時期 1778年初夏、パリ。
基本資料の所在 〔自筆楽譜〕主題および第1変奏から第7変奏までは、アウグスブルクのドイツ・モーツァルト協会蔵。第9、第10、第12変奏(最後5小節欠落)は同じくアウグスブルクのモーツァルト・ゲマインデ蔵。
出版 〔初版〕1785年、ウィーン、トッリチェッラ社。〔全集〕新モーツァルト全集第9篇、第26作品群。〔実用楽譜〕ヘンレ版、ウィーン原典版「ピアノのための変奏曲」1、音楽之友社。
演奏時間 約13分。

主題はハ長調、4分の2拍子、「テーマ」とあるだけで速度標示はない。