■モーツァルト作品解説■    [HOME]   [年代別目次]

ピアノ三重奏曲 変ロ長調

K254

 モーツァルトの三重奏曲は2曲(K266=K271fとK563)を除くと、すべてピアノ三重奏曲である。弦楽四重奏のもつ純粋でひとつに溶け合う音色に対し、ピアノ三重奏ではピアノが他楽器とあるときは対照を生み、あるときは調和するという変化をもたらしている。ピアノ協奏曲で示されるような流麗なパッセージも繰り広げられ、曲に華やかさも加わる一方で、室内楽の暖かな雰囲気もあわせもつジャンルである。
 モーツァルトは全部で8曲のピアノ三重奏を作曲(このうちK442はシュタートラーが補筆完成)しているが、K254を除いて、すべて1783年から1788年の間にウィーンで書かれたものである。この間の様式上の変化はチェロに最も顕著にあらわれる。K254ではピアノの左手とほとんど同じ動ぎをし、バス音の増強にすぎないチェロが、K496の第1楽章では、他楽器と対等に主題の展開に参加するようにたる。この傾向はK502K542でさらに強くなる。
 またピアノ、クラリネット、ヴィオラ、という編成で示されるK498は、音響上も楽章構成上も特異た存在だが、クラリネットの音色と出だしの音形がうまく合い、最も好んで演奏される曲のひとつとなっている。
 K254はザルツブルクで書かれた唯一の曲であり、様式上も他の曲とかなりの隔たりがある。自筆譜には「ディヴェルティメント」と書かれており、また、チェロの非独立性を示すかのごとく、チェロのパートはピアノの下に書かれている。
作曲年代 1776年8月にザルツブルクで作曲された。
初演 不明だが、1777年10月6日に、ミュンヘンから出した父宛の手紙にトリオを演奏した旨、述べられている。
基本資料の所在 自筆譜はベルリン国立図書館にあったが、終戦後紛失。筆写譜はウィーン国立図書館、ライプツィヒ音楽図書館。 出版 〔初版〕マダム・エーナ(パリ、Op.Vよりパート譜が出版されたが、この年代をド・サン=フォアは1778年頃、ドイッチとオールドマンは1782年頃と推定している。〔全集〕新モーツァルト全集第8篇、第22作品群、第2巻。
演奏時間 20分47秒(東芝−エンジェル AB-9492-4)。
楽器編成 ピアノ、ヴァイオリン、チェロ。

第1楽章 アレグロ・アッサイ 変ロ長調 4分の3拍子。
第2楽章 アダージョ 変ホ長調 4分の4拍子。三部分形式。
第3楽章 ロンド テンポ・ディ・メヌエット 変ロ長調 4分の3拍子。ロンド主題の間に2つの大きなエピソードをもつロンド形式。