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セレナーデ 第6番 ニ長調 「セレナータ・ノットゥルナ」

K239

 1776年1月、モーツァルトは20歳を迎えた。その前後の2年ほどの間、モーツァルトは珍しくザルツブルクに腰を落ち着け、宮廷音楽家としての職分を守りつつ、軽い実用的な作品を多く書いている。交響曲の作曲は中断され、セレナーデ、ディヴェルティメントといった社交的・娯楽的なジャンルが、創作の主流を占めるようになった。それに対応するかのように音楽様式にはギャラントな色彩が一段と強まり、華やかな優雅さが、作品を支配しはじめる。こうした時期のモーツァルトの姿をもっとも忠実に映し出している作品のひとつが「セレナータ・ノットゥルナ」であろう。それは、半年後の大作「ハフナー・セレナーデ」とよき対照をなす、ミニアチュアの傑作である。
 「セレナータ・ノットゥルナ Serenata Notturna」の表題は、父レオポルトが自筆楽譜に記入したものである。「ノットゥルナ」という形容詞がここで何を意味しているかは定かでないがレーゼラーによれば、複数のオーケストラ・グループを用いた作品をノットゥルナ(ノットゥルノ)と称するのが、モーツァルトの常であるという。確かに、この作品は2群のアンサンブルのために書かれており、そのそれぞれには、バロックのコンチェルト・グロッソを思わせる仕方で、独奏グループ(コンチェルティーノ)および合奏グループ(リピエーノ)の機能が与えられている。そのほかにも、楽章数がわずか3つしかないこと、管楽器が省略されていることなど、一般のセレナーデとは異なった特徴が、この作品には認められる。おそらくこのセレナータは、何らかの特殊な機会のために書かれたものであろう。その機会が何であったかについては、定説がない。しかしそれが室内での演奏を目的としていることは、冬場に作曲されたことと考え合せて、確実であろうと思われる。こうして「セレナータ・ノットゥルナ」は、本来野外的なセレナーデの室内楽化という、18世紀末に強まってゆく傾向に先鞭をつけるものとたった。
作曲の時期 1776年1月。
基本資料の所在 パリ、フランス学士院図書館(自筆譜)。
出版 新モーツァルト全集第4篇、第12作品群、第3巻。
演奏時間 約12分半(べーム指揮のグラモフォン盤による)。
楽器編成 〔第一オーケストラ〕独奏ヴァイオリン2部、ヴィオラ、ヴィオローネ(コントラバス)。〔第二オーケストラ〕ヴァイオリン2部、ヴィオラ、チェロ、ティンパニ。

第1楽章 マエストーソ ニ長調 4分の4拍子。
第2楽章 メヌエット ニ長調 4分の3拍子。
第3楽章 ロンド、アレグレット ニ長調 4分の2拍子。多彩な旋律よって綴られたロンドーで、民衆的漢活さにあふれている。