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ヴァイオリン協奏曲 第3番 ト長調

K216

 「第3番」のト長調K216は、前作「第2番」から約3ヶ月の月日をへだてた初秋に完成をみた。ヴァイオリン協奏曲としての全体的構成は、もちろん前2作とそれほどちがっているわけではないが、規模の大きさ、技法の確かさ、あるいは表現の幅、芸術的価値など、さまざまな点から、この短い期間のうちに、飛躍的な発展がなしとげられていることは、まさに注目に値する。前作の「ニ長調」には、当時のフランス・ヴァイオリン音楽の影響がかなり著しくみられたが、この曲も同様に、きわめてフランス的な色彩が強く、たとえば第2楽章のアダージョは、当時の有名なフランス音楽家ピエール・ガヴィニエス、あるいは、アレクサンドル・ゲナンらの協奏曲の緩徐楽章から直接に由来したものといってもよく、さらに、フィナーレにしても、まったくフランス風なポ・プーリ(接続曲)であり、また、第1楽章の単純明快な旋律にも、おなじくフランスとの直接の関係がうかがえる。しかし、飛躍的発展ともいうべきものは、なににもまして、この曲で初めてモーツァルト独自のスタイルが強くうちだされたことである。たとえば独奏楽器とオーケストラの間の対話的な性格、管楽器の重用などに、こういった点がはっきりと現れている。なお、第1楽章の冒頭主題は同じ1775年4月23日に初演された2幕物の音楽劇「牧人の王」K208の第1幕第3番アミンタのアリアの管弦楽の出だしと同一のものである。
 この曲以後の3曲の〈ザルツブルク協奏曲〉は、現在でも、しばしば演奏会場でとりあげられ、また、教育的な目的でも好んで使用されているが、その原因が形式的な完全さ、音色の美しさ、さらにはゆたかな内容によるものであることはたしかであり、その点では、この曲もけっしてつぎの2曲に劣るものではない。
作曲年代 1775年9月12日、ザルツプルク。
基本資料の所在 「第1番」の項参照
演奏時間 約23分。
楽器編成 独奏ヴァイオリン、オーボエ2(第2楽章ではフルート2)、ホルン2、弦5部。

第1楽章 アレグロ ト長調 4分の4拍子。協奏風ソナタ形式。
第2楽章 アダージョ ニ長調 4分の4拍子。この楽章では、オーボエの代りにフルートが用いられている。
第3楽章 ロンド−アレグロ ト長調 8分の3拍子。前の「ニ長調」のフィナーレと同様、「ロンドー rondeau」とフランス風に記されている。